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パンドラの匣
著者 太宰治 (著)
「健康道場」という風変りな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。...
パンドラの匣
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パンドラの匣 改版 (新潮文庫)
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商品説明
「健康道場」という風変りな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の人々との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧みに表現した「正義と微笑」。いずれも、著者の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望にみちた青春小説。
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紙の本
永遠の青春文学の面目躍如。能天気ではないおちゃらかなユーモアと、植物のつるは伸びて行く方向に陽が当たるようです…という恥じらいある希望。
2002/02/22 11:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学や高校で生徒の読書指導に当たっているなんていう先生がいらっしゃるとしたら、「太宰なら先ず『人間失格』『斜陽』…」とブックリストを作られるのはいたしかたないとしても、それと肩を並べてこの本をぜひ挙げてほしいなと思う。
収められた2編は「正義と微笑」が日記形式、「パンドラの匣」が手紙形式をとっていて、どちらも主人公の青年のつぶやき風で読みやすいし、ぷっと吹き出したくなるような思いつきまで書いてあり、ユーモラスで面白い。加えて、何をやっても自信が持てない若き日々の苦悩や不安、そのために生じる虚栄や反抗、それでもまっすぐで在りたいという潔癖や正義に対する志向などが存分に書かれている。
調子よく体裁よく表現されているのではなくて、「何でこんなバカなことをやっちまうんだろう」「どうしてあんなしょうもないことを口にしてしまったのだろう」といったところが、何げない意識の流れのまま小説に焼き付けられている。
青春期にある人なら、あるいはそこをくぐりぬけてきた人なら、誰でもひとつやふたつ、思い出しただけで穴があったら入りたい、二度と思い出すことがないようにそれを葬り去ってしまいたいということがあるに違いない。そういうことが丁寧にすくいとられていてリアルであり、リアルゆえに勇気を授けてもらえる感じなのだ。
「太宰文学に珍しく明るく希望にみちた青春小説」とカバーの紹介にある。2編の中篇小説に宿ったその資質は、太宰自身も他の人から授けてもらったようである。
最初の「正義と微笑」は、太宰に小説指導を受けていた弟子の弟の16歳から17歳にかけての日記を読んで、それによって浮かんできた幻想を自由に書き綴ったものだということ。元は昭和10年ごろに書かれた日記だそうで、受験勉強に苦しむ旧制中学の生徒の学校生活に始まり、サッカー部に所属し、色白で感じやすい青年の姿が起こされていく。ミッション系のR大学に進学した彼は、役者になることを望んで劇団の研究生選考を受けたり、嫁いだ姉の夫婦問題に心をやきもきさせたりする。
2編めの「パンドラの匣」は、太宰ファンでよく手紙を送ってきてくれた人の日記が元になっているということである。昭和18年に肺結核で亡くなったその人の文才を認めていた太宰は、戦後すぐに新聞連載小説の形で、これを発表したらしい。「健康道場」という変わった名の精神主義の結核療養所が舞台で、そこで過ごす患者や看護婦たちの戦時下でありながらおもしろおかしい日々が、親友への何通かの手紙の形で紹介される。「やっとるか」「やっとるぞ」「がんばれよ」「ようし来た」という挨拶パターンが義務づけられているという記述だけで、普通の療養所にはあらざる独特の雰囲気が伝わってくる。そこで起こる「死」という事件も、特別な意味をもって書かれている。
いずれの作品も、井伏鱒二がかわいがったという太宰の才能、井伏と通ずるユーモアのセンスなどが輝いている。後年の死と隣り合わせの太宰とは異なる印象である。主人公たちの心をとらえた小説や言葉などが織り込まれていて、この本を読んだあとの広がりにつながっていくのも有意だ。
紙の本
再びの出会い
2020/01/21 19:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:メーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はもう幾十年も前、高校生のときに新潮文庫の太宰治のものをすべて読破していたのですが、つい先日、店頭でこれを見かけて、「パンドラの匣」よりも「正義と微笑」を無性に懐かしく、購入しました。読んでみますと、やはり、高校生時代の懐かしい思いと、その当時は思いもしなかった感覚がありました。いつ読んでも素晴らしいと思いました。
紙の本
青春の希望を照らす二編
2016/09/28 15:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポージー - この投稿者のレビュー一覧を見る
太宰治は初めて読みました。初めての太宰作品としてふさわしいのかよくわかりませんが、どちらも少年・青年の希望や勘違いや不満や切なさなど全部に優しい光をあてた物語。希望とは大雑把なものです。なんだかこれから良いことが待っているような気がするというようなものです。この作品も繊細なのにそうやってさっぱりしています。
紙の本
太宰作品4作目
2021/04/14 17:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひとみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
何故勉強をしなくてはならないのか!太宰が解説く!と宣伝帯にかいてありましたが、う〜ん。本書を理解しきれていないのか、宣伝帯を理解できず。短編小説2作品収録されていますが、主人公の心の弱さと強さ。そして、大人になりきる前のよくわからない自分自身への自信を描いているように思います。こんな時期もあったかしらと思いつつ楽しく拝読しました。
紙の本
開けたくなる
2020/06/26 09:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
仙台の新聞に連載されていたという、表題作「パンドラの匣」が爽やかです。失恋や厭世感もありながら、病弱な少年に優しい眼差しを注いでいました。