もう二度と見ることができない幻の名作レトロ建築
大丸心斎橋店をはじめとするかつて存在した懐かしき異空間を巡る旅
日本・満州・朝鮮に建設された43の傑作近代建築がいま甦る
かつて日本には、異国情緒あふれるたくさんのレトロ建築が存在しました。それは、海外の真似から始まり、やがて日本独自の伝統とも融合していく、日本近代化の足跡でもあります。その独自の世界観は、訪れる者をファンタジックな異世界へいざなってくれたものです。しかし、そんな建物も年を追うごとに失われ、1933年に完成した名建築「大丸心斎橋店」も、2015年を最後に建て替えとなります。本書は、そんなレトロ建築を20余年に渡り撮り続けた写真家・伊藤隆之氏のコレクションから、大丸心斎橋店の最後の姿をはじめとする貴重な写真を厳選し、40あまりの失われたレトロ建築を追体験できる一冊になっています。
── 私はおよそ2,500もの近代建築を撮影してきたが、そのなかにはすでに消え去ってしまったものも少なくない。再開発や天災、政治的判断など理由はさまざまだが、その建築的、歴史的、芸術的な価値を考えると、失われてしまったことが残念でならない建物も数多い。
取り壊されてしまったという事実は変えようがない。しかし、私が撮影した写真のなかには、素晴らしい建物の在りし日の姿が色褪せることなく写し出されている。もはや実物を見ることが叶わないのであれば、せめて写真のなかで失われた名建築の素晴らしさを堪能していただきたい。そんな想いでさまざまなジャンルの名建築を43選び出し、一冊にまとめたのが本書である。 ──
── 往時に想いを馳せながら、しばし「名作レトロ建築トリップ」をお楽しみいただければ幸いである。
2016年2月末日 伊藤隆之
─ はじめにより
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2020/10/21 21:23
傑作近代建築
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代建築の名作が迫力ある写真で紹介されてる。
「大丸心斎橋店」大好きだだったのになぁ。あの特別感、もう経験できないのか・・・残念。
2017/11/30 21:16
もう見ることができないなんて!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国宝や重要文化財建造物は、厳格な保護措置がとられ、災害などで壊れてしまっても、なんとか修理しようとするが、指定されていない建造物は、所有者の意思で取り壊されることが決まっても、それを覆すことは難しい。
結果、明らかな傑作と評価されるような近代建造物の数々が、二度と見ることができなくなってしまった。
本書は、そんな再見不可能の傑作レトロ建造物の在りし日の姿を切り取った写真集だ。
本書は大きく5つのカテゴリーに分けて建物を紹介する。オフィスビル、邸宅・集合住宅・商店、学校・病院・宗教施設、劇場・ホテル・デパート、公共施設・官公庁舎である。これらは、大きく一般人を受け入れてくれていた物件と資格がないと入れない物件に分けられる。そして、前者により喪失の哀しさが付きまとう。なぜなら、その建物が建っているうちなら、内部を比較的自由に散策することができたわけだから。
建造物が喪失したきっかけは様々。
大規模災害による損傷からの復旧が困難という判断が下されることもあるが、これはやむを得ないこと。残念なのは、企業の論理で解体の反対運動の甲斐なく壊されてしまった事例だ。もちろん、維持管理費の負担は所有者にあり、長年の痛みが万が一の事故を起こしてしまった場合の責任も、所有者は負わされる。それを思うと、第三者が残してくれと運動を起こすこと自体が出過ぎたことなのかもしれない。
そうであっても、石川県金沢市の白雲閣ホテルについては、少し考えさせられた。
昭和12年建築のこの白雲閣ホテルは、国の登録有形文化財に登録されていたという。しかしながら、ホテル経営の悪化により平成11年に倒産。その後、再建のために競売にかけられるも、残念ながら買い手がつかず、平成18年には復旧不可能とされ、文化財登録を抹消、金沢市により解体された。
市民が収めた大切な税金が資金源となるため、じゃあ自治体が運営しますと軽々には言えないのだろう。無論、交付金もそれに足されるが、何でもできるほど潤沢なわけではない。しかし、本件について、解体の他に打つ手はなかったのか。小さな山村なら仕方ない気もするが、あの金沢市だ。
まあ、これも所有者の気持ちや自治体にも事情があるわけだから、やはり第三者がどうのこうの言える話ではない。
ただ残念なだけだ。
都心は見せる顔が様々に変わる。日進月歩とでもいうのだろうか、いつもどこかで大規模工事が進められている。大規模工事の前には、そこに建造物が存在した過去があったかもしれない。東京駅のように過去に戻しましたというのならまだしも、完全に姿を変えてしまうと過去を思うことは難しくなる。表参道ヒルズをみて、同潤会アパートを思い浮かべることなぞ、すっかりなくなってしまったのではないか。
建物は維持管理が大変で、真新しいものを好む気持ちもわからなくはない。しかし、本書にあるかつての名作群を眺めると、喪失による損失の大きさを感じざるを得ない。もう二度と見ることは叶わないのだと、改めて哀しくなる1冊であり、その分、貴重な1冊でもある。
2017/08/12 23:19
懐かしい
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投稿者:ぴっきーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真に使われているところは昔行ったところも結構あり、取り壊されて悲しく思っていたので、こういった形ででも残っていてよかったと思いました。