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魔の山 完結
第一次大戦前、ハンブルク生れの青年ハンス・カストルプはスイス高原ダヴォスのサナトリウムで療養生活を送る。無垢な青年が、ロシア婦人ショーシャを愛し、理性と道徳に絶対の信頼を置く民主主義者セテムブリーニ、独裁によって神の国をうち樹てようとする虚無主義者ナフタ等と知り合い自己を形成してゆく過程を描き、“人間”と“人生”の真相を追究したドイツ教養小説の大作。
魔の山(上)(新潮文庫)
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紙の本魔の山 改版 下巻
2015/08/17 17:25
「下山もまた登山なり」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間をまるごと放り込んだような作品。
難解だという前評判から、いつかは読んでみたいと、しばらく「登頂」する機会を探っていたのですが、いざ読んでみると、愛すべきキャラクターばかりで、楽しく読め、深く感動しました。
確かに、上巻と異なり、下巻に入ると当時のヨーロッパの論点を網羅せんとした議論(政治、法学、政治学、歴史学、芸術、音楽、天文学…)が続き、果たして今小説を読んでいるのかと道に迷いそうになるかもしれません。しかし、あきらめず歩を進めてください。その道中、マンはすてきなエピソードをたくさん用意しており、小説の可能性に対する大いなる希望と人間の本質に迫らんとする彼の気概が感じることができるはずです。
そして、作品全体を貫く深くて暗いテーマを抱えながら、物語はやがて最後を迎えるのですが…、私自身、あの最後でしか最後たりえないのではないかと思います。
多くの人に「魔の山」を読んでほしい、そして、あの頂からの景色を見てほしいと思います。
人生の宿題にすることなく、ぜひすぐにでも読み始めてほしいです。
紙の本魔の山 改版 上巻
2023/01/15 09:42
療養の生活の中で
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:令和4年・寅年 - この投稿者のレビュー一覧を見る
結核の療養施設で過ごす青年の日々。直ぐに良くなって元の生活に帰るつもりでいたが、一年が経ってしまう。その過程で、時間の流れを見詰め直す。人文主義の役割とは何かを問う。
紙の本魔の山 改版 下巻
2022/01/26 16:30
魔の山 下
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハンス・カストルプ青年は山での暮らしに相当慣れ、周囲の人々から多くの物を得ようとする。セテムブリーニとナフタの議論、ぺーペルコルンの持つ人間性、山での先輩ヨーアヒムの強行的な出発と帰還、オカルト的な死者の呼び出しと対話、決闘、様々な要因による死別。これらを乗り越えてハンス・カストルプ青年は確かに成長するのだが、その先に彼がどういう目に会ったのか、明確には描かれていないが、ラストを思い返すと心が暗くなる。
紙の本魔の山 改版 上巻
2022/01/21 20:19
魔の山 上
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平凡な小市民ハンス・カストルプ青年が従兄への見舞いがてらスイスの高山に療養に行き、療養所で体調を崩して他の患者たちと交流する。山の上の文化は「低地」とは異なり、他の患者や医師たちと議論を交わし、思索を深める事で時間や愛、生体としての人間などについて認識を新たにしていく。
教養小説ということで主人公は成長しているのだろうし、いつだったかこの小説を「世俗としての低地を下に見て芸術的・哲学的高みへとのぼっていく小説」という評価を見たことがあった気がするが、なんとなく療養所もハンス・カストルプの思索もうさんくさく感じる。これは私が世俗にまみれたからなのだろうか。
紙の本魔の山 改版 上巻
2019/01/26 21:59
私はこの療養所に入院するのは嫌だな
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この療養所での主人公・カストロプの生活を描いたこの作品のタイトルが、なぜ「魔の山」なのか。読んでみてわかった。出ようとしても出られない、出ようと思うと主人公のいとこヨーアヒムのように送還されてきて死を待つしかない体になるか、主人このように出兵するしかない。もちろん、無事に退院できた人もいることにはいるのだが、ほとんどの人には死神しか退院を待っている人がいない。会えばいつも論戦するセテムプリーニとナフタ、人間ができているペーペルコルンもこの療養所で体を悪化させている。WW1前の話だから死ぬと決まっているものは必ず死ぬものかもしれないが、何かこの山の療養所は不気味だ
紙の本魔の山 改版 下巻
2022/10/01 18:13
山の下に待つものは
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
7年間の療養生活の中でも、虚無的なナフタの言葉が特に印象的です。健全な肉体を手にしたハンスが、やがては戦争へと巻き込まれていくような不吉な予感も漂っていました。
電子書籍魔の山(下)(新潮文庫)
2018/05/30 05:05
下界から切り離された
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
サナトリウムの風景が味わい深かったです。不条理な滞在を迫られる中でも、自らの生きる意味を見つめ直す青年の姿が感動的でした。
紙の本魔の山 改版 上巻
2015/09/26 10:09
読みとおすことで見えてくるもの
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:naritaya - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者が最初に断っているように、「単純」で、さほど魅力的でもない青年、ハンス カストルプの平凡な人生が、延々と描かれる。決して何も起こらないわけではない。彼は、さまざまな興味深い人と出会い、さまざまな出来事にも遭遇する。それらに彼なりに真剣に向き合っていく。中には心打たれるエピソードもあるのだが、なぜか、彼がその経験から学び、成長していったとは感じられない。どこか中途半端で場当たり的であり、どこまでも「単純」かつ凡庸なままなのである。彼の進歩のなさのせいか、一つのエピソードが終わる度ごとに、私はこの本を投げ出しそうになった。しかし、一度読み始めた方には、少々つらくても是非最後まで読み通すようお勧めしたい。読み終わってこの本を閉じた時、なぜ、この青年の取るに足らない人生に長々とつきあわされたのか?その意味が理解できるにちがいない。