ある秘書官の死
著者 梶山季之 (著)
伊豆山中の別荘で内閣官房秘書官の死体が発見された。警察当局は自殺と断定。だが、新聞記者・轟は事件の背後に、憲民党総裁選の資金調達をめぐる暗躍者の存在を見つけた! 政界の最...
ある秘書官の死
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商品説明
伊豆山中の別荘で内閣官房秘書官の死体が発見された。警察当局は自殺と断定。だが、新聞記者・轟は事件の背後に、憲民党総裁選の資金調達をめぐる暗躍者の存在を見つけた! 政界の最も黒い部分にメスをふるった表題作の他、皇太子妃の取材合戦を赤裸々に描いた「スクープの内幕」など、事件を追う記者の姿を活写する全七作!
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トップ屋ブルース
2015/06/07 16:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて週刊誌のトップ屋と呼ばれるルポライターとして活躍していた梶山季之が、事件を取材して記事にする記者達の視点で書いた小説を集めたもの。
ある政治家秘書官の死を追って、真相に辿り着くとともに、さらなる悲劇の連鎖を目にする新聞記者「ある秘書官の死」。
発刊したばかりの週刊誌が、皇太子妃決定をスクープする顛末「スクープの内幕」は、現実の同じスクープをものにしたの作者の経験を虚構化したものだろう。
銀行の不祥事についてのスクープを掴んで、やっとのことで真相に辿り着くが、記事にすることに対する政治的圧力も同時にあらわになる「銀行から消えた」。
詐欺まがいの商法で多くの企業を倒産に追い込んでいく男を調べている雑誌記者は、やがて本当の悪がどこにあるのかわからなくなっていく「青の執行人」。
新聞の苦情係担当記者が、デパートへの厭がらせ投書の背後にある犯罪を嗅ぎ付けるが、その時には犯人は金を手にしてどこかへ去っていった後だった「一匹狼」。
新聞記者がスクープした交通事故事件、その真相を記事にしたことで、新たな不幸を生むことになる「第二の犠牲者」。
小さな三面記事にひっかかって調査をしていた雑誌記者が、政治家のスキャンダルと平凡な市民の悲劇に突き当たってしまう「遺書のある風景」。
流行作家となる以前から、人気絶頂期までの10数年の間に、これら記者の内幕を描く作品は書き継がれてきた。記事に書けないことを小説で書くとうそぶいていた梶山の本領でもあろうし、しかしただの暴露小説ではない、記事として公表できなかった事情、記事にしてしまった後悔、その時々の記者の無念さや慚愧の心象を、事件の社会的背景や巨きな力に押し潰される庶民の悲哀まで含めて、ここに凝縮されている。
これも自身で語ったように、素材をぶつ切りにしたような、直截的な文体ではあるが、それだけに膨大な情報が短い中に詰め込まれた、まさに情報小説と言いたい作品だ。事件の被害者の悲しみ、社会悪への怒り、それらを見つめる事件記者ブルースとでも言いたくなるような苦い感傷。高度成長期に必要とされた、まったく新しいジャーナリズムの勃興を生み、そして報道によって世論を生み、実際に社会を変えていった経験を持つ作者ならではの実感と、現場にいた者でなければ分からないディティールに埋め尽くされて、その情報の奔流に圧倒される。犯罪も、醜聞も、社会矛盾も、その目でつぶさに見てきた。その記者自身も俗物であるし、出版界の内情も利益再優先で、快刀乱麻の解決にはほど遠い。
華麗な経歴を持っている作者でも、様々な忸怩たる思いを、ずっと秘めていたのかもしれない。そんなマスメディアの構造が改善されたという話も聞いたことはないので、記者達の無念も報道の矛盾も、現在でも変わらず維持されているのだろうと思う。