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少し変わった子あります
著者 森博嗣 (著)
大学で教える小山が、後輩の荒木から勧められた料理店は、一風変わったところだった。場所は訪れるたびに変わり、客はたった一人で訪れなくてはならない。客に顔を見せる店員は三十代...
少し変わった子あります
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少し変わった子あります (文春文庫)
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商品説明
大学で教える小山が、後輩の荒木から勧められた料理店は、一風変わったところだった。場所は訪れるたびに変わり、客はたった一人で訪れなくてはならない。客に顔を見せる店員は三十代とおぼしき女将が一人だけ。そして、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるのだ。戸惑いつつ、女性たちと会話を続ける小山は、しだいにその店の雰囲気に惹かれていくのだが……。甘美な沈黙、そしてふいに訪れる衝撃! 極上の森博嗣ワールドをどうぞ。
著者紹介
森博嗣 (著)
- 略歴
- 1957年愛知県生まれ。作家、工学博士。「すべてがFになる」で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著書に「スカイ・クロラ」「神様が殺してくれる」など。
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紙の本
沈黙さえも嗜好に変える、絶品の孤独。
2012/03/16 10:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜李 - この投稿者のレビュー一覧を見る
後輩から教えてもらった料理店。
女将は、きれいな人なんだろう・・・整った顔立ちだが、どうも印象に薄い。
料理は、美味しい。 訪れる日によって変わる料理、確かに旨い。というか、不味くはない。
でも、劇的に旨いとか、そういうことはない。
店の場所は、いつも変わる。同じ場所に店を構えていることはない。
看板も広告の類もない。
奇妙な料理店。
それでも私は何故か、通ってしまう。
食事の際は、女性が一人同伴する。
その女性も、毎回違う顔ぶれだ。特にどうということもない、普通の女性。
一度同伴した者と、二度と会うことはない。
初対面のその者に、毎回料理を奢るという形になるのだが、 2人で料理を食べ、とりとめもない話をし、その仕草を見る。
ご馳走様でした。と彼女は去っていく。
それで終わり。 ただ、それだけだ。
何故こんなにも、惹かれるのだろう?
少し変わった子がいるだけのこの店に。
沈黙さえも嗜好に変える、絶品の孤独。
とにかく不思議ワールドです。
少し変わった子あります
もう少し変わった子あります
ほんの少し変わった子あります
また少し変わった子あります
さらに少し変わった子あります
ただ少し変わった子あります
あと少し変わった子あります
少し変わった子終わりました
まず、サブタイトルを見て、なんじゃこりゃ。です。
でもいつの間にか引き込まれて、 気付いたら読み終わってた。
最後に、あっ、そうなんだ!という思いを残して。
これ以上は、このお店に入った者にしか味わえません。
紙の本
美しくもミステリアスな文学作品
2011/04/09 22:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
びっくりするぐらい美しい「文学作品」でした。
それはそれはもう、極上のお料理を上品な器で味わったよう。
で、文学作品でありながら、どこかしらミステリアスで、そこはかとなくホラーテイストも加味されている。
毎回場所が変わる、名前のない料理屋。美しく整っていながら何故か印象に残らない容貌の女将。
客はただ一人。そして、毎回異なった女性が一人、食事のお伴をするという趣向。
行方不明になった同僚から、かつて紹介されていたその店をなんとなく訪ねてみた主人公の大学教官は、その不可思議な空間に、初めはとまどい、訝る。
食事のお伴をする女性もまた素性を明かさない。"その類"の店のように酔っ払いの愚痴を聞いてくれるわけでもない。特になんの特典もない。ただ、何故か皆、所作が非常に洗練されていて美しい。
「こんな趣向になんの意味があるのだろう。」
しかし、"ほんの少し物足りない"その余韻に何故かまた足を向ける気になり、2度3度と回を重ねることとなってゆく。
"一期一会"という言葉を突き詰めたようなシチュエーション。
膨大な時空の中で、今在る不思議。ここで出会う奇跡。
そして、そうでありながらも、詰まるところ自分は一人であり、最も愛しているのは孤独なのだと気付く。
厭世観とはまた違う。
見ず知らずの女性と相対して食事をしつつ、そんなふうに主人公は実に様々なことに思索をめぐらせる。
食事で支払う金額以上の何かを、彼はきっと得たのだと思う。
そして、同時に、日常という次元に於いて「何ものか」を失った。
私は人と差し向かいで食事をするのは苦手だ。
相手に見られている、というのは、相手を意識しているようでいて、結局は自分を顧みていることに繋がるからだ。
ゆるゆるの躾で育った私は食事のマナーもあんまりちゃんと知らないし、相手がきちんとしていればいるほど、いろんな意味で自己嫌悪のカタマリに陥ってしまうのだ。
この主人公が女性で、相手の、"所作の美しい人"が男性だったら、こういう店は成り立たない気がするなぁ。
この大学教官みたいに色んな思索に耽る余裕もなく、食べた気もせず落ち着かないだけだろう。
美しいけれど、やっぱりこれは男性視点の作品だな。
ただ、私も、所作の美しい人を眺めるのは好きだ。
小学生の頃だったと思うが、風邪かなんかで訪れた病院の看護師さんの手つきが、非常に洗練されていて美しかったことを思い出す。
脱脂綿の入った容器のふたを取る。
注射器に薬液を満たす。
それらのすべての動作が実にムダがなく流れるように綺麗で、思わず見惚れてしまったのだ。
なんにしろ、美しいというのは心地よいことなのだな。
ラスト近く、なんだか違和感を覚えてきたな、と思ったら
やっぱりな展開。
ここで一気に背筋が寒くなった。
まったく違うお話ではあるけれど、解説者と同じく、私も
「注文の多い料理店」
を思い出してしまった。
余談であるが、「四季」シリーズを読んでいると、ちと色んな妄想が展開しそう。
女将の正体って…とか。
もちろん森先生は、そんなことどこにも書いていないし、ただのファン的迷妄に過ぎないのだけど。