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親子という病(講談社現代新書)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3 1件

電子書籍

親子という病

著者 香山リカ (著)

すべての親子は、気持ちワルイ。親が子の幸せを願う思いは無償なのか!? 子が親を慕う気持ちに偽りはないのか!? 「家族よ、ありがとう」「ビバ!親子」というメッセージが増加する日本社会。誰もが切実に悩み、求める「幸福な親子関係」はあるのか。親子の病理の根源を探り、処方箋を提言する。(講談社現代新書)

親子という病

648 (税込)

親子という病

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紙の本親子という病

2009/05/26 00:32

親の愛情を無意味、無条件に讃える歌が多いのは、私も気になっています

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る

最近はちょっとした本屋の心理学とか精神医学とかの棚を見ると必ず香山リカの本が数冊平積みされている。タイトルだけ見ると、同じようなネタでいくつも本を書いているらしいのがわかるので、あまり読まなくなってしまったのだけれど、この『親子という病』はどうしても気になってしまって、何度か立ち読みの拾い読みをしたし、それでもやっぱり買うべきかどうかと迷って半年以上がたってしまった。で、どうしても気になるので読んでしまった。
香山リカは同世代だからなのか、同業者なのだからか、以前から取り上げる話題が私自身にとっても非常に近しいものがあって、それで読んでしまうのだが、この本では「まえがき」にあるように、「ここ数年、「家族への愛」を歌うCDが次々にリリースされている」ことと、そこで歌われているのが「「産んでくれてありがとう」という無条件の感謝」であることに私自身がすごく違和感を持っていたからだ。「お母さん、産んでくれてありがとう」「あなたの愛に感謝」なんて、人前で堂々と歌うようなことではないのに、今時の若者は歌ってしまうのである。それっておかしくない? と思っていたので「そうそう、そこのあたりをやっぱり香山リカは取り上げてくれたんだね」という気持ちで読んだ。
しかし、書かれているのは現代の状況分析でしかなかったように思う。読者に分かりやすくするためか、取り上げられているのは新聞記事程度の情報でしかない親子にかかわる事件を中心に語られているし、臨床ケースは守秘義務の問題があるとは言え何となく出来すぎたケースのようにしか読めない。さらに、第三章「母に依存する娘、娘を支配する母親」に至っては多くが信田さよ子氏と斎藤環氏の本をネタに分析を進めている。これってありなの?
それでもまあ、全体的には親子であるが故の問題をそれなりに提示してくれているので、教えられるところもないではないのだが、次の点はいただけない。
第六章「理想の家族にひそむワナ」で、若者の「家族ブーム」を歓迎している人たちがいて、それが今の家族礼讃を下支えしているという論の終わりに、政治家こそがこれを支持しており、その理由として「社会保障費の軽減」と「労働のモチベーションの確保」があると言うのだ。確かに社会全体からみればそのような論点もありうるのだろうが、それまで親子それぞれの、親の側からみた問題、子どもの側からみた問題として、親子の問題を語ってきたところで国家の問題を取り上げるのはやや唐突に思える。
最後の二章で最近の親子の問題に対する解決策(?)や対応策を述べているが、そこで語られているのは何だかテレビで評論家がぼやいていることと変わらないように思える。そう言えば最近は香山リカ自身がやたらとテレビに出ているので、評論家風の言説が得意になったのかもしれない。
問題の目の付けどころは悪くないと思う。だが、現状を並べているだけで、それにおざなりな対応策を書きならべられても、なぜ今親子が問題なのかが今ひとつ浮かび上がってこない。それでもなぜ「親子という病」なのか。
「あとがき」を読んで何となくそのあたりが理解できてしまった。これは現状分析に名を借りた、香山リカ自身の問題を吐露している本だったのだ。だから各章で親子の問題と言いつつも、多くが母娘の問題として取り上げていたりしていたのだ。
精神医学には少数の症例をもとにしてある疾患なり問題なりを解明していくという方法があるにはあるが、自身の問題をマスメディアでしかわからない事件とからめて解決しようとするのは、精神科医の方法ではなく、やっぱり評論家に近いように思う。
そんな物言いをする人ではなかったと思うので、何だか残念だ。

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