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服部卓四郎と昭和陸軍
著者 岩井秀一郎(著)
ノモンハン事件、大東亜戦争開戦、ガダルカナル戦・・・・・・。国家の命運を左右する参謀本部の中枢に居続けた作戦参謀「服部卓四郎」。戦時下では、参謀本部の田中新一や辻政信、そして東條英機や石原莞爾らとどのように関わっていたのか。帝国日本が敗戦への道を突き進んでいく過程で何が服部らエリートを突き動かしたのか。戦後はGHQに庇護される立場となり、『大東亜戦争全史』をまとめ上げたが、その胸中に去来した思いとは。そして、この男の生涯と折々の言動を丹念に追うことで見えてくる日本軍の失敗の根因とは――。デビュー作『多田駿伝』(小学館)で第26回山本七平賞奨励賞を受賞した気鋭の著者による渾身の書き下ろし。 【目次】●序章 戦後史に消えた作戦参謀 ●第一章 エリートコース ●第二章 ノモンハンの蹉跌 ●第三章 大東亜戦争はじまる ●第四章 参謀本部作戦課長の「敗戦」 ●第五章 生き残った参謀――「服部卓四郎」の正体 ●終章 昭和陸軍の象徴として
服部卓四郎と昭和陸軍
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服部卓四郎と昭和陸軍 大東亜戦争を敗北に至らしめたものは何か
2022/12/28 16:42
昭和陸軍の病巣
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
服部卓四郎について書かれる場合は、必ずと言って良いほど辻政信とセットになることが多いが、戦後議員にまでなった辻に比べて服部の知名度は高くは無い。ただ、太平洋戦争開始時の参謀本部作戦課長であり、一旦東條首相の秘書官となった後、再び作戦課長に返り咲いたという点で、太平洋戦争における陸軍の作戦について服部抜きには語れない面がある。
ただし、彼が優れた作戦家であったかと言えば、あの戦争の結果から違うという結論になる。太平洋戦争以前のノモンハン事件に始まり、ガダルカナル島への固執、沖縄からの第9師団転出等、疑問の残ることばかりである。
結局彼は作戦立案能力に長けた軍事官僚に過ぎず、戦略等も持ち合わせずその場で威勢のいい方についていただけという印象を受ける。
本間雅晴、辰巳栄一、山内正文、八原博通等の英米通の陸軍軍人は軟弱として前線に回され、戦う相手をろくに研究せずに自分に都合の良い判断ばかりする服部・辻ような輩が参謀本部に跋扈した結果の敗戦である。
そして戦後の身の処し方がまた醜悪極まりない、かつての敵であり支配者となった米軍にすり寄り(他の元軍人が困窮する中)恵まれた生活を確保し、再軍備により創設される新軍の幕僚長候補となるも吉田茂達の反対により実現しなかったのは当然の結果と言える。
作戦課長時代の部下である晴気少佐はサイパン島玉砕の責任を感じて敗戦時に自決するも、そんな気はさらさら無く戦争責任論には反論する。
或る意味昭和陸軍の病巣を知らしめてくれる存在と言えるこの人物については余り一般向けに書かれた書籍は少ない印象なので、読んでみる価値はあると思います。
服部卓四郎と昭和陸軍 大東亜戦争を敗北に至らしめたものは何か
2022/07/15 02:15
企業社会にもこういう「頭のいいだけの便利屋」は多々いるわいな。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
永田鉄山や辻政信の評伝はこれまでに何冊か読んだのだが、服部卓四郎のそれは目にしたことがなく、今回本書を書店で見つけて購入・読了。コンパクトながら分かりやすい記述で、参考になりました。筆者の評価について直ちに知りたければ、182頁以降を参着。「遊泳術」(199頁)という一語が、言い得て妙でした。
結局、服部卓四郎のような存在(ポジション取りに長けた魂のない便利屋にして能吏)は、上の人間が自らの考えを軍官僚制の中で「形」にして伝達し、タテヨコとの「調整」をも図るには必要だったということでは。しかも、辻が雄叫びを上げて、服部がまあまあととりなして諸事無難にまとめるかの如き「役割分担」が、日本の悲劇を生んだのであろう。悲惨なシナジー効果というべきか・・・