- 販売開始日: 2010/07/13
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-106421-5
魔羅節
著者 岩井志麻子 (著)
それは百年ほど前の、岡山でのこと。腐臭たちこめる茅屋に、行き場のない者たちが吹き溜まり、夜昼なくまぐわい続ける、禍々しい世界。男と女はもちろん、人とけだものから、死者と生...
魔羅節
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商品説明
それは百年ほど前の、岡山でのこと。腐臭たちこめる茅屋に、行き場のない者たちが吹き溜まり、夜昼なくまぐわい続ける、禍々しい世界。男と女はもちろん、人とけだものから、死者と生者まで、相手かまわぬ嬲り合いの果て、幻想が現実を侵食し、すべては地獄へなだれこむ――。血の巫女・岩井志麻子が、呪力を尽くして甦らせた、蕩けるほど淫靡で、痺れるほど恐ろしい、岡山土俗絵巻。
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そんな志麻子ねーさんが、私はとっても大好きです。
2004/09/29 14:38
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投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぼっけえ、きょうてえ」を読む以前から、岩井志麻子には馴染みがありました。というのも、地元テレビ局の情報番組に出演していたのですよ。底抜けに明るい志麻子ねーさんと、あの“麺通団”団長・田尾さんが、いいコンビで絶妙なトークをかましてました。
そういう志麻子ねーさんを知っていながら、敢えて言いましょう。あなたはどこへ行こうとしているの、と。志麻子節炸裂の1冊。でも、これも“事実”なのです。
岩井志麻子といえば、「ぼっけえ、きょうてえ」。ホラーというイメージが強いかもしれないけれども、私的にはホラーというより、“明治の貧しい岡山”というキーワードがすぐに浮かびます。明治だからこそ、貧しいからこそ、岡山だからこそ。時代・経済・環境がそろってこそ、生み出される物語に深みと影が増すのです。
所は岡山市、とある貧しい長屋の一室。男娼の兄は夕方になると身支度を整えて出かけていく。それを見送る妹との2人暮らし。両親が亡くなり、貧しい農村を捨ててきた2人だが、ことあるごとに思い出す歌がある…。(「魔羅節」)
表題作を含め全8作を収録した短編集なのですが、タイトルを書くのもはばかられるようなものばかり。カバー裏の一節を引用してみますが、
「血の巫女・岩井志麻子が、呪力を尽くして甦らせた、蕩けるほど淫靡で、痺れるほど恐ろしい、岡山土俗絵巻」
ここで注目したいのは、“呪力を尽くして”というところではなく(笑・てか、志麻子ねーさんならありうる)。“甦らせた”という部分ですね。
幕末から明治初頭にかけて、それこそ怒濤のような時代の流れに乗って、というか、乗れた人はそれはいい生活をしてるんでしょうね。大半の人は、その流れに身を任せるだけだったのだろうと思われます。なすがまま。どうにかなってみないと分からない、というのが正直な気持ちでしょう。しかしながら、乗ることもできず、身を任せることもできなかった人たちはどうなったでしょう。取り残され、誰にも省みられず、きっとずっとそのまま、蚊帳の外に置かれたのではないだろうか、と。
そこで何があったかなんて、歴史の表舞台には出てこないんです。それを、呪力で(笑)甦らせたんですね、この人は。ちょっと呪いのパワー強すぎですが。どんなに卑猥なタイトルだろうと、どんなにエロくてグロかろうが、私は岩井志麻子の描くこの手の話に惹かれます。それがいつもの、四畳半一間、主人公3人のストーリーであったとしても。いや、だからこそ、好きです。
「紫微の乱読部屋」