電子書籍
単独行者
著者 谷 甲州
構想35年。ヒマラヤ登山の経験を持つ作家・谷甲州が、史実を基に伝説の登山家・加藤文太郎を描ききった長編山岳小説の上巻。
雪山登山がまだ一般的でなかった昭和初期の時代に、案内人も雇わず、ただ独り雪の北アルプスを駆け抜けて風雪の北鎌尾根に消えてしまった加藤文太郎の生涯がリアルに浮かび上がる。
加藤の遺稿集『単独行』を徹底的に分析し、独自の解釈によって生み出された文太郎像は、新田次郎の『孤高の人』とはちがったキャラクター設定となっていて興味深い。
ヤマケイ文庫 単独行者 新・加藤文太郎伝上
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2020/07/27 18:43
単独行の先駆者
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コンドル街道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ガイド抜きの冬山登山の先駆者として名声の高まり、そして遭難死までを描く下巻。
加藤が拘っていたのはあくまで、無案内、少数での冬山登山であり、単独行はあくまで結果だった。
案内人をつけずとも冬山登山は可能という認識が広まるが、それでもまだ主流にはなっていなかった。
地元の案内人と軋轢を起こすこともあったが、それでも加藤は己の信念を貫いていく。
ヒマラヤ山脈登頂構想も描かれる。夢枕獏は当初「神々の山嶺」の主人公のモデルに加藤文太郎を充てようとしたという。なるほどとは思うが、加藤が目指したのはあくまで7000m級であるらしい。少々物足りない。
山に憑かれた点は良いとは思うが。
2020/07/27 18:29
日本登山のパイオニア
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コンドル街道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和初期の日本で、案内人抜きでの冬山登山の方法を確立させた加藤文太郎の生涯を描いた小説。
長距離徒歩旅行を続けていた加藤文太郎はやがて登山に惹かれ、自然と冬山にも挑もうとする。
長距離徒歩旅行を続けていたおかげで過酷な登山にも耐えうる体力がついていたという。
先駆者ゆえの迷いや戸惑い、周囲の無理解なども描かれる。
2015/10/31 22:03
これを読まずに加藤文太郎は語れない
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:十楽水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「孤高の人」の宮村健のモデルとされる吉田登美久。新田次郎が故意におとしめたであろう吉田について、谷甲州はより史実に近い形で描いたと思われます。その結果ではないですが、より等身大に近い加藤の姿を読者は知ることができたのではないでしょうか。
過度な脚色などなくても、加藤文太郎は充分に魅力的な小説の題材です。谷甲州はそれを証明しました。登山を大切に思う気持ち、山の先人への尊敬の気持ちがあるからこそ、実在の人物達に公平に向き合うことができたのではないかと思います。
「孤高の人」しか知らないという人、ぜひ手に取ってください。
2015/10/18 17:42
より史実に忠実に書かれた加藤文太郎伝
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山男takaちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新田次郎による「孤高の人」を読んだのはいつだったのか、かなり昔のことであり定かではないが、その当時から同行者の吉田登美久が未熟な登山者としてそれが原因で文太郎を死に追いやったという点については批判があるということは承知していた。本著はより史実に忠実に書かれた文太郎伝であり、この点についての長年の疑問を解消してくれたように思う。特に下巻の文太郎たちが遭難する件では、自身も登山者である筆者でなければ書けないであろうというリアリティーがあり、読む者を思わず引き込む迫力があると感じた。文太郎に興味がある者ならば揉むべき必読の書である。
2015/10/31 20:48
「信念を持てないでいると、弱みがあるものと勘ぐられる」
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投稿者:十楽水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
つい先日、二度目の読了。印象に残っているのは上巻末に登場する吉田長右衛門のこのセリフです。昭和6年、厳冬期北アルプス横断に挑まんとする加藤。単独行というスタイルが傍目にどう映るのか、そんな疑問をふと口にした加藤に、吉田は率直に告げます。加藤自身の著「単独行」に長右衛門(的な人物)がいるのか覚えていませんが、もう一人の吉田が、加藤の山に対する覚悟に少なからぬ影響を与えているように読めました。
前年の立山・剱から昭和6年の画期的な大縦走が上巻のクライマックスです。手元に山の地図があると、いっそう楽しめると思います。
2015/10/18 17:45
より史実に忠実に書かれた加藤文太郎伝
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山男takaちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新田次郎による「孤高の人」を読んだのはいつだったのか、かなり昔のことであり定かではないが、その当時から同行者の吉田登美久が未熟な登山者としてそれが原因で文太郎を死に追いやったという点については批判があるということは承知していた。本著はより史実に忠実に書かれた文太郎伝であり、この点についての長年の疑問を解消してくれたように思う。特に上巻では、案内人を雇うのが常識だった時代における立山・剣岳での当時のエリート登山家の東京帝大出身者である学士登山家たちと勤労者登山家である文太郎とのやり取りが、文太郎の心理描写を交えて詳しく描かれており、「孤高の人」よりも読みごたえを感じた。文太郎に興味がある者ならば読むべき必読の書である。