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活字狂想曲
著者 倉阪鬼一郎 (著)
人気作家の著者にも食えない時代はあった。十六年前、年収(月収ではない)十四万円の限りなく無職に近い現実不適応者・暗坂が就職雑誌を見て選んだ仕事、それは印刷会社での「文字校正」だった。チラシ、社内報、カレンダー……押し寄せる印刷物と耐え難いカイシャ生活でついに鬱憤は爆発。読み始めたら止まらない、思わず噴き出す現代の奇書。
活字狂想曲
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紙の本活字狂想曲
2002/11/28 22:35
文化系肉体労働、それが校正?
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゃりン子@チエ - この投稿者のレビュー一覧を見る
校正という仕事。文化の裏方という聞こえはいいが、その実体は厳しいものらしい。なんせ「正す」なんて厄介なことがお仕事なんだから、その厳しさは推して知るべし。
奇妙な文章にいらだちを覚える著者の様子がおかしい。が、読んでいるこっちが思わず笑ってしまうのは印刷会社の間違いで何百という印刷物が紙屑になる瞬間である。著者は車のカタログの「なんとかかんとかZ」という車を「なんとかかんとか2」としてしまい、カタログを刷り直すことになったそうだ。一瞬で膨大な量の資源がゴミに! ああ痛々しい。でも、笑える。
他に印象的だったのは「ら抜き」言葉を腹立たしく思い、チェックを入れていた著者がある日「ら、を取って」という支持に直面する瞬間だ。言葉の移り変わりに直に接し、呆然としながら、それを歴史的瞬間と評しているのがなにやら感慨深い。
幾度も登場するこの手のエピソードの他に、会社社会の様子も読みどころだ。自ら奇人と称する著者は、社員旅行もQCも大嫌い。ずばずばその矛盾と内実を言い当てる。いや、矛盾と内実の中身そのものは、どこかで聞いたようなモノばかりだが、それを語る為の筆力が段違い。佐高信を軽妙にしたような語り口がいい。私は自宅で読み切った学生だが、通勤電車の中で読んだらどんな気持ちがするのだろう。