- 販売開始日: 2010/07/13
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-104521-4
スローフードな人生! -イタリアの食卓から始まる-
著者 島村菜津 (著)
「スローフード」って何だろう。それはだらだら食事をすることでもないし、金にあかせて高い食材を買うことでもない。もっと大きな「生き方」に関わる姿勢であることが、本書を読み終...
スローフードな人生! -イタリアの食卓から始まる-
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商品説明
「スローフード」って何だろう。それはだらだら食事をすることでもないし、金にあかせて高い食材を買うことでもない。もっと大きな「生き方」に関わる姿勢であることが、本書を読み終わったらわかるでしょう。スローフードな生き方に惹かれる人や食育に携わる人は基礎知識として必ず読みたい定番の一冊!
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ともに食べることは、ともに生きること
2005/11/25 20:10
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スローフードとはなんだろうか?
直感的にはファーストフードの反対語だという答えが浮かぶ。しかし、そう単純なものではないようだ。「簡単で手早い説明を否(いな)むもの、それがスローフードだ」というもってまわった解説もできそうだ。
著者の島村菜津さんも『スローフードな人生!』を出版後「ところで、スローフードって本当はどういうことなの?」という問いを突きつけられ続けているそうである。安直に解答を欲しがるのは現代人の通弊なのかもしれない。
「スローフード協会」とはなにか? という問いには具体的に答えることができる。イタリア北部の小さな町ブラを発信地とする「食」を考える運動で、いまも国際本部はブラにおかれている。2003年10月現在、45ヵ国に800の支部があり総会員数7万7870人。日本国内には32の支部と2200人の会員が存在する。まさに堂々たる NGO といえるだろう。
『スローフードな人生!』はイタリアのスローフード運動にかかわる人々との交流を中心に展開されるが、運動そのものを紹介しただけの本ではない。本書の中で描かれるのは人と人との出会いであり、人がともに生きる姿である。
本書に登場する人たち。会長カルロ・ペトリーニを始めとするスローフード協会の個性的な面々。バローロ・ワイン復興の中心となったワイン生産者。トレヴィの泉の真向かいに店を構えるパン屋の主人。ロシアの産婦人科医であるベジタリアンの女性。アグリツゥリズモ(農ある田舎の民宿)の人々。南チロル地方のかたつむり料理店の主人。アメリカ人のスローフードライター。元マルクス主義者の詩人にしてスローフード協会の長老・・・。
中でも印象的なのが、ロベルト・ヴェッリとレナート・スカルペッリという2人のイタリア男たちである。本書の彼らに関する部分はまさに圧巻というしかない。
本書のタイトルは『スローフードな人生!』。最初は「スローフード」のほうに目を引かれた。けれども後になって「人生!」のほうにより大きなウエイトがあることに気づいた。考えてみれば当たり前の話である。あるスローフード協会員のいうように「ともに食べることは、ともに生きることと同義」なのだから。
旅先で興味深い人たちと出会うことのできる島村菜津さんの「人間力」に感服。もっとも本書は一通りの取材から仕立て上げられたようなものではない。食の生産現場に何度も足を運び、ドン・カプラやレナート・スカルペッリといった一癖も二癖もある人物たちと信頼関係を築いた上に成立している。
丹念に時間をかけてつくりあげた名品ワインにも譬(たと)えられるような、上質の酔い心地を読者に味合わせてくれるスローな一冊。
かたつむりのようにスローに理解すること
2003/07/27 01:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学者は長年「方法的懐疑」に磨きをかけてきた。これに対するジャーナリストの常套手段は「方法的わからずや」(アイロニカルではない批判精神)である。目から鼻に抜ける理解力ではとりこぼしてしまうものを、腑に落ちるまで時間をかけて、たくさんの人の話を聞き、現地に赴き体験を重ねながら少しずつ、かたつむりのようにスローに理解し、素材ごと読者に伝える。
著者は、最初に訪れたイタリア北部の片田舎で、スローフード協会の副会長シルヴィオさんから「すべては関係性の問題なんだ。人と人、人と自然とのね。他者といかにコミュニケーションをとっていくのか。大地からの恵みをどうやって口まで運ぶのか。そういう根源的な関係性の問題の根底に食というものがあるんだ」ときかされる。そこからジャーナリストの旅が始まる。
ローマの反マクドナルド闘争を通じて、ファーストフードとスローフードの単純ではない関係に思い至り、イタリアワインや山羊のチーズの生産者、アグリトゥリズモ(農業と宿泊施設がひとつになった田舎の宿)の経営者に取材し、またスローフード協会が進める「味の教室」に参加し、遠くロシアの家庭やイタリアの「スロータウン」で共食(コンヴィヴィウム)の楽しさを知る。
そして最後に、「大げさな言い方をすれば、スローフードとは、口から入れる食べ物を通じて、自分と世界との関係をゆっくりと問い直すことにほかならない」とシルヴィオさんの言葉の意味を理解し、「人類の壮大な夢を託したスローライフ」の実践者たることを決意する。──小泉武夫さんが誉めている。「こんなに大切なことを書いた島村なっちゃん、偉いぞ」。