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獣の夢(角川ホラー文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3.5 2件

電子書籍

獣の夢

著者 著者:中井 拓志

1995年、富山県宇尾島市立氷上小学校屋上で6年生の児童23人が起こした「児童死体損壊事件」。メディアによってこの子供たちは「獣」と名づけられ、大論争を巻き起こした。そして、9年後……。

獣の夢

583 (税込)

獣の夢

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評価内訳

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紙の本獣の夢

2006/02/24 10:55

原因の中心には“言葉”がある。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る

 【言霊】という言葉をご存知だろうか?人が発する言葉や文字そのものに力があり、それによって人々や物事は動かされるという、ちょっと聞いただけでは「超能力の一種?」と勘違いされそうな力(もしくは現象)を指す。しかし我々は、普段あまり意識せずにこの能力を使っている。たとえば、シュークリームとエクレアが一つずつあり、あなたはエクレアを食べたいのだが、一応「どっちがいい?」と友人に尋ねたとしよう。それに友人が「エクレアでいい」と答えるのと「エクレアがいい」と答えるのでは、あなたの受け取った思いはかなり違うはず。「〜で」の場合は“仕方ないからエクレアを選ぶ”と感じ、「〜が」だと“どうしてもエクレアを食べたい”という気持ちを感じられるはずだ。これにより「それならシュークリームを食べなよ」となるか「それならシュークリームを食べるよ」となるか、あなたの答え方も違ってくるだろう。ほんの些細な“で”と“が”の違いだが、その後の行動は大きく違ってしまう。言葉本来の持つ意味、それが言霊なのだ。
 本書に登場する猟奇事件のきっかけとなった少女は、人々の言葉のニュアンスを読み取り、その先を予見する。だが予見するだけでは、人々にさほど強い影響を与えられない。それなのになぜ、人々は彼女から影響を受けてしまうのか。
 小学生による死体損壊事件、その数年後の同様の事件。翻弄される警察を、少女は高みから見下ろす。だが自らは、積極的には関わらない。命令すらしない。しかし当時の児童は、現在の犯人は、彼女が関係しているかのごとく動く。なぜ?
【言葉の暴力】という言葉がある。ある時はいじめの現場で使われ、ある時はマスコミが使い、またある時は家庭内でも使われる。表面的な肉体の痛みを伴わないぶん、精神が被るダメージは大きい。言葉の暴力、無意識の暴走……言霊に操られた人間は、もはや正常な判断力を失っている。マリオネットは命じられるがままに動くのみ……。

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紙の本獣の夢

2006/11/25 19:59

猟奇的なことが世界のどこかで行なわれている。野性的本能というのか、人間の心理なのか、お祭りが起こればそれに参加したくなってしまう、そんな危険な大衆心理。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:どーなつ - この投稿者のレビュー一覧を見る

富山県宇尾島市氷上小学校。一九九五年八月。この学校の屋上で衝撃的な事件が起こった。
六年生の児童二十三名が日没を待って夏休みの校舎に侵入。ふざけあうなどしているうちに児童の一人がコンクリートに頭部を強打、死亡するという事故が発生。他の児童たちは所持していたナイフで遺体を損壊。その一部を屋上から投下した。
—そして九年後…。
——————————————
大衆心理というものでしょうか。9年前に起こった小学校での悪夢が、再び時を経て再現されようとしている。
ネット上で加熱する「みやたま」信仰。9年前の主要メンバーたちが、まるで神のように崇められていて、自分も獣に食い散らかされたい、などというダークな発言がアンダーグラウンドで取り交わされている。
「カワイソウナ子」とは何を意味するのか。本当に「獣」は存在するのか。
猟奇的ではあるのですが、実際これと似たようなことは存在するかもしれないな、という現実味も感じられて少し怖かった。
現実世界でも、匿名投稿をいいことに、結構ダークな発言が書かれたりしていて、特にTVで猟奇的な事件が報道されると、それに便乗するかのようにネット上でも過激な発言が交わされる。
なんだか便乗というより、お祭り騒ぎのような印象。血が騒ぐ、というんでしょうか。自分の周りでは考えられない猟奇的なことが世界のどこかで行なわれている。野性的本能というのか、人間の心理なのか、お祭りが起こればそれに参加したくなってしまう、そんな危険な大衆心理。
今回の作品ではそれが顕著に表れていたように思います。話の内容としてはあまりおもしろく感じなかったのですが、人間がどういう風に煽られ、そして煽動されていくのか。自分の発言が実は誰かの発言によって洗脳されて出てきたものだという可能性に気付かない恐さなんかがひしひしと伝わってきました。

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