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旗師・冬狐堂
著者 北森鴻 (著)
2010年、48歳の若さで亡くなった北森鴻さん。「旗師・冬狐堂」は古美術に造詣が深かった北森さんが精魂傾けて取り組んだ、まさに代表作といえるシリーズです。旗師とは店舗を持たない古物商のこと。旗師・冬狐堂こと宇佐見陶子は、銀座の画廊で見たタペストリーに魅せられ、現金で全作品を買う約束をする。しかし期日になっても作品は届かず、それどころか作者は死に、作品は消えていた――。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼を描く古美術ミステリ、ここに開幕!
緋友禅 旗師・冬狐堂
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紙の本緋友禅
2006/01/11 06:30
冬の狐ネメシスに化ける
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
同氏のもう一人のヒロイン考古学者・蓮丈那智に比べると、本シリーズのヒロイン・宇佐見陶子は、美貌においては拮抗しそうだ。だが、クールさにおいては、那智の方が断然優っているように思われる。とはいっても、陶子が情に流されない冷静な判断が全く出来ないわけではない。
むしろ店を持たない流れ旗師だから、瞬時の判断力は日々鍛えられ、
普通の人よりは鋭敏な感覚を持っている。その点は、時折出てくる競りや価格交渉の場面で提示される。だが一方で、自らを「物事に積極的に関わっていこうとするタイプではない」といいながらも、彼女は厄介な事件に出くわす度に、首を突っ込み、どっぷりはまってしまう。
陶子は、小さな画廊で見かけたタペストリーに惚れ、全作品を
即金で買い上げた。ところが、期日になっても品物は届かず、作者の家を訪れると、そこには作者の死体が…という表題作もその一つだ。
この作品や他の短篇「陶炎」「『永久笑み』の少女」「奇縁円空」において、
陶子はネメシス(復讐の女神)を演じる。騙されたり、喧嘩したり、
必ずしも良好な関係を築いていたとは言い難い人達に対して、彼女がそこまで義理立てするいわれはない。けれども彼女の矜持、作品への愛、倫理観が、絶対悪を許さない。その毅然とした態度に、惚れ惚れする。
惚れた挙げ句に本人に「あなたは実はとっても優しい心の持ち主で、冷たい肌の下には、人一倍熱き血が流れているんじゃない?」 などと聞こうもんなら、やっぱり答えては貰えないだろう。あくまでクールな彼女の側で練馬署の犬猿コンビ・根岸と四阿刑事やカメラマンの硝子ら冬狐ワールドの面々が、意味ありげな笑いを浮かべている様子が、目に見えるようだ。
紙の本瑠璃の契り
2022/07/31 23:16
シリーズ最終作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとも寂しい気持ちになりますが、全4作からなる「旗師・冬狐堂」シリーズもこれで読み納め。今回も美術品を巡る上品な謎解きを楽しめますが、主人公をはじめとした登場人物達の内面的な部分、過去の掘り下げも見受けられ、より登場人物たちの魅力が深まっています。このシリーズ、もっと続いて欲しかったなぁ。
紙の本緋友禅
2022/04/30 23:52
シリーズ三作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
冬狐堂シリーズ第三作。今回は中編+複数の短編で構成。「円空仏」を巡る中編は読み応えたっぷり。様々な古美術への関心も高まり、満足度の高いシリーズです。
紙の本瑠璃の契り
2017/04/25 19:15
陶器と磁器の違いって知ってますか(笑)
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに北森さん。
どの作品も面白いのだけれどパターン的なものを感じて、少し遠ざかっておりました。
旗師と言われる店舗を持たない骨董屋さんである冬狐堂こと宇佐美陶子を主人公にした連作短編集の2作目です。
相変わらず短編ではもったいないのではと思う題材と謎解きの面白さでした。
中でも焼き物が陶磁器
つまり陶器と磁器に別れ別物であることをこの作品で今頃知りました。
何年もTVで「なんでも鑑定団」見てきてたのに(苦笑)。
他にも読んだら他人に知ったかぶりをして話たい骨董品・美術品に関する蘊蓄がいっぱいで楽しい一冊でした。