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紙の本でかした、ジーヴス!
2007/04/29 23:46
ウッドハウスが現実だった
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある日テレビを見ていると、「カルチョ・ストーリコ・フィオレンティーノ」という祭りが紹介されていた。イタリアではサッカーの起源だと信じられているのだそうだ。ふうん、と思いながら見ていたのだが、次の瞬間に大笑いしてしまった。誰もがボールそっちのけで、いたるところで取っ組み合いやら殴り合いを始めたのだ。なんだこれは。「タッピーの試練」そのまんまじゃないか。イタリアと英国、サッカーとラグビーという違いはあれど、まさかウッドハウスの世界が実在するとは思わなかった。現実の世界もまだまだ捨てたもんじゃない?
現実といえば、ジーヴスのいわゆる「個々人の心理」のほとんどはけっこういい加減だったりする。お話のなかだからこそ上手くゆくけれど、現実ではそううまくはいかないだろう。とっぴで愉快でふざけてるのが売りの物語なのだから当然だ。ところが「ビンゴ夫人の学友」だけは、こういう人っているよなあ、と思わされた。たしかにこういう人っている。だからこの物語にかぎっては、ジーヴスの解決は現実世界でも有効なんじゃないかと思えてくる。ジーヴスみたいな人が実際に問題を解決しちゃうところを空想すると、やはり楽しい。
そんなふうに、難問を颯爽と解決するイメージのあるジーヴスだけど、けっこう強引なことをやるのもしばしば。“バーティーのため”に、しょっちゅうバーティーをひどい目に遭わせます。あるときは犯人扱い、あるときは狂人扱い、あるときは赤っ恥を掻かせ……。そんなジーヴスがあろうことか力わざに出たのが「シッピーの劣等コンプレックス」。まさかここまでやるとは。ドタバタはバーティーと愉快な仲間たちの担当だと思っていたのに、ジーヴスもやってくれるんですね。そういえば『ウースター家の掟』では戸棚の上に飛び乗ってましたっけ。
お間抜けなバーティーもかっこいいバーティーも、スマートなジーヴスもドタバタジーヴスもいぢわるジーヴスも読めて、やっぱりウッドハウスはいいなあ、としみじみ思うのでした。