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復興期の精神(講談社文芸文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 4.4 1件

電子書籍

復興期の精神

著者 花田清輝 (著)

ルネッサンスを生きたダンテ、ダ・ヴィンチら22人の生の軌跡を追求、滅亡に向かう文明の復活の秘密を探る。大胆なレトリックと苛烈な批判精神が横溢する名著!

復興期の精神

1,242 (税込)

復興期の精神

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紙の本復興期の精神

2012/02/27 20:22

茹でた隠元豆のある"強靭"な構造(内乱の予感)

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:りゅーみん - この投稿者のレビュー一覧を見る

2011年3月11日、日本は消し去ることのできない印を刻まれてしまった。その震災から早一年がたとうとしている。しかしながら、全くと言っていいほどこの国は変わらなかった。まるで震災が呪縛として働いているかのようだ。呪縛、それは確かに、存在しているかのように思える。その正体は、しかし、震災それ自体ではないだろう。

花田清輝の『復興期の精神は』まさに戦後の「転形期」に差し迫って書かれた書物である。まるで時代に産み落とされたかのように、深く暗杳とした世界を、洞察している。戦後というこの国の一つの「転形期」を視るに花田は、西欧においてのルネッサンスへ移入する。

ルネッサンスにおける数々の「普遍人」の持つ論理を分析していくとそこには当然だが、「普遍」が待ち受けている。そして転形期にいおいてこそ普遍人が要求されることを示している。
コペルニクスについてかれが論じた「天体図」には、コペルニクスが「正しくかれは調和や均衡を求め、闘争をさし控えているようにみえる」とし、だが寧ろそれこそ「ルネッサンス期の『普遍人』の大部分」について言えることだったのだ。
ハイネも然りである。「かれは、詩人として、乃至は革命家として、かれ自身を割りきられ、限定されることが嫌いだった。それはかれがあくまで自由をもとめてやまない、不羈奔放な一個の人間――詩人でもなく、革命家でもない素朴な一個の人間であろうとしたからだ。」

これがこの書において最も高名な「楕円幻想」に結びつく。楕円は二つの焦点を持つが、中心を一つ持つ縁の一つ――否、円こそ楕円の一つともいえるとし、それこそ安易な弁証法に依らず、矛盾したまま調和するこの楕円をこそ普遍の一つの在りかたとして提示した。
それは岡本太郎の「対極主義」において藝術的に実践されたことを彷彿とさせられる。

現在政治なるものについての捉え直しなどもされているが、花田からしてみればそれはマキャヴェリやカルヴァン、ガロアがとうに述べていただろうし、機械文明とは何かもレオナルドが示していたのだ。

かれが述べるようにこの書が示すのは「転形期」における生き方である。そして震災以前からも既にあちこちで言われていたが、今改めて転形期であることを自覚せねばならない。文明(=社会)と自然という対立構造を設けたのならば、かれが言うようにその均衡調和を楕円を描くことで保ちながら成長していかねばならなかった。だから震災や原発という問題もまた、人間との間に中心を据えて如何なる楕円を引くのかが問われているだろう。否、それは違う。やはり人間は自然との間に楕円を引き直すべきだ。文明が人間の敵になる以前に文明は人間の分身であろうし、それは円しか描けぬし、それはドッペルゲンガーであったことを思い知ったのだ。

かれは自分の思ったような戦後を迎えられなかったことに臍を噛んだだろう。今、生きるこの国の人々もまた、思ったような震災後を迎えられていないに違いない。何もかも変ったのに、何も変わっていないのは何か、変わっていないものはあるのか。それこそが、呪縛の正体である。それはおそらく、まさに「マキャヴェリ」や「カルヴァン」なのだろう。
本書の提起する事柄は、全く今日でも未解決のまま山積している。それだけに、あらためて読まれるべきである。

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