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カノン
著者 篠田節子 (著)
自殺者がのこした音楽テープは遺言なのか、それとも怨念なのか。曲を聴いた児童はひきつけを起こし、押入れのチェロはひとりでに弦をはじく。送り主は松本の旧家で作曲をたしなみ、同...
カノン
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カノン (文春文庫)
商品説明
自殺者がのこした音楽テープは遺言なのか、それとも怨念なのか。曲を聴いた児童はひきつけを起こし、押入れのチェロはひとりでに弦をはじく。送り主は松本の旧家で作曲をたしなみ、同人誌を発行する「高等遊民」。気味の悪さにテープはうち捨てられるが、音楽だけ別のテープへと乗り移る。死者の真意をさぐるために音楽教師の瑞穂は奔走、その途上、彼女自身が封印してきた過去があばかれることに……。『女たちのジハード』で直木賞受賞の著者による異色ホラー長篇。
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紙の本
20年前、20年後。
2008/01/22 00:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
音楽の夢を諦め、平凡ながら堅実な生活をしてきた主人公の20年間とは、なんだったのか。
また、
才能にめぐまれながらも、
音楽の世界からも社会人としても脱落して自殺していった
男の人生とはなんだったのか。
男が死ぬまで演奏していたカノンを贈られた主人公。
「ほんとう」を探す話だと思います。
音楽的知識があれば、より楽しめたかもしれません。
紙の本
絶対の美、至高の音楽、選ばれし者
2005/11/28 16:48
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つな - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公・瑞穂は39歳の小学校の音楽専科教員。今現在の瑞穂は、大木のようなどっしりとした母であり妻である。けれど、彼女はかつて憧れに満ちた若木のような少女だった。
経済的事情で教員養成大学に入学したけれど、演奏家になること以外は考えずに、一日八時間の練習をこなす毎日。所属していた学生オーケストラの失敗に終わった演奏会の夜、瑞穂は「闇を切り裂く稲光さながら」のヴァイオリンの音を出す男・康臣に出会う。
康臣と瑞穂はその晩、オーケストラを辞め、アンサンブルをすることを約束する。ピアノトリオのために現れたのは、康臣とは正反対とも言える、大柄で、秀才、陽性な男・正寛。その夏、三人は「山の家」でアンサンブルのために合宿を行う。様々な出来事があったこの合宿の後、瑞穂の青春の季節もまた終わった。演奏家への道を諦め、康臣への淡い恋も終わり、彼との付き合いも途絶える。
秀才・正寛との付き合いは続いているものの、康臣との付き合いが途絶えた中、瑞穂は康臣の訃報を知らされる。康臣は瑞穂に一本のテープを残して死んでいた。そのテープを貰って以来、瑞穂の身辺に不審な出来事が多発する。なぜなのか。瑞穂は康臣の死の真相や、付き合いが途絶えた後の彼の身辺を探ることになる。
本当の天才というものは、その価値が分かる同じ道を目指す者には、絶望しか与えないものなのか。この物語が、ただの天才と秀才の話にならないのは、瑞穂が女性であるからだと思う。瑞穂も、また康臣と同じく天才であった。なかなかに複層的な話である。
二十年前、打ち捨てた感性、能力を持つ「彼女」と共に生きていく決心をした瑞穂。それはつまり、これまで築いてきた生活を、壊すことでもある。それとは正反対の生き方を続けなければならない、正寛。瑞穂と正寛の人生はこれからも続く。「選ぶことが出来ない」人生というものも、あるのかもしれない。
紙の本
人生の転機はいつ来るかわからないものなのですね。
2001/10/10 16:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:takumi_y - この投稿者のレビュー一覧を見る
20年前学生時代に一夏を共に過ごした繊細な天才だった香西の死を知らされ、葬式に参列する主人公。彼女はそこで彼の弟から、彼が彼女に遺したテープを渡される。その中には彼のヴァイオリンのバッハのカノンが入っていた。テープレコーダーを止めても耳の奥に響いてくるそのヴァイオリンの音の謎を知るために彼が生前信仰を持っていた男を訪ね、また彼の死に迫っていく。
再生ボタン押してないのにテープの音が大音量で響いたらそれは怖いですけども、なによりも色々思うことがありすぎてつらい。四十路を前にした女性の現実と、諦念に彩られたものの見方がものすごく生々しく迫ってくるので、逃げ場がない感じ。これまでずっと香西氏の生き方について非難がましく見ていた主人公が、その当人に命救われて生き方変えようとしているのにはかなり釈然としない物を覚える。
しかし指輪如きに雷は落ちないはずですが。金属に雷が落ちるというのは迷信のはずですが……。