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山本周五郎名品館
没後50年、いまもなお読み継がれる巨匠の傑作短篇から、沢木耕太郎が選び抜いた名品。
山本周五郎の世界へ誘う格好の入門書であり、その作家的本質と高みを知ることができる傑作短篇集の決定版!
生涯、膨大な数の短篇を遺した山本周五郎。
その大半がいまだに読み継がれ、多くの読者に愛され、また後進の作家たちに多大な影響を与え続けている。
市井に生きる庶民の哀歓、弱き者の意地、男と女の不思議など、特に時代小説に傑作が多く、その数も膨大なものがある。
山本周五郎作品に深く傾倒する沢木耕太郎氏が独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆。
第1巻は「一丁目一番地のひと」と題して、周五郎作品に登場する女性像を分析する。
本書の収録作は以下の9篇。
「あだこ」(絶望した武士を立ち直らせるけなげな娘)
「晩秋」(仇である老臣の立派さ)
「おたふく」(かわいい女)
「菊千代抄」(男として育てられた君主の哀しみ)
「その木戸を通って」(ふっと来て、ふっと消えた女)
「ちゃん」(酔っ払いだが腕のいい職人の父親)
「松の花」(妻に死なれて初めて知る妻の偉さ)
「おさん」(自分の性に翻弄される女を追って)
「雨あがる」(おおらかな浪人とその妻)
おたふく 山本周五郎名品館I
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2019/02/03 13:54
山本周五郎の世界に浸れました。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
長編小説も良いですが、読んでいて疲れてしまうこともあります。
短編もので、もう少し続きを読みたかったなというところで終わっているものも魅力的です。
私は「あだこ」が好きです。
二人が幸せになるといいなと余韻に浸っています。
2018/09/18 17:23
沢木耕太郎さんが選ぶだけで読みたくなるのは何故だろう
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる文春文庫オリジナルの山本周五郎短編選集全4巻の最終巻。
山本周五郎はその生涯において300篇になろうかという短編小説を書いたという。
沢木耕太郎さん選による選集では一巻につき9つの短編が収められているから全4巻で36篇となる。つまりはそれでもわずか1割の短編を読んだことにすぎない。
せっかくなのでさらに多くの短編を読む機会を持たれることを薦める。
そして、いつか沢木さんの選でなく自身の選による選集が編まれるといいだろう。
この4巻めには、掲載順に「野分」「並木河岸」「墨丸」「夕靄の中」「将監さまの細みち」「深川安楽亭」「ひとごろし」「つゆのひぬま」「桑の木物語」の9篇の短編が収められている。
有名な作品でいえば映画にもなった「ひとごろし」であろうか。臆病者と評判の武士がその汚名をはらさんと上意討ちの命を受け武芸者討伐の旅に出るという物語は松田優作主演で映画化されている。コント55号が演じた映画もあるそうだから、その方が作品の雰囲気に合っているやもしれない。
私は「日本婦道記」の中の一篇にもなっている「墨丸」が好みだが、一方で岡場所の女たちを描いた「つゆのひぬま」も気に入った。
「つゆのひぬま」とは「露の干ぬ間」と漢字で表記した方がわかりやすいが、岡場所のような場所で愛し合っても所詮はほんのわずかなことと年かさの女はいうが、その言葉を確かめるように若い女が客の男と情を通じる。
「つゆのひぬま」という言葉の持っているやわらかな気分が好きだ。
2018/09/15 07:37
この巻全作読ませます泣かせます
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる文春文庫オリジナルの山本周五郎短編選集全4巻の3巻め。
表題となった「寒橋」(「さむさばし」と読む)は山本周五郎の創作の橋の名ではなく、現在の築地のそばの一角にあった明石橋の俗称のことだと、巻末の沢木さんの「解説エッセイ」に書かれている。
何故沢木さんがそこにこだわるかというと、沢木さんの本籍が小説の中にも登場する小田原町で、沢木さんの父親はそこに住んでいたという。
そういう因縁の地が舞台の短編「寒橋」は、沢木さんのそういう思いとは別に深い父と娘の情愛にあふれた作品である。
この3巻めには、掲載順に「落ち梅記」「寒橋」「人情裏長屋」「なんの花か薫る」「かあちゃん」「あすなろう」「落葉の隣り」「茶摘は八十八夜から始まる」「釣忍」の9篇の短編が収められている。
「寒橋」もいい短編だが、この巻でいえばなんといっても「かあちゃん」であろうか。(「人情裏長屋」も好きだし、名作『さぶ』の世界を短編にしたような「落葉の隣り」もいいし、「落ち梅記」だって外せない。つまりはこの巻はほぼ全作いい)
「かあちゃん」は沢木さんに言わせると「よくある人情話のように見えて、これほど完璧に、これほど美しく仕上げられた例を知らない」と絶賛である。
貧しい長屋暮らしの中でこれほど美しい家族があろうか。これは山本の創作かもしれないが、こういう「かあちゃん」とこういう家族がきっといると信じたくなる。
最後の「釣忍」は「シダ植物のシノブグサの根や茎を束ねて、緑葉の涼しさを楽しむ」もので、夏の季語にもなっている。それがうまく作品に生かされている。
2018/08/16 15:21
この巻もまたいい短編ぞろい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる山本周五郎の短編選集の、文春文庫オリジナルの2巻め。(全部で4巻になります)
この巻の巻末に収められた沢木さんの「解説エッセイ」で、沢木さんは自身と山本周五郎の縁について書いていて、それは沢木さんが30代になったばかりの頃、新潮社から出た全集の山本周五郎の巻に「解説」を書いたという。
当時沢木さんは新進気鋭の書き手ではあったが、解説に沢木さんをあてた選抜はかなり勇気がいったのではないだろうか、それにしても当時の新潮社の編集者は先見の明があったといえる。
それからたくさんの水が橋の下を流れ、沢木さんはこうして山本の幾多の短編小説から名品といわれる作品を選んでくれているのだから、読者にとってありがたいかぎりだ。
この2巻めでは、掲載順に「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「若き日の摂津守」の9篇の短編が収められている。
よく知られた作品としては「ちいさこべ」や「よじょう」、表題となった「裏の木戸はあいている」があるが、沢木さんはこれらの9つの短編が「意地を貫いた」作品群として括られるのではないかとまとめたようだ。
もちろん、男女の愛の機微として「法師川八景」や「榎物語」などは読むことができるし、「よじょう」はよく言われているように作品の完成度がとても高い。
私はこの巻の中では「法師川八景」が好きだ。突然の男の死で婚家にも入れず、幼児を抱え生きていくことを決意した女、そして彼女を密かに支えるかつての婚約者。
仕合せの予感を残して作品が終わるところがいい。
2018/08/02 16:14
短編なのに、この奥深さ
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年(2017年)没後50年を迎えた山本周五郎だが、その人気は衰えない。
人気が衰えないということは、新しい読者が没後も次々を生まれているということだ。川端康成のようにノーベル文学賞を受賞した作家もいるが、山本周五郎の場合、たとえ無冠であっても(直木賞を受賞したが辞退)いつまでも愛される作家というのも稀有であろう。
その生涯、300篇近い短編小説を書いたという山本周五郎であるが、その中から一人の編者で文庫本にして全4冊の短編集がこの春から刊行されている。
編者が沢木耕太郎さんというのがなんといっても、いい。
沢木さんが山本周五郎さんのどんな短編を選び、どんな評価をするのか。
読者にとってこんな楽しみはない。
その1巻めとなるこの作品集では、掲載順に「あだこ」「晩秋」「おたふく」「菊千代抄」「その木戸を通って」「ちゃん」「松の花」「おさん」「雨あがる」といった9篇が収録されている。
しかも巻末には、文庫本解説としては少し長めの沢木耕太郎さんの「解説エッセイ」が載っていて、沢木さんの愛読者にとってもうれしい編集になっている。
沢木さんの解説は一つひとつの作品で書かれているから、解説としても丁寧だ。
この9篇の短編でいえば、『日本婦道記』の1篇である「松の花」がやはりいいが、藩の改革のために自らを殺して冷酷に生きた側用人と、彼に恨みを持つ娘の交流を描いた「晩秋」がよかった。
昨年亡くなった葉室麟さんが好きそうなそんな世界観であるが、ぐっと胸深くきた、短編であった。