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42件
へうげもの
著者 山田芳裕(著)
群雄割拠、下剋上の戦国時代。立身出世を目指しながら、茶の湯と物欲に魂を奪われた男がいた。織田信長(おだのぶなが)の家臣・古田左介(ふるたさすけ)。天才・信長から壮大な世界性を、茶聖・千宗易(せんのそうえき=利休)から深遠な精神性を学び、「へうげもの」への道をひた走る。生か死か。武か数奇か。それが問題だ!!
へうげもの TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE. Hyouge Mono(25)
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へうげもの 9服 TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE (モーニングKC)
2010/02/16 02:09
「史実」を超えた「真実」の利休
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
古田織部を主役に据える時点で充分異色の作品だが、出てくる人物のキャラが凄すぎる。バイタリティ溢れる彼等の生き方と死に様は、山田芳裕独特の誇張された表情描写と相俟って、途方もない迫力を生んでいる(しかしスポーツ漫画ならともかく、あの荒々しいタッチで「茶の湯」を描くとは・・・)。
縄文茶会をはじめストーリー展開は荒唐無稽なのだが、歴史上の人物たちの魂を史実以上にリアルに伝えていると思う。実物よりもリアル、という矛盾した表現でしか形容できない、その圧倒的熱量。
で、9巻は千利休が切腹する巻。ターミネーターばりに強い利休に爆笑。切腹に至る顛末もフィクションだらけだが、それでいて利休の本質に迫っている気がする。狂気の芸術至上主義者の「最後のおもてなし」には滂沱の涙。
へうげもの 4服 TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE (モーニングKC)
2008/06/12 19:15
火星からの土蜘蛛:遅延回路としての数寄
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ヤングサンデー』(小学館)の休刊が決まった。感慨深いものがある。当誌を読んでいて、ストーリーマンガで一番印象に残っていたのは『Bバージン』(山田怜司先生)、『ムジナ』(相原コージ先生)、そして「おぎゃあ」の山田芳裕先生の手になる『デカスロン』だ。
しかし、これらの先生方、メジャー・デビューは、『週刊モーニング』(講談社)<『17番街の情景』山田怜司先生>、<『大正野郎』山田芳裕先生>、『週刊アクション』(双葉社)<『文化人類ぎゃぐ』相原コージ先生>などを舞台にしている。青年マンガに限って言えば、小学館はゼロからの新人発掘力においては少し劣っていたように思われる。しかし、休刊はただただ残念である。
本作の主人公、古田織部について、「織部焼」の立役者、大茶人にして武者という以上の知識は私にはない。
数寄の道に古田織部と本作品で、袖すりあう人々、はそうそうたるものだ。信長、秀吉、家康を筆頭に、千利休、滝川長益、そして明智光秀。それぞれの武人、茶人が、物理的、心理的な抗争を繰り広げる。
その中で共通言語として、ある時は、降伏を勧める道具として、あるときは間接的な、しかし決定的な意思表示のシンボルとして、「土蜘蛛の茶釜」をはじめとする、茶器の数々が、古田織部の前に現れ、そして消え失せたり、隠れたり。
そのたびに、古田氏の口からは異音ともつかない、「はにゃあ」などの、あの擬音語が飛び出す。この擬音がまず楽しい。
数十石の貧乏侍、古田氏は、その数寄者としての止みがたい情熱とともに、不思議な因縁にまとわりつかれ、下克上の世の中をずんずん、もちろん命がけの戦場を経巡りつつ、「出世」していく。
そのような「成功」物語としても、本作は十二分に楽しめること、請け合いである。多分に故山田風太郎先生の『妖説太閤記』との共通点が感じられる切り口で、あの歴史に迫っていく。
しかし、本作においては、「モノ」にこだわり「人の目」を徹底的に気にする、まさに「玩物喪志」を絵に描いたような、この男と、この男が接する名品の数々が実は、周囲の英傑たちを動かしているように思えるのだ。そして、共通言語としての数寄=美が、数々の局面で、コミュニケーションの断絶を寸前で食い止め、血まみれの武人たちをかろうじて人間の領域に踏みとどまらせる。たとえそれが、辞世を詠む、数分間であれ。末期の二言、三言であれ。
数寄=美は流血を防ぐのには、決定的に無力ではある。しかし、流血の中で、武人の内面に、反射神経のみが支配する世界から、もっと「はにゃあ」とした、「別の、美しい世界のありかた」を夢見させる遅延回路として、数寄は機能していたのではなかろうか。数寄=美は、そんな時間を稼ぐ遅延回路としての役割を果たすのでは、と本作を久々に読んで考えさせられた。
本巻で、いよいよ。古田織部は古田織部の名を得て、織部焼のプロデューサーとして、活動を開始する。
「モノは壊れる。ヒトは死ぬ。」(ムーンライダーズ、アルバム『The Best of Luck !』より)
取り扱いに注意すれば。残る。
へうげもの TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE. Hyouge Mono(1)
2022/01/24 16:12
最終巻まで楽しめます!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:路傍の石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お堅いだけの歴史漫画でありません。とにかく隙あらば笑わせてくる作者の緻密な構成力とサービス精神に只々脱帽してしまいます。歴史好きでなくとも作者の力量がいかんなく発揮された個性豊かな武将・茶人たちのやり取りを見ていると主人公織部をはじめとした面々についてもっと知りたくなる事請け合いです。