パラレル
著者 長嶋有 (著)
妻の浮気が先なのか、それとも僕が勝手に会社を辞めたせい? とにかくゲームデザイナーの僕は失職し、離婚した。長年の親友でキャバクラ大好き・顔面至上主義者の津田と、別れた後も...
パラレル
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商品説明
妻の浮気が先なのか、それとも僕が勝手に会社を辞めたせい? とにかくゲームデザイナーの僕は失職し、離婚した。長年の親友でキャバクラ大好き・顔面至上主義者の津田と、別れた後もしきりにメールをよこす元妻、そして僕の新しい恋人……錯綜する人間関係と、男と女の微妙なくい違いを絶妙な距離感で描く、長嶋有初の長篇。タランティーノ監督の映画をイメージして書いたという斬新な構成と、思わず書きとめたくなる名言満載の野心作!
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「余白のひと」長嶋有が描く、パラレルな人と時間の物語。あなたにとって「はしたない」事って何ですか?
2012/05/18 02:23
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しのはら - この投稿者のレビュー一覧を見る
長嶋有さんは、「余白のひと」だと思っています。
ことば選びが巧みで、選び抜いたことばを「ここしかない」場所に置くそのセンスは、説明や描写を削ぎ落として際立つ「余白の美」とでも申しましょうか。
そして、文章だけでなく物語においても、「人生の余白」のような時期を扱ったのが、本書です。
主人公の七郎は、成功を収めたゲームデザイナーの仕事をやめ、妻とも離婚。
仕事にも家庭にも縛られない、エアポケットに落ちたような時を過ごしています。
相棒は、学生時代からの友人、津田。
マイペースで独特の世界を持つ七郎と、ゲームでも現実でも立身出世や高得点を求める津田は、好対照。同じゼミを受講しても、連れ立ってキャバクラに行っても、彼ら二人はずっとパラレル。
起業して社長業と夜遊びに励む津田の座右の銘は、「なべてこの世はラブとジョブ」。ラブの方は、複数の女性を「パラで走らせ」るような津田。(いつか誰かに刺されるよ、と私も思った)
ラブもジョブもない七郎が、奔放な津田と付き合う内に出会う「ひとびと」、そして「できごと」・・・。
物語は、この「現在」と「学生時代」そして「離職&離婚の頃」と、バブル崩壊を挟んだ三つの時間を行き来しながら平行(パラレル)に進行してゆきます。その行きつく先は・・・。
冒頭で「ことば選びが巧み」と書きましたが、今回、特に「はっ」としたことばが、ふたつ。
ひとつ目は、「敵か味方か峰不二子」。
キャバクラ勤めのサオリの謎めいた様子を表わすのに、会話でなく地の文にこれを入れるとは憎い!これひとつで、その女性の得体の知れなさだけでなく、七郎の世代も趣味嗜好も分かる。まさに長嶋マジック。
もうひとつは、「はしたない」ということば。
七郎は、離婚届を出すため「市役所にタクシーで乗り付けるのは、はしたない感じがする」という。
そして、結局バスで行く。妻と二人で、バスに乗って行くんですよ。離婚届を出しに。
この「はしたない」ということばに象徴されるように、七郎には彼なりのストイシズムというか美意識がある。
それゆえに、仕事をやめる事にもなったのです。しかし、それがあるからこそ七郎は、ラブもジョブもある津田から羨ましがられる存在であるのです。
大島弓子さんや高野文子さんのイラストを表紙にして、しばしば読者に「単行本ジャケ買いの罠」(=文庫が出ても軽々に買えない精神的プレッシャー)を仕掛けてくる長嶋本だけど、この文庫は、そんな迷いを吹き飛ばす。
というか、「文庫本解説買いの罠」が仕掛けてあるのだ。
この文庫版の解説は、ゲームデザイナーにして「ベストセラー本ゲーム化会議」「ふいんき語りシリーズ」でお馴染み、米光一成さん。
なんと解説中で、ご自分とこの小説との重大な関わりをカミングアウト。
そうだったのか・・・。
いい年した男たちの青春
2017/05/21 13:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tomtom - この投稿者のレビュー一覧を見る
裏表紙のあらすじに《思わず書きとめたくなる名言満載の野心作》とあるが、私が心に残ったのはクリスマスに牧師が言った「人はすべてその人にふさわしいものを得るといいます」という言葉。これを聞くとなんだか安心。
「パラで走らせる」というのも初めて聞いた。面白い。
時系列を組み替えながら進んでいくので少しこんがらがる事もあったが、日付が明確に記されているので読み直せば整理できる。続きが気になってスイスイ読んだ。
解説はあの「ぷよぷよ」を生み出したゲームデザイナーの方。この作品を書くに当たって長嶋さんから取材を受けたそう。これは感想に近いので気軽に読める。