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守教 完結
著者 帚木蓬生
九州の筑後領高橋村。この小さな村の大庄屋と百姓たちは、キリスト教の信仰を守るため命を捧げた。戦国期から明治まで三百年。実りの秋も雪の日も、祈り信じ教えに涙する日々。「貧しい者に奉仕するのは、神に奉仕するのと同じ」イエズスの言葉は村人の胸に沁み通り、恩寵となり、生きる力となった。宣教師たちは諸国を歩き、信仰は広がると思われたが、信長の横死を機に逆風が吹き始める。
守教(上)(新潮文庫)
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紙の本守教 下
2023/07/12 09:21
伴天連追放令の中で。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トッツアン - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻ではキリスト教が根付き信仰の中で生きる人々の姿が平易な文章で描かれており、読むと清々しく温かなものが心を流れた。
下巻は、いよいよ伴天連追放令の時代として弾圧、棄教、殉教の時代へと突入。重苦しい読書を覚悟した(遠藤周作の『沈黙』のように)。
しかし、ある意味(よい意味)で空振りだった。勿論、磔刑や斬首などと言った場面や棄教等についての描写もあるが、それ以上に表面的には仏教徒を演じながらも、強かにキリスト教信仰を続ける人々の姿が穏やかに描かれている。何人も心の内にあるものまでは奪えない。それが下巻の主旨なのかもしれない。
キリスト教を理解し、信仰を捨てずともよいと言った仏僧には、今の宗教観・宗教界をみるおもいがした。
また、弾圧と言いながらも久留米という土地柄であったことも、この小説が重くならなかった理由だと思う。
ペトロ岐部についての記述には多くは割かれてはいないが、後記のところでまとめて述べられており、国内でのペトロ岐部の軌跡と最期を知るには十分だったと思う。
読みやすい小説で、良作だと思う。
紙の本守教 上
2023/07/12 09:08
キリスト教を受け入れる人々
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トッツアン - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代のキリスト教というと、伴天連追放令として弾圧、棄教、殉教と重苦しいものを感じえない。あるいは、その中でも信仰に燃える人々に暑苦しさも感じる。少なくとも、今の時代に生きる私には、少し勘弁して欲しいと思える部分がある。
この小説は、そうではなくキリシタン大名であった大友宗麟の夢、キリシタン国をつくることを託された家来から始まり、キリスト教(カトリック)を当時の人が如何に受け入れ、信仰していったかといったことが肩肘張らず素直に描かれている。
今のように様々は情報の溢れる社会でなく、教育がいきわたっている訳でもない当時において、本当に素直に信仰を受け入れる人々がいたということに、自分を顧みて反省をした。この本を読むと、扨、今の時代に本当の信仰人がいるのかなと自分も含めて考えてしまった。
読みやすい小説で、良作だと思う。
紙の本守教 下
2020/07/30 08:27
慈愛に満ちた信徒の姿を淡々と描き出した作風に感動する。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
慈愛に満ちた信徒の姿を淡々と描き出した作風に感動する。信仰とは個々人の心の中にあるもので、しかもキリスト教の倫理哲学としての良い側面だけを日本的に吸収したところに共感し共鳴しうるものが生まれるのだろう。未だに世界に災いを撒き散らす「一神教」の数々。「唯一の」「絶対の」という言葉の数々を除外すると、それらのいずれも民族特有の倫理哲学の集大成であり、むしろ奨励されるべきものと私は考えている。300年にわたる守教の歴史をノンフィクションのように淡々と綴る本作で描かれるのは、こうした個々人の生き方の道しるべとしての信仰であり、他に強制したり、ましてや政治に介入するようなものではない。現代の政教分離の思想に相通じるものがあり興味深い。実際のキリスト教は歴史が示すようにそんなものではなく、侵略との一体化を懸念した江戸幕府が警戒し、厳しく規制・弾圧したのも止むを得ない施策だったと思わざるを得ない。まあ、行き過ぎた部分も多々あったとは思うが・・・・。いずれにしろ、「一神教」に対しては憎しみにも近い違和感を持つ私ですら共感・共鳴しうる作品。「静かなる気迫」、「質朴な小説」といった解説の言葉が実にしっくりくる作品。蛇足乍ら、巻末に添付された膨大な参考資料に敬服させられます。
尚、本書が刊行される2017年は「今村信徒」の発見から150周年に当たる(著者)。
紙の本守教 上
2020/07/30 08:26
慈愛に満ちた信徒の姿を淡々と描き出した作風に感動する。
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
慈愛に満ちた信徒の姿を淡々と描き出した作風に感動する。信仰とは個々人の心の中にあるもので、しかもキリスト教の倫理哲学としての良い側面だけを日本的に吸収したところに共感し共鳴しうるものが生まれるのだろう。未だに世界に災いを撒き散らす「一神教」の数々。「唯一の」「絶対の」という言葉の数々を除外すると、それらのいずれも民族特有の倫理哲学の集大成であり、むしろ奨励されるべきものと私は考えている。300年にわたる守教の歴史をノンフィクションのように淡々と綴る本作で描かれるのは、こうした個々人の生き方の道しるべとしての信仰であり、他に強制したり、ましてや政治に介入するようなものではない。現代の政教分離の思想に相通じるものがあり興味深い。実際のキリスト教は歴史が示すようにそんなものではなく、侵略との一体化を懸念した江戸幕府が警戒し、厳しく規制・弾圧したのも止むを得ない施策だったと思わざるを得ない。まあ、行き過ぎた部分も多々あったとは思うが・・・・。いずれにしろ、「一神教」に対しては憎しみにも近い違和感を持つ私ですら共感・共鳴しうる作品。「静かなる気迫」、「質朴な小説」といった解説の言葉が実にしっくりくる作品。蛇足乍ら、巻末に添付された膨大な参考資料に敬服させられます。
尚、本書が刊行される2017年は「今村信徒」の発見から150周年に当たる(著者)。