陸行水行 別冊黒い画集2
著者 松本清張 (著)
耶馬台国はどこにあったか。朝鮮半島から耶馬台国に至るルートに魅せられて、古代人の道を辿ろうと思い立った2人はどうなったか? 古代史のロマンと推理がみごとに結晶した表題作「...
陸行水行 別冊黒い画集2
商品説明
耶馬台国はどこにあったか。朝鮮半島から耶馬台国に至るルートに魅せられて、古代人の道を辿ろうと思い立った2人はどうなったか? 古代史のロマンと推理がみごとに結晶した表題作「陸行水行」のほか、“村に道路が通る!”と土地の買い取りで沸き立つ村社会の心理の駆け引きをえぐり出す「形」、邪魔な恋人を切ろうとする男をクールに描いた「寝敷き」、若いツバメがひきずりこまれる蟻地獄とは……「断線」と、最後の1行までサスペンスが続く、名推理4篇。
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再読しても面白さは変わらず深まる
2007/10/07 21:36
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張の短編集である。最近松本清張の小説を原作とするテレビドラマをよく見るような気がする。だからという訳ではないのだが、昔読んだ長編を読み返している。やはり時代を反映しているものもあるし、古さを感じさせないものもある。時代を反映しているものは、それなりに懐かしさを感じることができるものである。
本書も4つの短編が集められたものであるが、皆昭和38~39年に書かれたものである。40年以上も前の時代である。東京オリンピックが行われた時代でもある。本書は副題として別冊黒い画集(2)と付けられている。
タイトルになっている『陸行水行』はこれだけでピンと来る人もいるであろう。魏志倭人伝にある「邪馬台国」までの旅程に使われている言葉である。丁度昨日、奈良の纏向遺跡で邪馬台国時代の仮面が発見されたというニュースがあった。21世紀の現代でも邪馬台国がどこにあったかについてははっきりとした証拠はない。1700年も前の人が記した魏志倭人伝は、それ以外の史料がないこともあり、場所が明確ではない。清張自身の主張を登場人物の口を借りて主張していく。
『形』は、高速道の建設予定地の用地買収に絡んだ事件である。きわめて辺鄙な農地が一夜にして値が吊り上る。それはこういう場合以外にはあまりないであろう。この作品は古い作品なのであるが、買収に応じない農家に手を焼いた会社側は仕方なく値を上げる。そうこうするうちに様々な環境変化があり、行方不明者もでる始末である。買収劇をめぐる殺人事件を淡々と描いている。
この作品が書かれた時代は、東京オリンピックで道路や施設の開発が進み始める頃である。価値がないと思われていた土地に破格の値が付けられた驚きと、売却の決断を迫られた地主。将来のことを考えて、売るのか売らないのか、地主の農家は選択を迫られる。農家の内情を中心に描くのではなく、周囲の目、即ち外部から見た農家の行動を描くことによってドキュメンタリー風に描くところが、随分今様なのである。
用地買収を迫られた際の判断は、今も昔もそれほど変わらないであろう。それだけに、時代の違いを超えた真実味がある。松本清張が今読まれるのは、こういう点が読者に受けるのであろうか?
