街場のメディア論
著者 内田樹 (著)
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調……、未曽有の危機の原因はどこにあるのか? 「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極...
街場のメディア論
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商品説明
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調……、未曽有の危機の原因はどこにあるのか? 「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。
著者紹介
内田樹 (著)
- 略歴
- 1950年東京都生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。神戸女学院大学文学部教授。「私家版・ユダヤ文化論」で第6回小林秀雄賞、「日本辺境論」で新書大賞2010を受賞。
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書店員レビュー
著者はマスメディア凋...
ジュンク堂書店大阪本店さん
著者はマスメディア凋落の原因を、メディア自らの罪ー「定型」の語りに安住し、担い手一人ひとりが伝える言葉を失ってしまった事にあると喝破。メディアによるバッシング、その影響を受けた「クレイマー」による社会システムの劣化に警鐘を鳴らす。
その一方、紙の書籍の生き残る術について「書棚の効用」をヒントに、次の様な解を提示する。
それは〈「選書と配架にアイデンティティをかける人(読書人)」の絶対数を増やすこと〉と〈無償で本が読める環境を整備すること〉。
前者は書店員が棚前で毎日思い悩む命題。後者は本を読むキッカケを思うと至極当然であり、読み手を育む事こそが出版文化を守る事に繋がると云う指摘を、出版社や書き手・書店は忘れるべきではない。
訳のわからない未来を「勝ち残る」のではなく「生き延びる」為に、自分の言葉で語り伝える努力と発した言葉を自分で引き受ける事ができるかどうか。話題の軽重に関わらずその「覚悟」をもつことが今、「メディア」に関わる全ての人に問われている。
人文新書担当:岡
外側の人間が外側から書くからこそ見えてくる大きなものがある
2010/12/01 22:58
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕が初めて内田樹を読んだのはいつのことだったか。そして、あれから彼の著作を何作読んだことか。
あの頃の彼はまだ一部の読書家が密かに愛好するちょっと変わった物書きにすぎなかった。そして当時彼は自分が如何に貧乏な学者かということを、いや、実際には食うや食わずということでもなかったんだろうけれど、本を書いて手に入れたお金なんてちょっと本を買ったらすぐになくなってしまうということを切々と書き綴っていた記憶がある。
その彼が、ここのところ出す本出す本が悉く評判になり売れるようになって、今はどういう気持ちで書いているのかなと、僕なんぞはついついお節介なことを考えたりするのである。特に今回は、彼個別のケースとは逆に、世の中全体としては本が売れなくなってしまった──それは何故か、ということをテーマとして含んでいるのである。これは極めて皮肉であり、ある意味内田的なテーマであるとも言える。
僕は生来マイナー指向の、と言うか、人によっては「ひねくれた」と言われる読者で、「売れてくると嫌になる」傾向がある。しかし、こと内田に対しては全くそういうことにはならない。何故かと言えばそれはとても簡単なことで、つまり、何度読んでも面白いからである。どこがどう面白いかと言えば、ひとつには我々が却々気づかなかったりついつい見落としてしまったりする切り口であり発想であり、そしてもうひとつは揺るがない論理性と穏当な妥当性によるものである。
もちろん彼は超人ではなく、その述べるところは必ずしも磐石でも完璧でもない。例えば、新聞社とテレビ局は系列関係にあるので、新聞が「身内」のメディアであるテレビ局を批判しにくいという指摘(50ページ)は、テレビ局に身を置く僕に言わせると、ある系列に於いては少しは成り立つかもしれないが、ある系列に於いては全くそういうことはないし、僕自身としては逆に「(新聞を含めて)紙媒体の人たちはどうしてそんなに放送局を叩くのが好きなんだろ?」という印象を肌で感じている。
それはテレビ局や新聞社の外側にいる内田が書くのであるから、当然中にいる僕とは感じ方が違うわけだし、書いていることに少々間違いがあっても仕方がない。しかし、外側の人間が外側から書くからこそ見えてくる大きなものがあるのであって、僕らがそれに対して小さな論点で反論を試みることは全く意味がないのである。
紙の本よりも電子書籍が劣っているのは、それを書棚に並べて自分や他人に見せびらかすことができないので、自我の幻想的な根拠を構成することも他人の欲望を喚起することもできないという指摘(161ページ)についても、今はネット上にバーチャルな書棚を形成してそれを補完するサイトがあるのだと一言言い返すことが可能であるが、それも同じように意味のない小さい反論にしかならない。
「あまりに多くの要素が関与しているという事実が、テレビをビッグビジネスたらしめており、同時にそれがテレビの本態的な脆弱性かたちづくってもいる。問題はテレビメディアの当事者たちに、この巨大メディアの『本態的な弱さ』についての自覚が希薄なようにみえること」(46ページ)「『なぜ、自分は判断を誤ったのか』を簡潔かつロジカルに言える知性がもっとも良質な知性である」(84ページ)「メディア独自の個性的でかつ射程のひろい見識に触れて、一気に世界の見通しがよくなった、というようなこと(中略)が無理ならせめて、複雑な事象を複雑なまま提示するというくらいの気概は示してもよいと思う」(195ページ)──いちいち面白い。そして、結構「痛いところ」を突いてきている。
結局最後は贈与経済論になり、何かを手にした者がそれに対する「反対給付義務」を感じたとき、もっと平たく言うと「ありがとう」の気持ちが生じたときに、初めて贈与のサイクルは起動するのだ、という指摘に繋がる。
これは一見若いころにマルクスを読んだ人の分析とは思えない指摘である。しかし、そこにこそ鍵があるのである。──なんでもかんでもを価値論の内側で語らないこと、メディアをビジネスモデルの構図の泥沼から引き上げることこそがメディアが生き残る道なのである。
僕自身に反省はあっても、大きな反論はない。現に僕自身がビジネスモデルからはみ出たところで内田の書籍を買い求め、読んで、何とかしなければと考え始めたりしているのだから。
by yama-a 賢い言葉のWeb
タイトルが、なぜ「街場」なのか少し疑問ですが・・・
2010/09/20 21:26
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルが、なぜ「街場」なのか少し疑問ですが・・・。本書は、大学での講義を利用して書かれています。そのせいか、一章ごとの結論もありますが、最後まで読んでいくと著者の考えがすっきりと分かる仕組みになっています。
メディアの危険性や脆弱性は、だれもが指摘しているところですが、本書ではもう少し本質的な議論がなされています。
つまり社会の仕組みと、メディアの役割についてです。
以下、気になったところ。
「人間がその才能を爆発的に開花させるのは、「他人のため」に働くときだからです。」
「天職」という言葉を安易に使っている人がいか多いことか。自分にあっている、あっていないという問題ではなく、その仕事を通して社会にどれだけ貢献できるかが重要ということでしょう。
「そういう種類の思考停止のことを僕は先に「知的な劣化」と呼んだのです」
メディアが批判する問題は、基本的に弱者救済色が強いもの。それはそれとして、大切なのはメディア自身がその責任について考えているかどうかということ。
「「こういう難しい言葉は使わないでください」というタイプの規制については、僕は不満です」
自分の考えを文にした時の規制についての意見です。この意見には大賛成です。読みたい人間が読むものに言葉の難易度はあまり関係ないはずです。大衆迎合というか、読者を甘やかすというか、とにかく自分の使いたい言葉で書いていきたいと考えている著者の方は多いはず。
インターネットがよいとか悪いとか、そういうのは表面上の話。もっと深い部分でメディアを考えるきっかけになる本です。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
品質保証
2011/10/23 22:41
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の大学での講義を基にして作られた本。ただし著者曰く、講義の様子は原型をとどめていない。
タイトルにメディア論とあるので、当然、テレビや新聞などのマスメディアを対象としているが、途中、著作権に関連して電子書籍について論じている部分もある。
テレビがつまらなくなった、と言われて久しい。
普段から、ちゃんとテレビを見ている訳ではないので、多くを語れないが、何か見よう、と新聞のテレビ欄を開いて「見たい」と思うようなものが何もない、という事が多くなったのは確かだ。
しかもそれが「ゴールデン」と呼ばれる時間帯だったりする。
自分の好みが世間と(おそらくは「多少」)ずれている自覚はあるので、少なくともそのうち何回かは多くの人も同じ事を思っているだろう(と思いたい)
この本では、なぜ、つまらなくなったかの本質を探っている。
一番、印象に残ったのは
「メディアがメディアの批判を手控えたら、メディアの質の保証は誰がやるのか」
という話。
時折、メディア自身の汚点については気付かないフリをする、というのが昔からひっかかっていた。
人気のあった映画は劇場公開終了後、すぐにテレビで放送されるが、テレビの暗部を描いた映画を放送した、という話は聞いたことがない。
以前、ナショナルジオグラフィックという世界的に名の通った雑誌で、「誤報」を特集記事にしてしまう、という事件があった。
発覚後はピューリッツァ賞を受賞したこともある外部の優秀な記者に経緯を調査させて、その結果を同じ雑誌上で発表する、という対応がとられた。
(さすがに写真もない文章だけの記事で、雑誌の後ろの方に掲載されたが)
同じような事が日本のメディアでできるだろうか。
ただ、政治に関して「国民のレベル以上の政治家は生まれない」とよく言われるが、これはメディアに関しても言えるのでは、という気もする。
とりあえず、何となくテレビをつけている、というくらいなら消すようにしてみようか、と思う。
シンプルイズベスト
2010/09/14 17:05
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nanako17girls - この投稿者のレビュー一覧を見る
言ってることは単純です
本を読んで知識を得られれば「ありがとう」と思い、給食という栄養があり、そこそこおいしく、安く、安全なシステムで食事がとれることに感謝し、病気を治してもらうことに謙虚に尊敬を抱き、日々暮らす
内田樹が人気なのは「おじさん」だからと永江朗が紹介していたが、様々な事象に対し、智に裏打ちされた「おじさんの話」がある
おじさんの話には説教くさくても、含蓄がある
レヴィナスの専門家だったはずが・・・・
2019/08/24 23:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年すっかり有名になった内田樹。近頃テレビ嫌いになりつつあるので、著者のメディアについての主張はなるほどと思わされた。確かに現代は「衆愚」の時代。「動物的」だの「無責任」だのすべて当てはまる。マスメディアはそうした風潮を作り出し代表する。隣国ほどでないにしてもその悪影響は甚だしい。もうひとつ、若者の「自分探し」という価値観に疑義を呈するところ。自分の可能性や才能というのは他者から求められてはじめて自ずと自覚されるのだと述べていたところが印象的だった。
メディアを見極める
2017/12/08 23:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:リードマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本はメディアについて様々な切り口から意見を述べている。私たちはメディアに利用されず、利用しなければいけない。この本はその大切さを述べている。