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音のない理髪店
著者 一色 さゆり
音のない世界でも、きっとメッセージは届くから──ろう理容師を祖父に持つ若手作家。その半生を描こうとする姿が胸に迫る傑作小説!
日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した第一号であり、自分の店を持った最初の人。そんな祖父を持つ五森つばめは、3年前に恋愛小説系の文学賞を受賞してデビューした。だが、その後自分の目標を見失い、2作目が書けないでいた。そんな折、デビューしたところとは違う出版社の編集者から声を掛けられ、祖父の話を書くことを強く勧められる……。ろうの祖父母と、コーダの父と伯母、そしてコーダの娘の自分、さらには聾学校の先生まで。三代にわたる希望をつなぐ取材が始まった。
音のない理髪店
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2024/10/23 06:33
言葉だけではない世界
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー後から燻っていた若手作家が、日本初のろう理容師である亡き祖父の半生を描こうと取材を重ねる。その中で、多くの理不尽とそれを超える確かな絆を知っていく、実話に基づく希望に満ちた物語。
聾者やコーダの視点でなく、コーダの子供の聴者を主人公にする事で、より気付きにくい“溝”が見えてくる設定が新しくて好い。聴こえない事への不自由さ、届かない事への憤り、伝える事への諦め、三世代にわたりコミュニケーションに影響を与えたのは、果たして「聴覚」の問題だけだったのか?聴こえない事がプラスになる事はないのかもしれないが、聴こえる事だけではプラスになるとも限らない、と感じさせられたうどん屋のシーンがとても印象的。生活の貧しさはすぐには解決されないが、心くらいはいつも豊かにいよう、という直向きな姿勢に心動かされた。
聴覚に関係なく、人の考えなんてものはそう簡単には伝わらない。相手を知り、自分を知ってもらう、途方もない道のりに時代のうねりまで伸し掛かる。読んでいるだけで心が折れる、恐ろしい差別の歴史ともしっかり向き合った、ありのままの世界を知る事が出来た。
「個人の尊重」について深く考えさせられる作品。
2025/01/14 18:39
胸にグッとくる作品
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆめこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
聞こえる側と聞こえない側の溝が想像以上に深かったです。
また、理不尽な差別や偏見の中で強く生きた主人公の祖父の強さは、どのようにして作られたのか。
ひとりの人間の強さに引き込まれます。