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小さいおうち(文春文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 4 7件

電子書籍

小さいおうち

著者 中島京子 (著)

昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない、上質の恋愛小説。第143回直木賞受賞作。山田洋次監督で映画化。

小さいおうち

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小さいおうち

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みんなのレビュー7件

みんなの評価4.0

評価内訳

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  • 星 1 (1件)

電子書籍小さいおうち

2013/11/04 22:39

時を経てより鮮やかに映る小さいおうちでの日々

22人中、21人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:browntabby - この投稿者のレビュー一覧を見る

小さいおうちの思い出は、甘やかで愛おしく、そのなかにある秘密はどこか後ろめたくて、子供の頃に、こっそり隠した宝箱のような輝きを放っている。読者は、そんな宝物を覗く楽しみで、タキのノートをめくるのである。
 物語は現代のタキが、十五歳だった昭和7年から11年間、女中として奉公した平井家での日々を思い返しながら、ノートに残していくことで綴られる。たくさんの家で奉公してきたタキであるが、赤い三角屋根の平井家で過ごした日々は特別だった。
 平井家の時子奥様は若く美しく、何不自由なく育ったお嬢様そのものであった。年も近く、お互いを認め合い、唯一無二の関係で結びついた時子とタキ。ひたむきに時子奥様を慕うタキの姿が、まっすぐ健気で、だけど芯は通っていて、また、タキをタキちゃんと呼び、信頼を置く奥様のお嬢様らしいおっとりとした人柄も微笑ましい。
 女中という職業は、貧相で不憫な職業として描かれることが多いが、小さいおうちのタキは清々しく、誇り高い奉公人として映る。何より、タキ自身が平井家で働くことをとてもとても気に入っていることが伝わってくるのだ。
 そして、物語から見える2人の小さいおうちでの生活から、昭和初期がこんなにも優雅でモダンな時代とは、興味深い。今でも全然古くない銀座の資生堂やアラスカのエピソードや、華やかに装う奥様の姿など、そこには私が知らなかった昭和の情景を見た。それはカラフルで、今までモノクロでしか見えていなかった昭和初期の東京がお話を通して、彩られていくようだ。昭和初期といえば、モノクロ写真で見た主に戦時中~終戦の頃の、瓦礫に覆われた町の印象が強かったからだ。
 そんな2人は奥様の秘密を巡って一度だけ対立することがある。タキのまっすぐ通った芯の強さを感じさせるエピソードで、晩年になってもタキの心に強く残る一件だ。心の拠り所として、振り返れる思い出があることは幸せに思えるが、物語最終章でのタキの姿からは平井家にまつわる記憶は果たしてそれだけだったのかは見えない。さらに、戦争に翻弄された当時の人々の運命もまた物語に大きな影を落とす。
 華やかで幸せだったタキと時子の小さいおうちでの思い出は、それからの2人と平井家の歩んだ人生の明暗やその年月の重みを通して、より鮮やかに読者の心に刻まれるのである。

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紙の本小さいおうち

2016/05/04 13:27

よい女中なくしてよい家庭はない

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「よい女中なくしてよい家庭はない」

  昭和の初め、山形から東京に出て来て、景気の良かった玩具会社の常務の家の
女中となったタキさん。
女中やお手伝いという言葉には、どうも身分が低いというイメージがありますが、
一生、独身で色々な家庭の女中や家政婦をしたタキさんから言わせたら
「百の夫婦がいれば百の家庭がある」それくらい女中という仕事もピンからキリまで
多岐にわたっていた、ということが最初に語られます。

 現代になって、年老いたタキさんが昔を思い出して手記を書くという形をとって
14歳で初めて東京に出て、女中奉公した家の思い出を語ります。
昭和3年生まれの田辺聖子さんの『欲しがりません勝つまでは』とあわせて読むと
興味深いのですが、もちろん後から知る歴史的には日本はずっと戦争ばかりして
いたのです。

 しかし、当時の上流家庭では戦争の影はなく、むしろ景気がよくて再婚になる
けれど旦那さんと奥様はとても仲むつまじい。
連れ子であるけれども恭一という男の子もかわいがられて、女中のタキさんも
「タキちゃん、タキちゃん」と呼ばれて家族同然の暮らし。
全体的に明るい雰囲気が漂っていて、タキさんが、家事から何からきちんと
きれいに「頭の良い女中」である、ということがよくわかる細かい描写が
すばらしい。

 どんなお料理をどんな季節に出していたか、奥様から何を学んだか、女中といっても
親同然の責任を持つという昔の裕福な家庭の女中という立場がとてもよく
わかります。
幸田文の『流れる』は、落ち目の芸者の置屋の女中になった中年女性の物語ですが
しっかりものでないと勤まらないという点では同じ。

 タキさんの手記を甥の次男の健史が読んで、戦争中なんだからこんなはずはない、
などと口を出すのが、最初はイライラするのですが、これが最後まで読むと
タキさんの意志を継ぐのは健史だったのだ、という中盤からと後半の流れががらっと
変わる凝った構成です。
お金持で仲の良い夫婦だけれど、奥様の前に美術学校を出たという若い板倉という
社員が現れる。


 昭和初期の日本の浮かれ具合と、だんだん敗戦色濃くなってからのきつさが
よい対比になっています。
今でも家政婦さんがいるような家庭というのは、限られているけれど、普通の家庭とは
違う奥様の様子に敏感になる、まだ若いタキさんがやはり賢い女性だったと
つくづく思うのです。

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電子書籍小さいおうち

2017/05/25 10:41

素晴らしいのひとこと。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る

なんとなく後回しにしてしまっていたけれど、読んで大正解。唸らせる直木賞作品。単なる女中さんの回想録に留まっていないところが素晴らしい。まさあんな展開で結末を迎えるとは。昭和初期の市井の生活がよく分かるのもさることながら、世間がだんだん戦争へ向かって行くときの国民の昂揚感がよく伝わる。過去から眺めれば地獄の始まりなのかもしれないが、当時はやはり「もっと良くなる」かもしれないという希望はあったろう。そういう時代。時々挟まる甥っ子の指摘、それは後の歴史観。そのずれをきちんと盛り込んでいるのが秀逸。映画必見だな。

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紙の本小さいおうち

2016/02/18 08:56

ストーリー構成といい、テーマといい、申し分なしの大傑作!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品は、中島京子氏の代表作の一つです。映画化もされましたのでご存知の方も多いと思いますが、この作品は小説として読むほうが深い味わいがあると私自身は思います。昭和の初め、田舎から出てきた主人公タキはモダンな赤い屋根の一軒家でお手伝いとして働き始めます。この家にはハンサムな旦那様と綺麗な奥様、そして一人息子の坊ちゃんが何不自由なく暮らしているのですが、この家にはある秘密がありました。さて、時代を経て、タキの親戚にあたり一人の青年が若かりし日の「タキおばあちゃん」が過ごした「ちいさなおうち」での日々をつづった日記を見つけます。そこにはある秘密がつづられていました。一度読み始めたら、読者はすぐにストーリーに引き込まれていくでしょう。

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電子書籍小さいおうち

2014/04/24 00:12

映画より「本」がオススメ!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:やまば・や - この投稿者のレビュー一覧を見る

もちろん映画も良かったです。
ただ、ビジュアルでドン!と提示されるよりか、
自身の想像力を膨らませて世界を描くと、
より一層味わえる作品ではないかと思いました。
戦争ものですが、戦争と距離を置きつつも、
キッチリとその時代を描いているあたりは脱帽モノ!

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電子書籍小さいおうち

2018/05/31 05:28

第143回直木賞受賞作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

ヒロインの勤め先である、赤い屋根の洋館が美しさ溢れていました。雇い主にただひたすら忠実な姿が心に残りました。

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紙の本小さいおうち

2017/09/03 14:45

読むところが違う?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読書はじめました - この投稿者のレビュー一覧を見る

面白くなかった。
同性愛者をほのめかす描写から
「そういう話か」と思いながら読み進めると、何か物足りない。
ラストの三人の肖像画のシーンで、
画家自身が感じていた、踏み入るこのとできない拒絶された世界を連想し、
結局のところ画家は奥様と家政婦のただのカモフラージュ役だったのだろうかと
想像してしまう。

昔読んだ、川端康成さんの「女であること」の方が面白かった。

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