宇宙のランドスケープ
著者 レオナルド・サスキンド (著) , 林田陽子 (訳)
「宇宙はなぜこのようになっているのか」「宇宙に生命が存在できるのはなぜか」という誰の心の中にもある根本的な疑問を追求したポピュラー・サイエンス。サスキンドはひも理論、インフレーション宇宙論、最新の宇宙観測結果に基づいて、この大いなる謎を探究する。本書で中心的な役割を果たすのは、ランドスケープと呼ぶ概念である。これはひも理論の研究から生まれたもので、可能な物理法則の全体を指す。この宇宙の物理法則だけでなく、いっさいの可能な物理法則からなる巨大な空間である。サスキンドは物理法則の可能性全体の空間を「風景」に見立てることで、そこに山や、谷や、平原などを見出す。その「風景」の中で、宇宙はボール玉のように転がってゆく。この宇宙の歴史とは、サスキンドによれば、「インフレーションの棚」を転がってゆき、きわめて小さな宇宙定数を持つ谷で静止することだったという。しかし、この宇宙は、もっとはるかに広大な、いわゆる「メガバース」の中のほんのちっぽけな片隅を占めるにすぎない。メガバースの中で、無数の種類の小宇宙が無限回出現するという新しい宇宙像にたどり着く。世界天文年2009日本委員会の公認書籍。
宇宙のランドスケープ
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宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す
2007/03/03 11:16
最先端の物理理論の素人向けの解説書の集大成
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
微視的世界を解明する量子論と、巨視的世界を解明する相対性理論やインフレーション宇宙論との関連・関係、素粒子の標準模型と超ひも理論とM理論、11次元やブレーンとの相互関係・関連性・同一性が説明されている。これまで読んできた理論物理学の一般向け解説書ではいまいち曖昧模糊としていた内容が、かなり理解できたように感じられる。ひも理論を作り上げてきた物理学者自身が、理論が着想され吟味されてきた過程について、問題点や行き詰まりの失敗の歴史をひもといているからであろうか。
何事も、成功の過程よりも失敗の過程の記録の方が、参考になるものである。もちろん、門外漢にとって専門家の失敗の記録が直接役に立つものではないが。出来上がった形を説明されるだけでは理解できない部分も、作り上げられてきたその途中の過程・歴史をも説明されると、理解し易くなる。
この本は、最先端の物理理論の素人向けの解説書の集大成と思う。物理学は、我々が存在するこの宇宙だけではなく、ありうる全宇宙(の場、著者が提唱するランドスケープという概念)をも記述できるだけの段階まで、到達してきているらしい。そのありうる膨大な数の宇宙の中で、何故この宇宙に我々が存在するのかは、説明できないらしいが。多くの行き詰まりや失敗を乗り越えて、多くの物理学者たちの論争を経て、驚くべき段階まで研究は進んでいる。