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電子書籍の衝撃(ディスカヴァー携書)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3.9 4件

電子書籍

電子書籍の衝撃

著者 佐々木俊尚 (著)

電子書籍は、本の世界の何を変えるのか?
電子書籍先進国アメリカの現況から、日本の現在の出版流通の課題まで、気鋭のジャーナリストが今を斬り、未来を描く。
本が電子化される世界。
それは、私たちの「本を読む」「本を買う」「本を書く」という行為に、どのような影響をもたらし、どのような新しい世界を作り出すのか?
<著者あとがきより>
私は年に数百冊も本を購入し、たぶん百冊以上はちゃんと読んでいる活字中毒者です。
そして同時に、年に四、五冊も本を出している書き手のひとりでもあります。
その意味で、キンドルやiPadのような電子ブックリーダーが出てくることによって、
本の世界がどう変わっていくのかは自分にとっても切実な問題としてとらえています。
本文中で何度も書いていますが、間違えてはならないのは、
「電子ブックの出現は、出版文化の破壊ではない」ということです。
何千年も同じような活字形式で人々に愛されてきた本は、そう簡単には崩壊はしません。
そこがたかだか数百年の歴史しかない新聞や、
あるいは登場してから数十年しか経っていないテレビとは違うところです。
でも活版印刷が十五世紀に発明されて本の流通と読まれ方が劇的に変わったように、
電子ブックも本の流通と読まれ方を大きく変えるでしょう。

電子書籍の衝撃

税込 1,089 9pt

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みんなのレビュー4件

みんなの評価3.9

評価内訳

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「本の未来」について考える人にとっては、いますぐにでも読むべき必読書

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いますぐそこにまで迫ってきている「電子書籍」時代を先取りし、本のもつコンテンツと本を取り巻くコンテクストという観点から、「本の未来」について読み解いた思索の書である。

 日本でも、米国のように本格的な「電子書籍」時代が到来するのを目前にして、印刷媒体の「本というメディア」がいったい今後どうなっていくのか、本書は非常によく練られた構成のもとに、ロジカルでムリのない展開で読者を最後まで著者の思索に導いてくれる。
 「本の未来」というテーマの本は、私は昔から何冊も読んできたが、ここにきてようやく本質的なホンモノの議論に出会うことができたという思いがして、たいへん満足している。本というモノに対する過剰な思い入れを排して冷静に議論をすすめているから説得力があるのだ。 

 私自身、著者の佐々木俊尚氏と同様、年間300冊以上は購入して少なくとも100冊は最初から最後まで目を通す人間である。佐々木氏とは違って、まだ自らの本は出版していないが、ブログやツイッターなどのソーシャル・メディアで自分自身が書き、そして読むという日常生活を送っている。つまり、印刷媒体の本も読むが、インターネット上の膨大な活字も読んでいる。ふたつの世界にどっぷりとつかっている人間だ。こういう人間はけっして例外的な存在ではないだろう。
 本書に紹介された統計調査によれば、インターネット上の活字も含めて米国人が読む活字の量はこの28年間で3倍、日本人についても同様だという。活字離れどころか、むしろ活字漬けになっているのが現代人の状況だ。ではなぜ読書離れ、本離れとさかんにいわれるのか。この理由は、日本特有の書籍流通システムにあることが著者によって詳しく説明される。「電子書籍」そのものが問題ではないのだ。

 アマゾンのキンドル(Kindle)やアップルのiPadといった電子書籍を読むためのタブレットの実際の使い勝手を、著者自ら購入して試してみることで、いまだこういう形での読書体験をもっていない読者にレポートしてくれている。
 また、アマゾンDTPによるセルフパブリッシングの実体験レポートもあり、一般読者に「自分で出版する時代」という近未来図を想像させてくれる。自分で情報発信できる範囲が大幅に拡大することになることで、プロとアマの垣根が限りなく低くなっていく時代、出版をめぐる業界構造も、当然のことながら大きく変わっていくことだろう。

 著者の議論に説得力があるのは、かつては本と同様にパッケージ商品であった音楽という先行事例をとりあげて徹底的に比較を行っていることだ。マイクロコンテンツとしての音楽は、いまやパッケージ商品としてのCDで買う時代ではなくなりつつある。
 もちろん、本は音楽とは違って、「統合されたひとつの世界観を示すコンテンツ」だから、印刷媒体の本がタブレットで読める電子ブックにとってかわられたとしても、本そのものはけっしてなくなることはないだろう。むしろ、日本のいびつな書籍流通制度にメスが入り、消耗し疲弊する出版が再生するキッカケになるのではないか、という著者の予測には賛成だ。
 日頃からブログやツイッターなどのソーシャル・メディアに接している人なら、佐々木氏のいっていることは十分に理解し、納得できるものと思う。

 ただし、多くの読者にとって不満が残るのは、「電子ブック」がプラットフォームとなったとき、「印刷媒体の本」は消えてなくなってしまうのか、という疑問だろう。
 この問いに対しては、佐々木氏は明確には述べていないが、私見では、電子ブックが普及したとしても、印刷媒体の本がすぐになくなるわけではないし、新しい形での共存が可能なのではないだろうかと考えている。そのヒントはケイタイ小説という新しい書籍ジャンルにあるというのが、著者のインプリケーションである。

 いずれにせよ、本というメディアが、新聞や雑誌などのマス志向でマイクロコンテンツ的性格の強い情報メディアとは異なる本来の性格を取り戻し、本をとりまくコンテクストのなかで、コンテンツとしてのチカラを再生させていくだろうという明るい見通しには、多くの読者が納得するのではないだろうか。本書には、コンテクストつくりの事例として、bk1の取り組みも具体的に紹介されている。
 ぜひ、著者の議論を最初のページから最後のページまでフォローしながら、読者自ら考えていただきたいものと思う。

 「本の未来」を考える人にとっては、いますぐに読むべき必読書である。

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たいして衝撃はないけれど、手際のよいまとめ方

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いよいよ日本でも iPad が販売されるそうだ。ということで、書店では雨後のタケノコのように関連書籍が出されるようになった。本書も店頭にだいぶ積まれている。「電子書籍が出るというのに、電子書籍についての紙の本を読む」というのもなんだか変な感じがするのだけれど、 iPad もキンドルも買う予定はないので、とりあえず読んでみた。
  「iPad vs キンドル」のガチンコの対決紹介からはじまり、電子書籍の社会的な位置づけが手際よく整理されている。ありがちな感情論や、技術革新が夢の未来を約束するという技術論に偏することなく、無難にまとめている(ただし、感情論一本やりの力技で1冊の本をまとめた佐野真一はそれはそれで偉いと思う)。「はじめに」で記されているように、電子書籍をとりまく「生態系」を描く、という発想が著者にはあるからだろう。ボイジャーをはじめ、日本でも電子書籍の先行事例はあったわけだが、いつしか立ち消えになっている。こうした場合、発表時にはそれなりに華やかに取り上げられるものの、立ち消えに至った過程は一般読者まではなかなか報道されない。この点、本書は目配りの怠りなく、「電子書籍コンソーシアム」やソニーのリブリエといった「失敗事例」も紹介されている。技術の問題以外の、様々なプレーヤーの「思惑違い」が影響していたことがよくわかった。ただし、出版流通の仕組みなど、個々の記述についてはやや雑駁であり、詳細を知りたい人は他書にあたられたほうがよいだろう。
 電子書籍などというと、なんだか新しい魔法の箱か、出版文化を崩壊させる黒船か、みたいな論調になりがちだけれども、その正体はプレーヤー間の冷徹な駆け引きの場にすぎない。すなわち資本主義の問題なのである。プレーヤーの栄枯盛衰やカネの流れの変化は資本主義の常である。電子書籍は「夢の未来」を約束しないし、「守るべき出版文化」も幻想にすぎない。実は、日本の出版界も騒がした「グーグル和解」も、同じような駆け引きの場であったわけである。
 本書では最後に、電子書籍の可能性を探る試みとして、「セルフパブリッシング」の話題などを、かなりの紙幅を割いて前向きに取り上げている。本の「結び」として、こうした「明るい」話題は欠かせなかったのだろうが、前半部に比して不徹底さを感じざるをえない。実は、新しいメディアが生まれるたびに、こうした「個人の役割や能力が十全に活かされる」という論調がくり返されてきたのではなかったか。本来であればこうした論調そのものを、プレーヤー同士の駆け引きや交代とからめて冷徹に検証すべきなのに、ここでは一転して楽観的な記述に堕しているように感じられた。著者がこうした幻想をふりまくのだとしたら、「出版文化論者」と大した変わりはない、ということになる。もしかしたら、著者自身もまだ、出版文化の放ってきた幻想にとらわれているのではないだろうか。
 ちなみに、本書ではここのBK1の話題も取り上げられているので、ぜひ探されたい。

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ここのところの電子書籍の基本的事実は分かったが、今後の読書文化をどう豊かにするかは見極める必要があると思った

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 著者はここ数年、ネットの世界で進む事象について取材した書を物してきた人物。私のように人生の大半をネット外の世界だけで過ごしてしまう人間にとって、著者の描くもう一つの世界の躍動する姿は大変興味深いものです。

 KindleもiPadも手にした経験のない私にはその違いについて述べた箇所は大変勉強になりましたし、米国アマゾンがDTP(デジタル・テキスト・プラットフォーム)というサービスを提供していて、読者が誰でもISBNコードつきの書籍を作ることが出来るという事実は驚きをもって読みました。

 ただし必ずしも納得できるわけではない記述もありました。
 若者の活字離れは事実ではないとして、図書館に通う小学生の年間平均借り出し冊数が近年増えてきているデータを提示しています。しかしこれはあくまで量を示すだけです。いみじくも著者自身が言うように「くだらない本の量産」時代にあって、図書館から借りる冊数が増えているのは小学生の活字文化が豊かになっている証拠とは言い切れないと思います。
 未曾有の不景気で親は本を買い与えるのではなく、図書館の利用を薦めているという事実もあるでしょう。

 こうした「くだらない本の量産」が止まらない限り、電子書籍社会に期待できる「豊かさ」にも自ずと限界があると思います。

 著者の本にはいつも多くを教えられるのですが、今後著者に期待したい点が2つあります。
 電子書籍用プラットフォームへのアクセス度や操作リテラシーは読者ごとに差が出来ていくように思います。紙の書籍以上に読書格差が広がるのではないかという懸念を私は持っているのですが、これは杞憂でしょうか。

 さらにいえば、豊かな読書文化を支えるのは充実した図書館の存在だと考える私には、電子書籍と公共図書館とが今後どう関係を結んでいくのかが大いに気になるところです。

 著者には今後そうした点について分かりやすく解析する書を期待します。

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日本の本の流通から電子書籍までひとっとびの議論

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る

すっかりおかしくなってしまった日本の紙の本の流通. その救世主となるべきなのが電子書籍だという. その論旨をうらづけるためにアマゾンやアップルの電子書籍に関するたたかいぶりをくわしく書いている.

しかし,日本の本の流通の問題点からいきなり電子書籍に話がいくのには疑問がある. そもそもアマゾンは紙の書籍の流通を変革しようとしたはずだ. それがどこまでうまくいき,電子書籍はそれをさらにどう変えようとしているのか? そこまでみていかないと説得力のある議論にはならないのではないだろうか. そうかんがえると,すでに新書としてはかなりあついこの本. 新書として出版することがそもそも無理だったのではないだろうか? 電子書籍として出版すれば,あつさを気にしなくてもよかったかも…

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