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これから読むんだけど、登録が20人ちょっとだけ・・・・
これだけ原発問題が火を噴いているのに・・・・
日本の原発政策に異議を唱えている人って、バリバリ左翼が主体なんだよねえ。もっと、穏健な、健全な反対派がいてもいいのに。
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2011-02-08第一刷。著者の脱原発の立場を日本の原子力発電事業の国策民営によるゆがみと経済的なコスト分析の立場から展開する。グローバルに見て、”1980年代末より…原子力産業は構造不況産業と化した” こと、"原子力発電拡大に熱心な国ほど、温室ガス効果ガス削減の達成度が悪い傾向がある” という指摘は興味深いが、説得力を持って語るためにはもう少し突っ込んだ分析とデータの提示が必要だろう。全体に表・グラフがもう少し欲しいがブックレットのスタイルの限界か。同じテーマで新書を著して欲しい。p29 に「二刷にあたって」という囲みが追加され、東日本大震災と福島原発震災の「同時多発原発事故」についてのコメントがあるが、本ブックレットでは脱原発の舌鋒を少し鈍らせたことを後悔する著者が見える。
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吉岡さんは、原子力委員会の委員を務めたこともあって、原発と共存していこうという人だ。それは、「世の中に絶対悪として無条件に否定できるものはない」もし、そうしてしまうと、原発推進派と議論の余地がなくなってしまうという。ここからは原発の危険性、問題点を克服しつつ原発と共存していこうという姿勢が伺える。「実質的に脱原発論者に近い」とも言っている。しかし、あの福島の原発震災が起きてからは、「共存すること」の難しさを認識し、脱原発に、より大きく舵をとろうとしているかのようだ。(第2章に2刷に際し、付記がある)どちらにせよ、本書は、現在の原発が置かれている現状に対する分析と多くの問題提起にあふれている。反原発の本はそれなりに刺激的だが、本書のように、原発と共存を計りたいと願ってきた人の書は、また別の意味で啓発される。第1章はそうした筆者の気持ちのゆれを語った部分である。第2章は長期停滞を続ける世界の原発の現況と原発ルネッサンスが必ずしも復活していないことを述べる。こういう情報はとても大切だ。第3章は日本の原発の現状分析で、日本でも原発は低成長であることを指摘する。問題が多すぎるのである。第4章はいわば「国策民営」の原発を早く独り立ちさせ、電力の自由化を進めるべきだと言う。この章でもっとも重要なのは、日本の政府がなぜ原発にこだわるかが書かれていることだ。それは、「日本は核武装を差し控えるが、核武装のための技術的、産業的な潜在力を保持」し、それを日本の安全保障の主要な一環とするという立場をとっているからである。「国家安全保障のための原子力」「原子力は国家なり」なのである。だからこそ、政府の立場からすれば、簡単に脱原発に転換できないわけである。
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流石に偏りすぎているんじゃないか?
議論すべき課題を棚にあげての論調は実証性が低いのでは?
あと電力会社よりも国家に対して批判の目を向けているように感じた。
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企画コーナー「今、原発を考える時」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。
貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/5/23-7/31】
湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1592869
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【東日本大震災関連・その④】
(2011.05.26読了)(2011.05.25借入)
東日本大震災で福島原子力発電所が被災し、4つの原子炉を安定状態に持って行くための懸命の努力が行われています。放射性物質が、空気中及び海水中に放出され、周辺住民は、離れた場所への避難生活を強いられています。
放射性物質に汚染された野菜や魚は、出荷停止となっています。一時、東京都の水道水も放射性ヨウ素の濃度が高くなったため乳幼児への摂取制限措置が取られました。
あまり考えたくはないのですが、放射性物質が大量に放出される事態が出来すれば、東京も安全とはいえなくなるのでしょうか?(週刊誌でも読めば書いてあるのかも)
この本が出版されたのは、2011年2月ですので、東日本大震災の前です。日本の原子力発電計画が、どう進められようとしていたのかがわかります。今度の福島原発の被災による事態を踏まえて、見直されることになるのでしょうか。(連合の電機労連は、原発推進だとか)
原子力発電は、CO₂を排出しないので、地球にやさしく、温暖化対策にもなるというのが、錦の御旗でした。鳩山さんが発表したCO₂の25%削減も原発推進が前提になっているのでしょう。原発を廃止の方向に持っていこうとすると温暖化対策も大幅な見直しが必要になるのでしょう。
章立ては以下の通りです。
Ⅰ、原子力論争における冷戦時代の終焉
Ⅱ、停滞する世界の原子力発電
Ⅲ、難航する日本の原子力発電
Ⅳ、日本の原子力政策の不条理
Ⅴ、原子力発電と地球温暖化
●原子力発電の特徴(5頁)
原子力発電は燃焼(強い光を発する酸化反応)によって熱エネルギーを生み出さないので、発電過程で硫黄酸化物・窒素酸化物・二酸化炭素などを生じない。しかし原子力発電はその代わりに大量の放射性物質を生み出す。それが事故や自然災害により大量放出される危険は無視できないし、破壊工作や武力攻撃などによって大量の放射性物質が飛散する危険もある。それと並ぶ原子力発電の難点は、核技術の軍事転用やテロリズム・犯罪目的への利用である。
●経済的競争力(7頁)
日本の政府・電力会社は原子力発電が火力発電・水力発電などと比べて経済的に優れていると主張しているが、巨額の資金が政府によって支出されている。もし原子力発電の経済性が優れているならば、政府が支援する根拠が無くなる。
●条件付き反対(13頁)
自然災害回避や環境保護の観点から反対する論者がいる。地震災害の予想される中部電力浜岡原子力発電所、中越沖地震で大きな損傷を受けた東京電力柏崎刈羽原子力発電所、生物多様性保護の観点から重大な難点を抱える中国電力上関原子力発電所(計画中)などである。
●世界の原子力発電(14頁)
2010年1月1日現在の、世界の発電用原子炉総基数は432基で、1年前と変わっていない。国別にみるとアメリカ104基、フランス58基、日本54基、ロシア27基、ドイツ17基、の5カ国が2000万キロワット以上の設備容量を擁する。建設中の基数が多いのは中国26基、ロシア10基、インド6基、韓国6基、日本3基などであり、アジア諸国が大半を占める。
●原発の経済的弱点(30頁)
1、インフラストラクチャー・コストが高くつく。
2、発電用原子炉の建設コストが高騰している。
3、核燃料事業を含めた原子力発電システム全体としての最終的なコストが不確実だ。
4、原発は、火力発電よりも高い経営リスクを有する。
●日本の原発(34頁)
各電力会社の保有する原発の基数は、東京電力17基、関西電力11基、九州電力6基、東北電力4基。中部電力、北海道電力、四国電力、日本原子力、各3基。中国電力、北陸電力、各2基。
●国家安全保障のための原子力(43頁)
日本は核武装を差し控えるが、核武装のための技術的・産業的な潜在力を保持する方針をとり、それを日本の安全保障政策の主要な一環とする。それによって核兵器の保持を安全保障政策の基本に据えるアメリカと、日本の両国の軍事的同盟の安定性が担保されている。
(核武装がいつでもできるようにしておくために原発を推進しているとは知りませんでした。)
●国策民営(44頁)
原子力発電事業を中心的に担ってきたのは電力業界をはじめとする民間企業であるが、民間企業は国家政策に服従し、国家政策と矛盾しない範囲内でのみ自由裁量の余地が与えられる。民間事業が国策協力という形で進められる以上、それに関する経営責任を民間業者が負わねばならぬ理由はなく、損失やリスクは基本的に政府が肩代わりすべきだという考え方である。
●エネルギー基本計画(51頁)
2010年6月8日、エネルギー基本計画が改定された。そこには20年までに発電用原子炉を9基新増設し、30年までに14基(つまり追加で5基)新増設する目標が示されている。20年に設備利用率85%、30年に設備利用率90%、という高い目標が設定されている。核燃料再処理・高速増殖炉についても推進すべきとの方針が再確認されている。
☆関連図書(既読)
「私たちにとって原子力は・・・」むつ市奥内小学校二股分校、朔人社、1975.08.03
「原子力戦争」田原総一朗著、筑摩書房、1976.07.25
「日本の原発地帯」鎌田慧著、潮出版社、1982.04.01
「六ケ所村の記録 上」鎌田慧著、岩波書店、1991.03.28
「六ケ所村の記録 下」鎌田慧著、岩波書店、1991.04.26
「原子力神話からの解放」高木仁三郎著、光文社、2000.08.30
「原発事故はなぜくりかえすのか」高木仁三郎著、岩波新書、2000.12.20
「原発列島を行く」鎌田慧著、集英社新書、2001.11.21
「朽ちていった命」岩本裕著、新潮文庫、2006.10.01
(2011年5月30日・記)
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原発を語る際の論点は一通り提示されており、基本的な導入としては妥当だろう。
なお、著者の基本的な視点は、経済合理性を軸とすれば、原発は自然と淘汰・整理されていくというものである。
行き過ぎた自由主義も問題だが、古典的な独占もまた問題であるということが、原子力発電の事例からは理解できるのではないか。
それと、「原子力発電」ではなく、本来は「核発電」と呼ぶという点は、意外と忘れていた事実だった。
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60ページ程度の薄いブックレットであるが、非常に内容の濃い素晴らしい本でした。
著者の吉岡斉九州大学副学長は現在あまりメディアには出ていないと思うけど、もっと注目すべき学者であると思います。
最近、反原発のカリスマと呼ばれ注目され始めている高木仁三郎氏などとも一緒に活動していたようです。
吉岡氏の基本スタンスは、まず中立的枠組みをとりあえず立てておいて、客観的事実の積み重ねをして必然的な結論に導く、というものである。小出氏などは急進的脱原発論者だろうと思われるが、吉岡氏は自らを無条件反原発論者ではないとし、その理由として、それでは原発推進者と議論にならないからだとする。
この視点は重要。
この本は、原発の危険性などはあまり重要なテーマではない。経済性、政策上の不条理などを緻密に指摘していく。
政策による保護を取っ払ったあるがままの状況においては、原発は経済的に淘汰されるものであるというのが結論である。
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日本の原子力発電の発展、その裏側がよくわかった。ブックレットなので読みやすく、「反原発」と「原発推進」という2極的な考えの片方という論点ではなく、きわめて客観的に書かれていた。
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たまたま3.11直前に書かれた小冊子で、最新の世界の原発事情が客観的に整理されていて資料としての価値がある。
今更ながら日本のマスコミ報道を鵜呑みにするのは危険であることを再認識。反原発か推進かの極論か感情論ばかりで、原発問題の解決の本道からそれている(そらされている?)気がする。
○先日ドイツが2022年までに全原発廃止を決定したが、元々2002年に決定された既定路線であること。
○欧米での原発新設は、殆どは70年代の古いものの入れ替えに過ぎず、原発産業は成熟産業(むしろ斜陽)であること。
○米国で30年以上も新設はない最大の理由は「電力自由化」による競争の結果であること。
○原発が安価で安定したエネルギーでありCO2削減にも効果があるというのも疑問で、むしろ火力発電の設備最新化(石炭をガスにするなど)のほうがはるかに安価で効果があること。
○日本では政府により強引に、原発~再処理サークルを作り上げてきた理由は、安全保障上の理由もあること(つまり「3日で核を作れる」状態を保つこと)
いずれにせよ「脱原発」の根本施策は「電力自由化」なんだなーと再認識した次第です。
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原発にまったく経済合理性がないことを明快に説明する。「原発反対」の立場から出発していないので、反対派の議論には懐疑的な人々にとっても受け入れやすい議論であろう。
しかし、実は本書でもっとも重要な部分は、なぜ経済合理性がないにも関わらず、原発が国策として推進されてきたのかを説明した「国家安全保障のための原子力の公理」に関する章だ。非合理的なエネルギー政策の奥には、さらに非合理的な核兵器開発への欲望を隠し持つ安全保障政策がある。それらは決して公に論じられてはならないという日本の公理ならぬ病理に対し、経済合理性の議論だけで挑戦できるのかとも思うが、原発政策を論じるうえで最低限共有されるべき論点を示している。
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最近の原子力発電をめぐる情勢(3・11以前)についてよくわかる。書いているのは、一応脱原発路線を主張しているが、自身、内閣府原子力委員会専門委員や経産省総合資源エネルギー調査会臨時委員などを歴任され、科学技術が専門の九大副学長の吉岡斉氏である。そんな方なのに原発の危険性、不経済性から早急に脱原発の道を進むべきという主張には共感できる。原発推進をしている国は、京都議定書を全然守れず、二酸化炭素排出が多かったり、増やしていたり(アメリカ、日本、フランス)反対に脱原発路線の国(ドイツ、スウェーデン、イギリス)は京都議定書よりも二酸化炭素の排出削減に成功しているなんて記述も興味深い。原子力ルネサンスは虚構だし、東電の原発事故後のことを考えれば、原子力は過去のものになることはもはや明白である。その前に私たちには放射能汚染のこの難局をどう乗り切るかがあるけどね。
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議論の種としてすごく良い本。これをベースにしてディベートをしたらよい議論になりそう。
武田徹さんの私たちはこうして「原発大国」を選んだ、では原子力に関する文化史個人史に重きを置いていたんですが、吉岡斉さんの本書は国内国外の政治史がメインとなっています。
序章において、原子力の拡大が日本の経済社会にとって有害である、と立場をきっぱりと明言し、それに対して自説やデータを滔々と述べるスタイルはすごく説得力がありました。さすが九大副学長。
結論に疑問が残る部分はいくつもあるんですけど(揚水発電の負担とか温室効果ガス削減のロジックとかベトナム受注とか)、総じて見れば今後を考え直すいい本でした。原子力ルネッサンスの失敗と、電力自由化により生じたゆらぎの部分は特に見ごたえありました。
裏付けがあるようでいて主観的な記述が随所に見られるので、最初の1冊としては適してないかなあと思いました。
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2011年2月発行の岩波ブックレット。
今後、刊行される書籍・雑誌はヒステリックにならざるを得ないが、この書籍は震災前の刊行なので、その点で安心して読める上、震災以前の原発論しては最新(級)である。
ページも非常に少なく、内容も平易である。
また、「反原発」の著書が多い中、「脱原発」(もう造ったものは仕方がないから、新しい原発を作らないことで、老朽化による使用終了によって時間をかけて原発脱却すること)に近い意見であるため、極端な内容の偏りもない。
さらに、原子力発電所を保有・研究していることが、日本が核関連技術を保有・研究する唯一の根拠であり、その放棄は、安全保障や日米関係に影響するなどとしている。
一方、原子力発電は、「国策民営」事業であり、その癒着構造を批判している。
そして、原発建設を、今後は完全に市場原理に委ね、電力会社が独立して行うべきだとしている。ここは意見の分かれるところだろう。
もちろん、著者は原発のリスク・コストを考えれば、これ以上、電力会社が推進することはないという立場なのだが。
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わずか70ページ足らずだけど、むちゃくちゃ興味深いことが書かれている。世界的に見て原子力発電の規模が縮小しているのは、新自由主義的な経済政策と電力事業が相容れないためであるからとか、それに抗うために日本の原子力関係のステークホルダーと政府が行ったこと(要は、電力事業を市場原理にさらさないこと)など・・・。なんだかこの原子力政策というのは、どこか日本のメディア業界と似ているような既視感を少し覚えた。
各国の簡単な原子力政策の現状も書いてあるし、「脱原発」と「反原発」の違いなど本当に基本的なところから論旨も明快になっている。
とにかく、この本は絶対に読んだ方がいい。目から鱗。値段も500円だし、原子力政策を考えるための最良な入門書。引続き同著者の『原子力の社会史』を。