電子書籍
遠山流中飛車急戦ガイド
著者 遠山雄亮
本書は中飛車戦法の、急戦調に進む変化を解説した戦術書です。前半は先手中飛車で、5筋の歩と角を交換した場合、角だけを交換した場合、そして乱戦になる変化を取り上げています。後半は後手ゴキゲン中飛車で、居飛車の▲4七銀型急戦、▲3七銀型急戦、そして▲5八金右超急戦について詳しく解説してあります。各講座の最後には参考になる実戦譜を載せました。前著「遠山流中飛車持久戦ガイド」と合わせて読んでいただければ万全です。中飛車戦法の楽しさを存分に味わってください。
遠山流中飛車急戦ガイド
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紙の本遠山流中飛車急戦ガイド
2010/09/11 20:37
2冊セットで
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ココちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
遠山四段による中飛車本がまたまた登場しました。
今度は持久戦で前著同様に、先手中飛車と(後手)ゴキゲン中飛車の最新定跡が解説されています。
第1~3章が先手中飛車で第4~6章がゴキゲン中飛車です。
章末ごとに遠山四段が実際にその章で扱われた戦型を指した将棋が載っているのですが、
定跡のポイントの解説に留めてあり、総譜は参考棋譜として一譜1ページで巻末に載っています。
定跡解説をメインとしたい場合は、この形式が合っていると思います。
第1章5筋&角交換編は、サブタイトルそのままに▲中飛車から角交換し5筋の歩を交換する作戦です。
△居飛車からの8筋攻めはなかなか難しく、
先手からの8筋反発や中央突破で負かされる事の多い形です。
それでいて5筋を謝ったりすると、そのまま作戦負けしやすい悩みもあります。
既存の定跡書ではガンガン攻めて▲中飛車良しとなっている戦形ですが、
本章ではプロレベルのギリギリまで作戦保留する指し方がメインとなります。
第2章角交換編は第1章と違い△居飛車から角交換し、
△6四銀と出て5筋の歩を交換させない作戦です。
これはプロ間でも流行していて、最新の指し方をたくさん紹介したとのことです。
さすがに難解ですが△居飛車側の指したい手ごとにメリット・デメリットを解説してあり、
どの手に注意して指せばよいのか、わかりやすくなっています。
例を挙げますと、△8六歩と突きたい→そのためには△7四歩が必要だ→すると隙が出来るのでまず囲おう、
という具合です。
中飛車党からすると、それぞれの手のとがめ方が学べます。
第3章は乱戦編、居飛車が序盤飛車先を保留したケースの定跡が解説されています。
8筋を突いてもすぐには交換や突破できないケースが多いので、当然ある作戦でしょう。
この章では中飛車は角道を止めるような作戦や、
居飛車は急戦から穴熊まで、様々な変化手順が紹介されています。
第4章▲4七銀型急戦、ここからは△ゴキゲン中飛車です。
いわゆる二枚銀急戦の解説で、木村八段が得意としている形です。
後手が歩損を避ける形と歩損を甘受する形の両方が解説されています。
歩損を避ける形は△3五歩と突き出して指しますが、手の遅れや▲3六歩の突き返しに対応が必要です。
この形の最新定跡紹介はあまり見た記憶がないので興味のある方必見でしょう。
甘受する形は、歩損の代わりに5筋交換や銀交換から捌いていきます。
こちらも居飛車最新の工夫がコンパクトにまとめられて載っており、やはり必見だと思います。
第5章は▲3七銀型急戦で、ある意味一番オーソドックスな戦型で郷田九段が得意としています。
現在プロ間では注目の戦型で、毎日のように定跡が進歩しています。
▲5八金右を省略した形で仕掛ける作戦や、加えて▲7八玉~▲6八銀をも省略した形で仕掛ける作戦は、
本書発売時(2010年7月後半)では定跡書で解説されるのは初めてとなります。
なので、この章を一番の楽しみにしている方が多いのではと思います。
ちょっと残念なのは、これらの新工夫手が「もっと早く動けないか」程度の解説で流されており、
どのような振り飛車の工夫にあって省略しない形が廃れてしまったのか、
これらの省略がどれだけ面白い手なのか等、本章だけ「定跡の進化」が説明されていません。
現在大流行の戦型のため手さぐりの状態で、まとめにくかったのでしょうか。
▲3七銀型急戦定跡の進化過程を知りたい方は、将棋世界連載の勝又教授の講座(2010年4~6月号)がオススメです。
第6章は▲5八金右超急戦です。
得意というか、よく指されているのは羽生名人でしょうか。
▲7五角型と佐藤新手△5四歩が消えることになった定跡の解説から始まります。
変化は多岐にわたるはずですが、本書ではキーとなった手のみ解説し上手くまとめてあります。
▲7五角型はプロ間でいつの間にか消えていましたが、公式戦で指されずに研究で潰されたようで、
その詳しい成果をアマチュアに伝えてくださったのは非常にありがたいです。
また最新の▲3三角~△4四銀型はプロ間でもころころと変わっている状況なので、
結論はお伝えできないと正直に書かれています。
本章も総じて上手くガイドされていると思います。
第5章▲3七銀型急戦のみ、ちょっとだけ不満な部分がありましたが、
全体を通して定跡進化の流れがよくわかる丁寧な仕上がりになっています。
「持久戦ガイド」よりも読みやすく感じられ、基本的に明快な手順・結論になっているのも良いです。
研究の土台や観戦の手引きとして素晴らしい出来の本に仕上がっていると思います。
ぜひ2冊セットで揃えて勉強しましょう!