電子書籍
横歩取り必勝ガイド
著者 稲葉陽
横歩取りは△8五飛型が新山崎流を相手に苦戦していた時期もありましたが、△5二玉型や△8四飛型などのバリエーションが増え、現在は後手も十分戦えるようになっています。対する先手も▲5八玉型で対抗したり、▲7七角の新手法を編み出したりして、定跡がどんどん進化しています。
本書はこの横歩取りについてその定跡の変遷もわかるように、詳しく解説した戦術書です。著者は新進気鋭の稲葉陽五段。プロの最新形とその狙いを覚えて、実戦で暴れ回ってほしいと思います。
横歩取り必勝ガイド
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紙の本横歩取り必勝ガイド
2012/07/07 14:52
まだまだ進化の横歩取り
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ココちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
関西四天王の一人、稲葉六段の初著作は横歩取りの定跡本です。
「横歩取り必勝ガイド」と銘打たれていますがどちらかに偏ることなく、
金井五段の「対急戦矢倉必勝ガイド」同様に先後とも公平な定跡書になっています。
本書は横歩取りの最新定跡を扱っており、第1~3章が△8五飛戦法、第4章のみ△8四飛型です。
第1章は「▲5八玉型の戦い」です。
この章は△8五飛戦法の一変化となるのですが、先手が△8五飛戦法に組ませない作戦となります。
△8五飛戦法は▲8七歩に対して△8五飛と引くのが大事で、
その交換を入れずに△8五飛と引くと角交換から▲7七桂が飛車に当たり、かつ8筋の歩の保留が大きくなってしまいます。
なので本章で先手の▲8七歩保留に対し後手は△8四飛と引き、それを見た先手が▲8七歩と収める展開になります。
先手後手とも飛車を横に大きく使う展開が見どころで、その感覚を身につけたいところです。
なお、この戦型は最新のもので名人戦でも登場した有力作戦です。
第2章は「△8五飛戦法対新山崎流」です。
一時期△8五飛戦法を土俵際まで追いつめた新山崎流ですが、現在は後手にも有力な手順が産まれています。
全部まとめると新山崎流だけで一冊の本になってしまうということで、最新対策に絞られています。
こちらも名人戦で指された手や渡辺竜王の新手を紹介し、
最終盤の詰む詰まないの変化まで進めた解説もあり、密度の濃い内容になっています。
第3章は「△5二玉型の戦い」です。
新山崎流に手を焼いた後手が、3筋攻めが厳しい△4一玉から逃げ△5二玉としたものです。
中住まいのように構えるわけではなく中原囲いのまま△5二玉とするのがポイントで、
堅さよりもバランス重視の構えだそうで、場合によっては手損してでも△4一玉とすることもあります。
5二玉型だと3二金が浮いているので端攻めから▲2一角が厄介だったのですが、
△2三銀というぱっと見はおかしな形が有力とわかってきて流行しています。
先手は急戦がそれほど上手くいかないのならばと堅く囲う選択も有力となっています。
第4章は「△8四飛型の戦い」です。
従来の横歩取り3三角戦法(8四飛戦法)とは違い、8四飛+5二玉+中原囲いという構えを採ります。
よって第3章と関連する内容もあり、端攻め対策の△2三銀なども再登場します。
8四飛型は▲7七桂が飛車に当たらないが△7四歩の瞬間飛車が横に利かない点から、
先手は第3章と違った作戦を採用することになります。
第5章は「横歩取りの実戦型詰将棋」です。
横歩取りの終盤戦で出てきそうな、中原囲いや中住まいが残った形を詰まします。
囲い特有の弱点を突く詰み筋が紹介されているので、非常に参考になります。
最新の横歩取りを指される方、プロ将棋の観戦が好きな方にはオススメの1冊になっています。
逆に1から8五飛戦法を学びたいという方は別の本を読まれた方がいいでしょう。
難易度はさすがに高めですが、手の狙いがきちんと書かれた親切なつくりなので理解や応用しやすいと思います。
稲葉六段の次回作にも期待大ですね。