ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界
著者 阿部謹也 (著)
《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こった、ある事件の背後の隠された謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明していく...
ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界
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商品説明
《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こった、ある事件の背後の隠された謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明していく。これまでの歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の「差別」の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立する契機となった記念碑的作品。
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探偵小説よりも探偵的な歴史の本
2006/11/11 07:53
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
童話や音楽で有名な「ハーメルンの笛吹き」は歴史上の実際に発生した事件であったことを解き明かす快著。
阿部謹也は ある意味で日本人には「遠い」西洋史学を 魅力的な語り口で日本に紹介した 実に巧妙な「語り部」であると思っている。その「語り」の中でも 本書は まさに白眉
である。
ハーメルンで大量の子供達が行方不明になったという史実を 様々な文献で解き明かしていく本書は 一種の探偵小説の趣すら湛えており 西洋史の知識素養がなくても 実にスリリングに読める点が 素晴らしい。
探偵小説とは違い 結局「これだ!」という真相は解明されないが それでも 読み終わった際の読後感は十分なものがあった。
民衆伝説とは一体何か
2019/11/20 22:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
全く知らない書籍だったが、書評で取り上げられていたため思いがけず手に取ることになった一冊である。
30年以上前の発行にもかかわらず着実に版を重ねていることをみても、そのテーマや切り口が普遍的なものである証拠だろう。
民衆の中から発生した伝説は、彼らを取り巻く当時の社会的・文化的・政治的側面を切り離しては検証できないとしているところは、本当にその通りだと思う。
伝説研究は実際に起きた事件がもとになっているにしても、現代の犯罪捜査の手法では解き明かせないのだ。グリム兄弟によって全世界に広まった(当然それ以前にもヨーロッパではかなり知られていたらしいが)この伝説を、そのストーリーがいかにありえない状況下で起こったものであっても単純な作り話としてはならず、それが発生した当時の庶民の生活心情に着目し、さらに伝説が発展していく過程で各時代の庶民がその当時を振り返りながら現在の自分たちの置かれた状況をどう感じていたかという視点を抜きにしては語れない。
コンパクトにまとまっていながら、遠い13世紀のドイツの都市庶民をズームで見せてくれた功績は大きい。
しかし疑問点も多々あって、その一つが当時のネズミ退治のノウハウが流れ者のよくわからない技術(笛やある種の薬品)に頼っていた点である。誰でも考え付きそうな、そう『ネコ』はなぜ利用されていなかったのか?中世、猫は悪魔の使いなどと言われていたようだが、そのことと関係しているのだろうか?このようにハーメルン伝説は私のょうな素人の心さえ捉えて離さない魅力を持っているのだ。不思議な伝説である。
1988年初版・ドイツの歴史もよく分かりました
2020/02/06 17:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
伝説「ハーメルンの笛吹き男」の解明はもちろん、ドイツの歴史についても詳しく学べる、お得な1冊でした。ページ数は多いですが、読みごたえがありました。昔のドイツを描いた絵や、ドイツの地図が入っており、文章だけの中身にならず、読みやすく文庫に仕上がっています。
1988年初版と、かなり古い本ですが、2020年に読んでも遜色ない内容です。
伝説を下に社会背景を探る
2019/10/07 22:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
笛吹きの男に130人の子どもがさらわれたという伝説について、西洋中世史の専門家が取り組んだ本。謎解き的な興味に誘われて買ってみたが、この本はそれよりも当時の社会背景や、謎に関する説の問題点を指摘するなど、謎解き以上の価値を持っている。歴史家は単なる謎解きにのみ囚われてはいけないというのは、呉座先生が『陰謀の日本中世史』でいっていた通り。
ハーメルンの笛吹き男ーその成立に迫る
2019/05/21 23:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:undecane - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆さんおなじみ、ハーメルンの笛吹き男。
この話には大きく分けて二つの部分が存在する。
一つは子どもたちの連れ去り事件。
もう一つは鼠の大量発生とその除去。
前者についてはかなりの部分が謎に包まれていて、
13世紀の事件当時の記録について、さまざまな仮説について検証している。
特に一般市民の生活や心理状態などに関しても考察している点は、
事実だけによる歴史解釈とは異なることもあるので、大変興味深い。
珠玉の一作
帯に偽りなし(と思う)
2024/03/28 12:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:.ばっは - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前より書店平積みで目立つ帯
「伝説化した実在未解決事件の謎を解く歴史学の名著」
は気になっていた。
1976年出版1988年文庫化で版を重ねているという事は
何かきっと魅力があるに違いない。
読みたい感が強まり先ずは図書館で借りて読んでみた。
これは座右としたい。
多分グリム童話で知った事だと思うが「子供130人行方不明」は
1284年6月26日に起こった史実だった。
25も様々な説が出るも未だ真相はわからない。
更に事実が尾ひれの付いた伝説になる過程は興味深いものだった。
クラオタな私は古楽好きで専ら後期バロックが好みだが
時代を知るうえでもこの本は面白かった。街の地図まで付いているし
ドイツ贔屓なのでハーメルンにも是非行ってみたい。
民衆史社会史の傑作
2023/05/28 13:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
グリムなどを通じて多くの人が知っている「 ハーメルンの笛吹き男」、これが実際の出来事が基になっているのはほぼ確実である。この伝説がいかに生まれ、また変化していったのか。五十年近く前のものなので古びているところもあろうが、本書は依然として民衆史や社会史の傑作として読み継がれていくだろう。
コロナと比較
2023/04/02 11:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しゅうろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
p250に、バッタや動物による虫の被害に対しての取り組みで、
「このように民衆が蒙った被害に対して、教会は民衆の伝統的な慣習をとり入れ、『動物の外から守る祈り』の儀式をつくりあげてきた」とある。それも何百年も昔から近年まで。
これと、昨今の「コロナ対策にマスク」は、似ているなと思い、と何十年後には揶揄されるのか?と考えさせられた。
ハーメルンの笛吹き男はメルヘンなんかじゃない
2020/01/30 23:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kittihei - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほとんど誰もが知っている話だろう。たまたま新聞の書評欄で「ハーメルンの笛吹き男」の文字を目にして、懐かしい気持ちになった。
私の知っている『ハーメルンの笛吹き男』は、おそらくグリム童話版だ。ネズミ捕りの報酬の支払いを拒絶された笛吹き男の復讐劇。だが、ハッピーエンディングの記憶はない。読後の爽快感はなく、やるせない気持ちになったのを覚えている。子供たちがいなくなった後の残された人々の悲しみのせいからか。
書評欄に掲載されていたのは、昔読んだ童話ではなかった。中世の歴史書だった。なんでも、1970年代に書かれた本が今売れているという。本当なのか。確かめるべく、書店に出向く。まず、この本が実際に置かれているかを確認するのだ。
ある。しかも複数冊。帯の煽り文句もすごい。「伝説化した実在未解決事件の謎を解く歴史学の名著」とある。なんだか気になる。パラ見してみると、歴史書なのに読みやすい。文庫だし、というわけで、まんまと購入。
ページを開くと、ハーメルン市のみならず、中世ヨーロッパの世界が目の前に展開していく。主役は貧民層。読書体力が持つか心配なくらいの暗い展開の連続。読破できるのか、私。
毎朝の通勤電車で読むこと一週間。読後の「読み切ったぜ!」感がもの凄い一冊。
巻末の「解説」にレビューが書ききってある
2020/10/03 10:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
石牟礼道子が解説を執筆しており、これが余すところなく物語っている。この解説を味わうために本編を読む価値も十分にある。
民衆の生活のあり方を重心に謎解きを進めていく手法が鮮やか。