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ほんとうの親鸞(講談社現代新書)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3 1件

電子書籍

ほんとうの親鸞

著者 島田裕巳

京都の貴族日野家に生まれた親鸞は、生涯の師法然に出会い、他力の信仰へと導かれる。妻帯者としての苦悩、息子との義絶などを通して、ただ法然の教えと生きる姿勢に忠実に信仰の道を貫いた宗教家親鸞。生涯弟子をとらないと言っていた親鸞だが、東国では信徒集団ができる。信徒集団が「人間としての親鸞」に強く惹かれ、救いを求め宗祖として厚く帰依していく。浄土真宗はそうして生まれ、親鸞は日本人の精神の救いとなった。

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紙の本ほんとうの親鸞

2012/03/17 23:49

何もかも取っ払うと。

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本のように「御伝抄」はおろか、「歎異抄」や恵信尼消息まで史料性を限定すると確実な親鸞聖人像はおぼろげなものになってしまう。「教行信証」の後序に書かれた言葉も事実ではなく、親鸞聖人の願望だと捉えるのは斬新で、反体制の闘士のような「宗祖無謬論」の変種みたいな偶像化からでは見えにくいものがある。「宗祖親鸞」ではなく法然門下の一僧侶として論じられている。
 「親鸞は弟子を一人ももたず」というが、現実には関東に弟子の集団が生まれたので善鸞を東向させたのだ。「歎異抄」にしても一説には覚信尼の夫の子供説もあるが、唯円という弟子の聞き書きである。
 もし親鸞聖人直筆の「選択本願念仏集」が発見されたら、どうなるだろうか。法然門下の源智の残した阿弥陀仏の胎内文書のように歴史の中に埋もれた文書が発見された例もある。
 親鸞という人物の宗門外の同時代の確実な史料は七箇条制戒の書名以外は皆無で、浄土宗関係の史料も「四十八巻伝」に七箇条制戒の署名者の一人として登場する他は存在しないので、かつては親鸞架空説が言われたほどだ。当時の法然門下では一念仏者でしかなかったのだろうが、聖覚法印の「唯信鈔」を直接知る立場であったである。「唯信鈔」は「四十八巻伝」では引用されているが、親鸞門下で重宝されたせいか、真宗系の写本しか残っていない聖典である。
 親鸞聖人の出自とされる日野氏は鎌倉末期から貴族としての家格は低いものの、南朝に使えた者もいるが、北朝や室町幕府で重要な役割を果たした家柄である。本当に親鸞を立派な貴族の出自としたいのならば、もっと家格の高い貴族に結びつけたくなりそうなところだ。
 この本で覚如上人の「御伝抄」や「口伝鈔」をはじめとする著作の下敷きには流罪目録のついた「歎異抄」の存在がないと分からない点は見落とされているが。お東騒動は後継者争いではなく、保守派と革新的な宗務院との対立である。
 この本には日蓮聖人と親鸞聖人を比べて描いた箇所が結構目につくし、著者は創価学会についての本を何冊か出版されている。日蓮聖人は自著の中で自分の事を何回となく描いているので、自分の事を殆ど記さない親鸞聖人に比べて、経歴について分かりやすい点はある。日蓮聖人という人は内省的な性格だったのだろう。次は「ほんとうの日蓮」といった本を出されたらいいのでは、と思う。
 日蓮聖人は法然門下を「念仏無間」と批判したが、「選択集」をよく読み込み、法然門下についても相当の知識があった事は遺文を読めば分かる。唯円と同世代になるが親鸞という名前は出てこない。おそらく知らなかったのだろう。平左衛門尉頼綱が「教行信証」の刊行に関わったと言うから、分からないところである。

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