恋は乱反射する。 2nd to none 〈ひけをとらない〉
著者 崎谷はるひ
自他共に認める「節操なしの遊び人」な大学生・白崎克幸には、誰にも言えない聖域がある。奔放な姉が突然結婚し、そして海外転勤が決まるなり離婚した相手、大学助手の多村淑実がそれ...
恋は乱反射する。 2nd to none 〈ひけをとらない〉
05/08まで通常616円
税込 308 円 2pt商品説明
自他共に認める「節操なしの遊び人」な大学生・白崎克幸には、誰にも言えない聖域がある。奔放な姉が突然結婚し、そして海外転勤が決まるなり離婚した相手、大学助手の多村淑実がそれだった。気持ちを押し隠し、研究に没頭してしまうと食事すらまともにしなくなる淑実の世話をやき続けていた白崎だったが、またしても突然の姉の帰国を知り、無邪気に喜ぶ淑実を目の前にして、思わず襲いかかってしまうが──。 ※こちらの電子書籍については、口絵や挿絵は収録しておりません。ご了承ください
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「弟」的バランス感覚の悲哀…
2007/01/20 18:27
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
コラボ作品の三作目。前の二作で、いかにも脇役っぽい脇役でありながら、どこか思うところありげというか、思わせぶりな印象を残していた白崎が主役のお話。
前作でのなにげないセリフなどから、ちゃらんぽらんな遊び人風に見えるわりに、いろんな思いや痛みを飲み込みながら懐を深くしてきたタイプなのかなあと想像していましたが、本作で明かされる彼の過去の「痛さ」は、ちょっと想像できないたぐいのものでした。
十三歳のときに姉の婚約者である淑実に恋して以来、九年もの間、思いを殺して淑実に寄り添い、世話をし続けたりしたら、そりゃ老婆心力旺盛な若年寄タイプにもなろうというものです。やたら節操なく遊び回っているのも、本気の恋が決して叶わないと諦めている反動と思うと、いささか不甲斐ないとは思いつつも、そしてあの、正三角形のアゴ髭がいかにも胡散臭くてむさ苦しいとは思いつつも(あれと、多すぎるピアスさえなければ普通に美青年なのに…)、なんだか不憫でなりませんでした。
白崎の姉である真千帆と淑実の結婚は一年で破綻。
妻でいた間も家事などしなかった真千帆は、結局家庭を捨てて仕事を選び、美しい生活無能力者である淑実を強引に白崎に託し、マンションと慰謝料を置いて海外へ飛び去ってしまいます。
学者バカの淑実は、離婚前から、白崎が世話をしなければ自宅のなかで空腹のあまり倒れているるようなありさまで、無邪気かつ無防備に白崎を頼りながらも、彼の献身を当たり前のように受け取るばかりで、白崎の心に秘めた思いや苦しみに気づく気配もありません。
姿に似合わず根が誠実できまじめである上に、幼いころから女王のように君臨する姉に半ば調教されるようにして人格形成をしてしまった白崎には、自分を抑えて相手を守る強さはあっても、相手を傷つけることをも恐れずに自分の思いをストレートにぶつけるような若者らしい我の強さが欠けています。真千帆や淑実は、意識的にせよ無意識にせよ、白崎のそんな性格を都合よく利用しながら、結果的に九年間も彼を「家庭」で飼い殺しにし続けることで、自分たちの仕事を優先してきたわけで、彼らなりの大人の事情があったのだとはいえ、白崎サイドからお話を読んでいると、ハッピーエンドで終わるにしても、なんともすっきりしないというか、理不尽な思いが残ります。
もしも白崎が、とうとうキレて淑実に襲いかかったりすることなく、最後まで若年寄キャラのまま身を引いていたなら、淑実はどうしたのでしょう。大人ぶって白崎に反省を促して、散々にヘコませる前に、自分の長年の依存ぶりや無神経ぶりを、もう少し反省したらいいんじゃないかと、ツッコミたくなりました。
とくに海外で別の男の子供を身ごもって単身帰国してきた真千帆は、出産後も女王様的ブラコンぶりを発揮して、まず間違いなく育児などを弟に押しつけてくると思われますが、白崎のほうも、いずれは虐げられ続ける弟の地位から脱却して、何らかの主導権を姉に対して握ってもらいたいものです。