Op.ローズダスト(下)
著者 福井晴敏 (著)
かつて防衛庁の非公開組織に所属していた、丹原朋希と入江一功。2人の胸には常に、自分たちが救えなかったある少女の言葉がある。同じ“希望”を共有しながら、情報機関員とテロリス...
Op.ローズダスト(下)
商品説明
かつて防衛庁の非公開組織に所属していた、丹原朋希と入江一功。2人の胸には常に、自分たちが救えなかったある少女の言葉がある。同じ“希望”を共有しながら、情報機関員とテロリストという、まったく異なる道に分かれた2人。入江たちが仕掛ける最後のテロで、もはや戦場と化し、封鎖された東京・臨海副都心。日本中が見守る中、この国の未来をうらなう壮絶な祭儀が幕を開けた。新しい何かは生まれるのか? 前代未聞のスペクタクル、驚愕の完結篇。
著者紹介
福井晴敏 (著)
- 略歴
- 1968年東京都生まれ。「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。「亡国のイージス」で日本推理作家協会賞長編部門等、「終戦のローレライ」で吉川英治文学新人賞等受賞。
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そしてあたらしい言葉が生まれる。
2009/06/03 11:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
前巻で悪魔の破壊兵器、TPexを手に入れたテロリスト集団、ローズダスト。彼らの最終目的は臨海副都心、有明・台場地区の壊滅だった。そこまでして彼らが訴えたかった事は、「この国の現況」を国民に知らしめる事。古い体制やシステムに縛られ、新しい言葉を生み出す事をしない世の中。政界・警察・自衛隊、あらゆる日本の旧態依然の体制、システムに。そして日本の全国民に、それを知らしめる為に、彼らは戦いを起こしたのだ。
地下に設置されたとあるシステムを使い、有明・台場地区を縦横に駆け巡るTPex。TPex内の3液混合が始まり、臨界に達するまでたったの15分。その15分で自衛隊や機動隊が必死に阻止しようと試みるも、とうとうTPexは起爆してしまう。奪取された全量のわずか10%程の量の起爆だったにも関わらず、有明・台場地区は深刻なダメージを負ってしまう。人口の島である当地区は、地盤が緩いのだ。このままTPexの爆発が続けば、活断層が刺激される事で起きる巨大地震によって誘発された液状化現象が、街ごと全てを海に沈めてしまう。そして絶望の3発目のTPex反応が観測された時、丹原朋希と羽住一尉の乗った戦闘ヘリ「コブラ」が、有明の空に舞い上がった。
上巻中巻と比較的ロジカルな感じで展開されてきた当物語であるが、とうとうこの下巻で超加速。はらはらどきどきの戦闘シーン満載である。中でも天才ガンナー、ローズダストの留美がTPexを止めようと有明上空に集まった複数の戦闘ヘリと撃ち合うシーンは圧巻。時間を忘れて物語りにのめり込んだ。とにかく一気に加速した物語は空前絶後の破壊を重ね、終焉に向かう。ローズダストのリーダー、入江が言った「東京の空にローズダストを舞わせて見せる」の意味とは何か。やがて訪れる結末、そして生まれる新しい始まり。最後まで息をつかせない。
戦場となる有明地区を、とにかく緻密に調べ上げてあり、良くこんな作戦思いつくなと感心させられた。だけに非常にリアルで、シュールなものさえ感じてしまったのだが。前作「終戦のローレライ」や「亡国のイージス」が、広い大海原に飛び出したのに対し、東京、臨海お台場地域に限定した本作品は、やはりどこか世界観の狭さを感じさせられてしまった。戦闘や兵器の特性などは非常に緻密に描かれておりリアルだが、スケールの大きさという点では前作に劣るように思われた。それからやはり、無辜の市民に対する無差別テロ、というのはいかな義憤にかられていようとも決して許される事ではない。その設定に少し眉をひそめるような感もあったのだが・・・いやしかし。これはもしかしたらあの某大国が起こしたあの意味の無い戦争に対する、痛烈な批判の意味を含んでいるのかもしれないとも思われた。いやもっともっと深いいくつかの思惑が深く複雑に組み合わさって、本作を比類ない程深く濃い物語へと昇華させているのかもしれない。よって受け取る物は、読み手によって千変万化するようにも思う。
息を飲んでページを繰り、活字と取っ組み合うようにしてストーリーを追う。そしてそこに深く刻み込まれた作者の思惟や深遠なテーマを追い求めて。ついに訪れる壮大なラストにただただ茫漠と脱力させられる。そんな読書の醍醐味を満喫させてくれる一冊。上中下巻三冊で1500ページを読破したこの三週間。「本を読んだ」というより、「彼らと付き合った」という感覚が残り、読後の今少し寂しい感さえする。何しろ重厚感極まりない、まさに大作であると思う。
時代を経てより進化した福井小説
2012/10/08 01:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sleeping lion - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わった。
非常に長い小説ながら、夢中で読ませる。
上巻で読者を散々振り回し、引っ掻き回し、
中巻で圧倒的な戦闘を描き、黒幕を徐々に明かす。
そしてこの下巻で、戦いに終止符を打つ。
すべての伏線が回収され、謎は解ける。
あと5ページだけ、最後の続きが読みたいと思うけれど、
たぶん、それを書かない方が読了感が高いのかも知れない(笑)
結局、この長大なテロ計画とそれに立ち向かう男たちの戦いは、
一人の女性に対する気持ちがすべてだったように思う。
元々福井晴敏さんは無骨な中に、微妙な恋愛的雰囲気を
描くのが得意な作家さんだと思っているけれど、
今作においてもそれは完璧に発揮されていたように感じる。
愛や恋ではなく、生きる目的、希望、可能性。
そんな言葉がふさわしい、彼らとその女性。
彼らが結局「新しい言葉」を生み出せたのかどうかはわからないけれど、
不思議なテーマを持つ作品だったように思えた。
最後まで深い意味を持った、ローズダスト、新しい言葉。
今回も素晴らしい体験をありがとう!
願わくば、完璧に再現された映画化だけど、
今回ばかりは無理そうかな(苦笑)。