- 出版社: 光文社
電子書籍
一休暗夜行
著者 朝松健 (著)
「ほしみる」を探しだし焼き尽くせ──謎の言葉を遺し足利義満は死去した。放置すれば天下を逆(さか)しまにするという「ほしみる」の正体、そして在り処は? かくして、四代将軍・義持が、母親を人質にしてまで、その探索に遣わしたのは……誰あろう、主人公・一休宗純。だが、さまざまな怪異、苦難が、一休の前途を阻むのであった!──面白さ比類なし。朝松健の自信作!
一休暗夜行
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評価内訳
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2002/07/06 00:47
不思議と読み返してしまう小説がある
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆたやん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初はピンと来なかったのだ。実は某○●◎●オフに売ろうと思っていた(笑)さもなくば楽天市場でオークションにでも出そうかなって。…ごめんなさい^^;
しかし、不思議と何度か読み返していた。数作の短編の中のいくつかを夜更けに読みつつ、朝に枕代わりに潰れた文庫を発見する(わー。またごめんなさい!(笑))…ということを繰り返し結論が出た。この本、気に入ってしまったぞ…と。
主人公は一休である。しかし、<あの>クリクリ坊主の一休ではもちろん無い。誠実に苛烈な禅僧としての若者一休が主人公である。
一休といえば風狂人にして大悟、生臭にして大徳。正邪混交にして純粋。歴史の中に屹立するカオスである。とりあげられたこと多数。マンガだけでも無数にあるんではないか。
著者はその一休に闇を抱かせた。抱いた闇は一休の中で温度を上げてときめく何かと化した。
一休が闇を語るとき、この作品は闇にこそ咲く花の艶やかさをあなたの中に伝える。
2002/04/24 12:34
著者コメント
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投稿者:朝松 健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「一休閑話」
わたしはこの何年か、室町時代を舞台に据えた伝奇時代小説を発表し続けている。
それは現代の混沌した状況が、室町時代のカオスそのものと呼ぶべき状況と瓜二つだと感じたために他ならない。大いなる滑走の時代。新たな秩序を生み出すための大混沌時代。それが現代であり、室町であったのだ。
そんな室町時代を象徴する人物を一人選べと言われたら、わたしは躊躇うことなく゛彼゛を選ぶ。゛彼゛……一休宗純を。
一休宗純(1394〜1481)は室町時代を代表する禅僧である。後小松帝の子として生まれながら、生涯、庶民の中に身を置き、奇行と狂詩で禅宗の堕落と時の権力を批判し続けた。
一般にはトンチが得意なマルコメ坊主か、骸骨を振り回し皮肉を吐く意地悪爺のイメージで語られる人物である。
だが、わたしは上のイメージに即しながら、かつ全く新しい一休を創造したかった。常に庶民と共に生き、庶民と共に泣き笑い、庶民を救済する放浪僧。彼は人の心の闇を見据え、ときには、その闇より生まれた妖物・怪異と死力を尽くして戦う僧、一休。
平成11年年末に書いたショートショートから、14年正月に本書のために書き下ろした短編まで。ここに一冊に纏まった本書を前にした時、わたしは改めて思い知らされるのだ。
「このシリーズはわたしのオリジナルではない。一休宗純に書かされた物語群なのだ」と。
モダンホラーと伝奇時代小説の融合を目指すわたしにとって、本書は、一つの到達点である。そして、それ以上に──。
一休宗純の「闇物語」は短編・長編問わず、わたしのライフワークであり、今後もずっと、おそらく死ぬまで書き続けていくことだろう。