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死後開封のこと
著者 リアーン・モリアーティ,和爾桃子
すべてはあの手紙がきっかけだった……屋根裏で偶然、夫の字で「死後開封のこと」と書かれた封筒をセシリアが見つけさえしなければ。そのときから、優しい夫と三人の娘との幸せな家庭に暗雲がたれこめる。そのころ、テスもまた夫と従妹からの衝撃の告白に動顛していた。二人は愛し合っているというのだ。テスは息子を連れ、母親の看病を口実に実家へと向かう。その故郷で出会ったのは、何者かに殺された娘をいまだ忘れられない老婦人レイチェルだった……開けてはいけない「パンドラの箱」を開けてしまった女性たちを描くトリッキイなミステリ。
死後開封のこと 上
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紙の本死後開封のこと 下
2021/07/30 22:36
人生は矛盾と偶然に満ちている
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻に入って、3人の女性たちの心境、環境に俄然動きが出てきた。
娘の事件の重要証拠を見つけたレイチェルは、警察に再捜査を求める。
宙ぶらりんな気持ちのまま、元カレとよりを戻したテスのもとに、裏切った夫と従妹が乗り込んでくる。
重い秘密を背負わされたセシリアは、夫を憎みながらも家族の平穏を優先しようと苦しい芝居を続ける。
そしてイースターの3連休に人生を変える出来事が・・・。
そこから、彼女たちは何をつかみ取り、何を決断するのか。
前作『ささやかで大きな嘘』では、ヒロインたちが大きな壁を打ち破って新しい世界に踏み出す展開が、爽快さを与えてくれたが、今作では、過去の罪と償いという重いテーマだけに、その決着のつけ方は各人各様で、その選択の可否は読者の判断に委ねられた感が強い。
そのうえで、どんな決断をしたにせよ、そこに導いた材料には常にモレがあり、情報の取りこぼしがある、というのが人生の真実なんだなぁと改めて感じさせる。
失敗のない人生はなく、どんな過程をだどろうとも、その人の自己責任。そして人生はそんな人間を微笑みながら見つめている。
紙の本死後開封のこと 上
2021/07/10 00:27
家族の、自分の、知られざる一面
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー以来、すべての作品がベストセラー入りしているモリアーテイ。
前作『ささやかで大きな嘘』は、幼稚園を舞台にしたママたちの、自我の覚醒と再生の物語だった。
今作は、やはり家族が大きなテーマで、配偶者の知られざる一面を垣間見たヒロインたちの心の動きが、ややオーバーながら、臨場感たっぷりに描かれていて、しっかり作者の王道路線だと納得する。
ただ今作では、物語の主軸をなすセシリア夫妻の秘密(最初は夫だけの、上巻最後からは妻も加わった)と、それに振り回されるセシリアの性格が、どうにも結びつきにくい感がある。このセシリア、自他ともに認める有能な主婦であり、ビジネスのセンスもあり、子供たちも大きな問題なく育てているようだが、とにかく口数が多いのだ。ビジネスというのが主婦仲間をターゲットにした販売代理店なのだが、その面では口数が多いのも結構なことだが、かなり取り留めのない芋づる式の雑談を垂れ流し続ける。
こういうタイプは失言が多く、自分の発言の何が相手を傷つけたかも覚えていないのが一般的で、さらにビジネス以外にも、子供の送り迎えやら、PTAのパーティーやらで年中忙しくしている。まるで、何かに追われるように、または何かから目を背けるために、意図して忙しくしているような印象を受ける。
主要人物3人の中で、一番興味を惹かれたのがセシリアなのも、その落ち着きのなさ、表面的な顔の裏側に隠されているにちがいない不安感といったもののためだ。
抱えきれない秘密を共有するはめに陥り、心のバランスを崩しはじめたセシリア。下巻の彼女の動向が大いに気になる。