- 販売開始日: 2010/07/02
- 出版社: 中央公論新社
- ISBN:978-4-12-501008-3
ドラゴンキラー売ります
著者紹介
海原育人 (著)
- 略歴
- 1980年福岡生まれ。
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作品設定がユニークで面白い。
2011/02/21 12:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
海原育人著の第3回C★NOVELS大賞特別賞受賞作。
著者にとっては本作シリーズがプロデビュー作品となる。
作品は、架空世界を舞台としたファンタジー小説。
いわゆる剣と魔法のファンタジーではなく、近代の文明水準に近い世界の描かれ方をしている。
世界には固い鱗と鋭い牙を持つ害獣「ドラゴン」が存在しており、そのドラゴンを退治するスペシャリストとして「ドラゴンキラー」と呼ばれる人種が存在している。
このドラゴンとドラゴンキラーの設定が本作のユニークであり、ドラゴンキラーとは元々はただの人間である。
そのただの人間が、ドラゴンの肉を食らうことで一定確率により、害獣ドラゴンを打ち破るドラゴンキラーへと変質を遂げるのだ。
主人公のココはニヒルな元軍人であり、軍人時代に負ったドラゴンに対するトラウマを抱えながら現在は「何でも屋」として表・裏の仕事を請け負っている。
物語は亡命しようと図る某国の姫君とその護衛であるドラゴンキラーの女と、主人公とが出会うところから動き出す。
1巻においては、主人公が姫と護衛と共に共闘する姿が描かれており、続巻においては、次々と寄せてくる姫の追っ手と戦いを繰り広げる内容となっている。
本作において特徴的な点は、物語の語り口と構成である。
一国の姫を護る、と聞けば王道のヒロイックファンタジーの様式美であるところを、ダーティーヒーローである本作主人公によってはその様式は成り立っておらず、あろうことか姫を相手側に売り渡すような非道ぶりさえ、作中では見せている。決断を下すまでのスピード感が滑稽ですらあり、躊躇いなく己の考えに突き進む主人公は、ある意味で男らしい。
ただし、ダーティな側面を見せつつも、最終的には主人公らしさを発揮し体を張らせて物語を締めている辺りは、著者の筆の上手さだろう。
これで姫を売り渡したままで物語が終わっては、まともに話が成立しないといえばそうなるが、本作の主人公は「そのまま終わらせることも厭わない様なキャラクター設定」なので、読み進めると途中ドキリとさせられる。
関連して、昨今のファンタジー小説では、主題はどうあれ、必ずどこかでラブロマンスを盛り込むという構成が圧倒的に多いが、本作はそういった世の流れを踏まえつつも、敢えて斜に構えた構成を立てており、シリーズ最終巻である3巻に至るまで真っ当なラブストーリーは成立していないことが、実にひねくれていて面白い。
当初より全3巻程度を予定したらしく、1巻2巻で伏線を張り、3巻で回収という流れは順当な構成だろう。
また、全体的に物語が小規模なことが、結果的には作品にとって良い方向へと作用している。
姫が亡命を図ったそもそもの理由を見てみると、作品自体も自然と大きくなるはずが、上手く話をまとめて、あくまで主人公周辺の物語に収めているところも面白い。
読者によって判断が分かれる点でもあろうが、話の風呂敷を広げすぎて、無駄に巻数を重ね陰謀めいた話を展開されるよりは、よほどスムーズに読めて良い。
そして、本作の最大の見所は、意外かも知れないが、物語自体よりも世界設定にあると言える。
書評の冒頭で、ドラゴンとドラゴンキラーにかかる基本設定を示したが、ドラゴンキラーになるためにドラゴンの肉を食するという行為は、大変にリスクの高い行為であることが作中では描かれている。
端的に言うと、ドラゴンの肉は猛毒であり、その猛毒に対して先天的耐性を持つごく少数の人間だけが結果的にドラゴンキラーに変貌する(見た目にはそれほどの変化はないが)という設定である。
耐性の有無を確認する方法は、唯一、「実際に食べてみる」ことだけであり、人間として死ぬかドラゴンキラーとして生き残るかという、究極の選択となっている。
貧しさ故、或いは最強の称号を求めてドラゴンの肉を喰らい、低確率を乗り越え生き延びた人間たちが、ドラゴンキラーとして活躍するというのは、その強靭な肉体による迫力あるバトルシーンを楽しんで読むことが出来るその一方で、少し物悲しさを感じる点だ。
それは、現実社会においても、貧しさゆえに自らの肉体を犠牲にして生計を立てるという実例が存在しているためであり、実のところ著者の狙いがどうあれ、そういった実社会の悲劇が頭をよぎる。
また、シリーズ全体を概観してみると「害獣であるドラゴンは一体どのように繁殖するのか」という点が、重要ファクターとして物語の中枢に食い込んでおり、1巻から伏線が張られている。
ドラゴンキラーという設定とも深く隣接しているので、それを踏まえて読んでみると各巻の結びで、思わず「なるほど」という声が挙がるだろう。
世界設定を上手く活かしているというのが、作品の面白さに関わる共通項だ。
他のファンタジー小説と異なり、虚無的な語り口で物語が進むので、王道展開を意識して読むと、恐らくかなりの確率で予想を裏切られるストーリー仕立てになっている。
その点が、好みに合うかどうかだけが唯一の分水嶺となるように思う。
私個人は、主人公が他の作品にはない立ち位置にあったので序盤から面白く読めたし、また、上述の通り世界設定がシンプルながらも凝った内容であるので、それだけですんなり入り込めた。
読者によっては、話がやや淡白と受け止める向きもあるだろうが、こればかりは著者の個性なので、その点に嫌気してしまうのであれば、本作シリーズを手にしない方が良いだろう。
1巻から最終巻まではほぼ同一のテイストで物語が展開しているので、1巻を読み終えて、読み応えを感じない人には2巻以降はお勧めできないことになる。
評するに、本作はファンタジー小説の邪道である。邪道の主人公が辛うじて王道ストーリーを歩もうとしている物語である。
王道作品に飽きが来ている人には特にお勧めの作品。王道以外を好まない人は敬遠すべき作品だ。
ドラゴンキラーという設定に興味を抱いた人は、一度手にとってはいかがだろうか。好みはどうあれ、読み応えは十分にある。
描ききれていない物語
2007/12/21 13:59
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
案の定ドラゴンキラーの大売出し、パワーバランスも厳しいライン
敵味方あわせてキャラクターが描ききれていない感じで、どうでもいい描写が多い
ストーリーはありがちな展開を覆すココらしい無駄に薄汚れたやり口で、どうせならもっとエグい描写もほしかった
薄汚い割りに綺麗な終わり方なのが良くもあり悪くもあり
シリーズ完結巻
2018/11/30 23:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:沢田 - この投稿者のレビュー一覧を見る
再び皇位継承騒ぎが起こって帝国のドラゴンキラーと戦うことに。
巻を追うごとにココが甘くなってきて、最後はダダ甘お父さんになっちゃったなw
リリィとの関係も落ち着いたし綺麗にまとまった感じでした。