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3件
しをかくうま
著者 九段理江
第45回野間文芸新人賞受賞作
「東京都同情塔」が芥川賞を受賞して更なる注目を集める著者が、
ほとばしる想像力で描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。
太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、
驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで
移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。
そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、
しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。
現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を
取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、
両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと
「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
しをかくうま
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しをかくうま
2024/06/03 10:45
「詩をかく馬」か「死を欠く馬」か
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの「しをかくうま」というのは、「詩を書く馬」という意味なのか、それとも「死を欠く馬」のことなのか、「シヲカクウマ」という競走馬の名前であったりもする。登場人物のひとりは名前は詩だという、主人公は馬名が9文字から10文字になることは大事件でことによっては人類は絶滅すると叫ぶ、もちろん誰もその意見に同調したりはしない、物語にはホモサピエンスのヒとネアンデルタール人のビが共存していた「過去」、競馬実況アナの主人公が住む「現在」、そしてニューブレインと称するAIが脳を支配する「未来」が登場する、人はどうして馬にまたがるのか、または馬はどうして人を跨らせるのか、それは馬が人に「乗れ」と命令したから。どんどんこの物語の世界観にひきつけられていくが、私にはヒとビが生きた「過去」の世界が一番幸せに思えた
2024/06/18 20:42
人間の高慢さに対する感想
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投稿者:ゲオルグ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私を含めた多くの人が人間中心主義を疑うことがほとんどないと思うので、『しをかくうま』を通じてその機会を得たことが面白かった。競馬界で行われている馬の改良繁殖の考え方を人間社会に当たり前のように適用する根安堂一族の立場には、TV番組のディレクターが代表するように最初は反射的に異議を唱えたくなるが、なるほどたしかに馬と人間を分けて考えることにも一種の高慢さがある気がしてくる。論理的には人間においても同じ考え方が成立するのに、自分たちに関わることだけを特別扱いし、論理的でなくなる人間の姿に疑問に感じる。
2024/06/02 08:13
想像力というか創造力
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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
そのうち解説本まで売れるようになるんじゃないかと思うほど、もはや文豪のような佇まいの作家さん。たとえば大江健三郎のように、同じ時代を生きていて良かったと感じる日も遠くないのでは。ちょっと独特の立ち位置にいる方だと思う。
小麦の話であったり、移動手段の話であったり、サピエンス全史的な部分も面白い。メタファーも表出さているものも多くて盛り盛りの純文学で、本作もこの先数十年以上読まれていきそう。個人的には、当時好きだったグラスワンダーが出てきて嬉しかった。