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聞かなかった場所
著者 著者:松本 清張
役所勤めの浅井が、妻の死を知ったのは、出張先の宴会の席であった。外出中、心臓麻痺を起こし、助けを求めて駆け込んだ化粧品店で息絶えたという。義妹によって知らされたその死に場所は、妻から一度も聞いたことがなかった地名であった――。妻の死の真相を探るうちに、一転して脅迫される立場になるという巧みなプロットの面白さ。小心な官僚の心理描写の卓抜さ。清張サスペンスを満喫する長篇小説。
聞かなかった場所
05/02まで通常550円
税込 275 円 2ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
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紙の本聞かなかった場所 改版
2012/01/06 21:03
妻はなぜそこにいたのか。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
小役人である浅井の妻が死ぬ。心臓麻痺で突然死ぬ。しかしその倒れた場所は、浅井が聞いた覚えもない場所であった。
…という発端は、謎としてなんとも魅力的。
妻が何故そこにいたのか、を追う部分が、前半。分量的にも、全体のなかほど強あたりまで。
1つの謎が次の謎につながり、じわじわ追いかけていく様は、テンポがよく、引き付けられる。飽きることなく、奥へ奥へと案内されていく。
そして、とある人物を追い詰めていこうとするのが後半。
しかし、この前半と後半、トーンがまるで違うのだ。
書いている時期に、時間的な断層があるのかと思うほど。
ストーリーの展開も、雰囲気も、トーンが激変する。
結末に割かれるページは、意外と少ない。
どんどん追い込んでいく割に、最後はあっさり。それも、無垢・善意によって切り返されるのが、ぴりりと小粒なスパイスになっていると言えるかもしれない。すっきりとした手腕。
清張さん得意の断崖は出てこないけれど、列車は登場。
そして、なんとも小心な小ものや小役人を描く筆は闊達である。