電子書籍
神州日月変
著者 栗本薫 (著)
江戸で評判の美女が次々神隠しにあった。娘達はすべて十八歳で人気絵師清春の姿絵になったという共通点があった。事件を追う同心古河雷四郎を取巻く妖気の正体は。(講談社文庫)
神州日月変(上)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本神州日月変 下
2010/05/16 14:04
栗本の語る平野を想像しながら
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えるのに少々時間をかけ過ぎたかも知れないが、なんだか読み終えるのがもったいないような気がしたのも事実だ。そのあたりの理由は上巻で書いたとおりだが、凛々しさというか清々しさというか、読んでいてわくわくしてくる文章が懐かしさも伴って読み応えがあるので、いつまでも読み続けていたい気持ちになってしまう。
というわけで下巻だ。
前半より魔道じみてきて話に幅を利かせるようになった分、時代物からは少しはずれていく感じもしたし、徐々にわかってはくるのだが時代物には意外とも思えるネタで結末がつくのだけれど、それも栗本らしいと言うか、当時の栗本が自分の好きなジャンルをわざわざ結び付けようとしたのかもしれない。それでも十分楽しめたのだから、それはそれで良かったのだろう。
上巻では栗本版八犬伝かとも思っただが、いわくのある8人が活躍するのは最後の最後なので、やはり山田風太郎風とでも言えばいいか。
細かいところを突いていけばいろいろと無理も見えなくもないけれど、全体としては面白く読めた話だ。もうこんな話が読めないのが残念でならない。
ちなみに、この話でも後半の舞台となっているのが平野と呼ばれる土地だ。
栗本のいくつかの話にこの平野が出てくる。例えば『双頭の蛇』であり、伊集院大介シリーズの『早春の少年』だ。もちろん架空の土地なのだが、ここにも栗本が語り続けようとしたサーガの1つがあったような気がしてならない。
紙の本神州日月変 上
2010/04/29 23:16
上巻だけでは評価がしにくいけれど
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2009年にまさか栗本薫がいなくなるなどということを考えもしなかったのだけれど、なぜかこの数年彼女の作品を読み返したり、読まずにおいてあったものを取りだしたりしていたのは、今から思えば虫の知らせというやつだったのかもしれない。
それで沢山読んでみたのだけれど、そしてどれも面白く読んだのだけれど、実は初期の作品がある種の凛々しさというか緊張感を持った文章で綴られていたことを再認識している。この『神州日月変』もその一つだと思う。
上巻だけでは評価しにくいとは思うが、時代物の雰囲気を漂わせながら、荒唐無稽さも忘れず、文章は清々しい。特に「其之壱 雷公同心登場のこと」「其之弐 美女神隠し横行のこと」のあたりは、往年の時代小説の雰囲気を残しながら、栗本らしい話の運びで一気に読ませてしまう。同心が主人公で、美女が神隠しにあってなんていうくだりは、捕物帳そのものと言ってもいい。そこに魔道のような話も加わって、虚実相見えた話になっていくと、山田風太郎も顔負けといった雰囲気だ。
栗本薫は徐々に(?)饒舌になっていき、それが時にうっとうしく思える(それもまた魅力なのだけれど)こともあるけれど、初期にはその饒舌さが理性で抑えられながら語られているという絶妙なバランスをとった文章として読める。そこがいいのだと思う。