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影≒光
退魔を世業とする陰陽師の家系――『星之宮』の双子、姉の御影と弟の光輝。陰陽師の才能溢れる御影に対し才能ゼロの光輝は、偶然出会った魔術師に『精霊を視る能力』を認められ、独り海外に赴く。そして約一年後、精霊術を習得し自信を付けて帰国した光輝は御影が案ずるのをよそに、父からずっと蔑まれて受けた屈辱を返すべく試合を申し込む。――それが連続怪奇事件の始まりだった……!
影≒光 シャドウ・ライト
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紙の本影・光 突破編
2011/02/18 21:52
3年4ヶ月振りに出た“後編”
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作の発売が2007年8月24日。実に3年4ヶ月振りの続編である。しかも今回のエピソードは3冊に跨る前中後編だったので、同年1月25日発売だった前々巻以来の完結ということになる。ほぼ4年と言ってもいい。作者の生存確認が取れたのは喜ばしい限りだが、この空白期間に何かしら活動をしていた訳でもないようである。勝手に推測すれば、当時はまだ学生さんだった作者が社会人となり、かつてのような時間を執筆に費やせなくなってズルズル過ごしてきた結果かと思われるが、それでも筆を置かなかった点にはエールを贈りたい。元より本シリーズは、その初期設定において『風の聖痕(スティグマ)』(著:山門敬弘、富士見ファンタジア文庫)に極めて類似した部分も見られたが、“本家”が無念にも途絶えた今となっては、その遺志を継いで是非とも頑張っていただきたいものである。
さて、何事も無かったかのように前巻からの話が続く本巻だが、作中で『昨日』と言われてもこっちは3年以上も経っているのでさすがに違和感があったりする。しかし、それを脇に置けば、ルーシーと御影とミンティによる激甘成分たっぷりな光輝争奪戦(ルーシーはかなり脇役だったが)と、ジュエルとベルタの遺恨の決着という内容となろう。この双方に絡むのがミンティである。
展開自体は実にシンプルで捻りも無いのだが、御影と光輝を除く面々の心情描写に相当の頁を割いているため、その行動としての手数の少なさに対して話がちっとも進まない印象を受ける。しかも、理性と感情の間で揺れ動く想いではあるが、これが結論は既に出ているのに悶々としているだけのような、誰かに背中を押してほしいだけのような、そんなもどかしさに満ちているのである。これにバトルで用いられた魔術をいちいち詳しく説明する件が上乗せされる。正直なところ、あまり読み易い筆致では無かった。ただし、合間に挿まれた光輝争奪戦は面白く、全体としても悪くなかったので、次巻以降の新展開には期待を充分に持ちたい。