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蒼月のイリス
あらゆる願いをかなえることができる万能の力“一色”をめぐる戦いの物語――。時間を止めることができる能力「停眼」を持つ桐生慎太郎は、同じく戦いの参加者である相馬香澄から逃げる最中、月の女神『麗しき月の夜』と同じ名を名乗る謎の美少女・イリスと出会う。慎太郎を勝者にするためにやってきたというイリスは、さっそく慎太郎に“契約”を迫るのだが……。強い思いを胸に剣を振るう香澄に、慎太郎は打ち勝つことができるのか!? そして絶対強者・新堂遊馬が二人の前に姿を現す――。傍若無人な女神(?)イリスをパートナーに、慎太郎の戦いが始まる!!
蒼月のイリス
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紙の本蒼月のイリス 3
2009/11/24 17:33
一色を目指す想い、強くあることの想いが結実する完結編……だと思う
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
一色を巡る最終決戦を経て区切りのついた完結編だと思う。その明記こそ無いが、話としてこれ以上進むことは無さそうな雰囲気。一通りほぼクリアに纏めてはいるが、第1巻で新堂誘馬が語っていた、式神も知らない異世界の思惑については結局スルーのままだったりする。まぁ、オトナの事情により3冊で纏めたというところなのかな。
勝手な推測だが作者は4~5冊くらいのボリュームを想定していたのではなかろうか。第2巻で鳳大樹の想い人(?)として出てきた「如月」なる人物が名前だけだったのは違和感があった。本来なら描かれるハズの如月のエピソードや鳳との関わり、鳳が如月を一色にさせたくない理由などを止む無く端折ったように感じられる。だとしたら、キャラが動き始めていただけに残念。イリスの尊大過ぎる言動も既に真意が解っているので却って魅力的というかアレでなくては物足りないくらいになっており、これらのキャラ達と挿絵にお別れするのは寂しい限りである。
勝手な反省会みたいになってしまうが、式神も当初から一緒に戦った方が良かったのではなかろうか。式神の力を借りての間接的な連携だけではバトル中に式神の出番が無くて勿体なかった。一緒に戦うことで本巻の『王族の血統(ロイヤルブラッド)』のような複合的なバトルも描けたと思う。あと、慎太郎の強さがイマイチ鮮明に描かれなかったことも気になった。榊十夜みたいなのが出て来ると慎太郎が喰われてしまうのである。心の成長は描かれていたので、例えば当初はイリスの方が剣術に長けていたのが、経験を積んだ慎太郎が最後はイリスを凌駕するような演出で物理的な強さの成長も表現できたと思う。各巻の表紙で必ず剣を携えていたイリスが本編で剣を全く振るわないことも実は違和感だったので。「戦う男に祈る女」よりも「一緒に戦う男女」がイマドキだと思うが……って今更だな。
紙の本蒼月のイリス 2
2009/11/17 23:35
女の色仕掛けに翻弄される哀しき慎太郎
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ、参ったね。今回の慎太郎はとってもおバカ。その心情が分かるだけにおバカと断言したい。女の色仕掛けに翻弄されて自分を見失って大事なものも失いかけて……男のおバカで哀しい側面を赤裸々に綴った本巻は、最後にうまく纏めてくれたので溜飲が下がるものの、身に詰まされる展開が少し重いものだった。というか、今回イリスがやけに慎太郎の所有権を主張するのが気になっていたのだが、こういった展開への伏線だったとも言える。もっとも、イリス自身も前巻のような慎太郎の師匠的ポジションから少しだけ変化を見せており、おそらく初めて体験するのであろう「恋心」というものの正体が分からずに持て余している可愛らしさと健気さがあった。それだけに慎太郎の冷めた態度に過剰なショックを受けた訳だが、それでも最後まで我を通したクライマックスはカッコ良かったし、慎太郎との絆を確認してしまえば後はケロッとしているところなんて却って魅力的に感じたくらいである。イリスの厚顔無恥で尊大な態度全体が想いの裏返しであり、挑発的な言葉遣いも相手の反応を楽しむ言葉遊びなことが鮮明になっていたので、これはある意味イリスの言動をひっくるめて新種のツンデレと解釈することもできる。そう考えると俄然面白くなってくる。あと、今回の敵(?)に【鳳大樹】という男が出てくるが、これがまた出来過ぎのカッコ良い男で、本巻の実質的なヒロイン【シノ】と対をなしている。作者が思い描く男本来の姿を体現しているのであろう鳳は今後も何らかの形で登場して欲しい人物である(相棒の【ティト】と一緒にネ)。エピローグの慎太郎の姿は確かにみっともないものではあるが、自らの非を認めた男の取るべき立派な態度でもある。今回も慎太郎が「王」の存在、強くあることの意義を考える場面があり、このテーマをじっくり取り扱っていることが良く分かる内容だったことも付記しておく。
紙の本蒼月のイリス 1
2009/11/16 23:10
異能バトル+ラヴコメ風味に尊大な猫キャラ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直ノーチェックだったのだが今になってふと目にする機会があり、口絵とあらすじに何となく惹かれて読んでみた。主人公【桐生慎太郎】よりちょっとお姉さんな感じのヒロイン【イリス】がなかなか面白くて良いなとか、文章やセリフで所々「?」となる不思議な言い回しがあったり、助詞の使い方(いわゆる「てにをは」)がおかしかったりするものの全体としてはサクサク読了できて程良く続きが気になった、つまり悪くない作品である。
根底にあるのは異能バトル。この世界には「王」となるべき戦いがあって、どこかの世界にも似たような争いがある設定なのだが殺伐とした雰囲気はない。むしろ物足りないくらいの軽い空気感である。第一この「王」となるべき戦いのルールがイマイチはっきりしない。冒頭で慎太郎がいきなり勝負をけしかけられており、何の説明もなくバトルが始まっている。そもそも「王」とは何なのか?「王」になるとどうなるのか?「王」になれなかった者はどうなるのか?この辺りの説明不充分には実は理由があって、この「王」たる者の資質について悩む慎太郎が、その答えを見つけるストーリーにもなっているのである。これについては良く出来ていると思う。要は自分が中心なのか、人のための献身なのかを問うているのだが、ここに至るまでの経緯に重点を置いて、イリスなどとの会話を通じて分かり易く展開させ、最後には若干の屁理屈にも聞こえるが「なるほどねぇ」という併せ技的解決策に辿りついている。ただ、ルールがはっきりしないために勝負の行方もまた少し曖昧に感じられてしまい、いかにも「勝負ついた!」というカタルシスが得られないのが気になる。
現状としては師匠と弟子みたいな関係の慎太郎とイリスだが、これについては今後の発展に期待したい。レビュータイトルの「猫キャラ」については読んでのお楽しみということで。面白いし可愛いよ。