核武装についての勇気ある提言
2011/09/19 14:59
14人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の大震災を日本国民に対する天罰と呼び、物議をかもし出した東京都の石原知事の本音が今明かされる。それにしても、この人くらい何を言っても政治的な責任を取らされることのない人間もないのではないか。先ごろある大臣は、福島第1原発周辺の町を訪れありのままの情景を述べただけで、非難を受け、何の抗弁もすることなく自ら職を辞した。一方、この石原慎太郎という男は、これまでもさまざまな放言でマスコミから叩かれつつも、一度もそのために職を解かれることなく都政を担い、現在知事4期目にある。政治家にとってバッシングをものともしない強い意志がいかに大切かを示す好例である。
本書の第一章は、政治外交に関する示唆に富んだ提言にあふれている。(それに比べ、第二章は日本人の精神の廃頽をばっさり斬るというものだが、自らの価値観をおしつけている印象が強く、さしたる重要性を感じなかった。)自身が関わった政治交渉の裏側も紹介しながら、いかに戦後日本がアメリカという国に騙され続けてきたか、また現在日本がいかに大きな危険の中にいるのかを論じる。
たとえば、横田基地は現在実際にはほとんど使われていないにも関わらず、アメリカは日本への返還を拒んでいる。それが日本に返還され、民間機のために開放されたならば、東京の空港不足や飛行ルートの困難といった問題も一気に解決されるはずである。そのための交渉を石原は都知事になりすぐに着手したが、横田基地を「戦勝記念品」と考えるアメリカ側にはいっこうにそれを手放そうとしない。
本書中の白眉、そして最も物議をかもし出した部分はなんといっても、日本の核武装の必要性を論じた箇所であろう。曰く、「アメリカによる核の傘」という考えは幻想にすぎない。第三国からの核攻撃が起こっても、アメリカは決して助けてくれない。だから、日本も核武装をすべきである。専門家によれば、日本は数年で核兵器を製造するだけの技術力をもっているという。
広島にある原爆慰霊碑に書かれた「過ちは繰り返しません」に象徴される戦後のわれわれの自虐思想のせいで、わが国の核保有はタブーとなってしまった。しかし、事実は逆である。石原氏によれば、日本も戦時中、核兵器の開発を進めていたが、終戦直後、アメリカはその施設と研究成果をすべて破壊したらしい。つまり、もし研究がもっと早くに完成し日本が核兵器を所有していたら、アメリカは日本に原爆を落とすこともなく、何十万もの罪のない人命が奪われずにすんだということである。核保有による国家の安全は現実に存在するのである。
現代において、中国、北朝鮮、ロシアなど周辺諸国との外交は、互恵だのウィンウィンといったおめでたい言葉では済ませられないほど深刻な事態にきている。核を保持したこれらの国々と丸腰でどういう交渉ができるのだというのが石原氏の論であるが、それには大いに賛成である。アメリカがあてにならないと彼が言うのももっともである。尖閣問題、拉致問題、北方領土問題どれをとっても、これらの国々との交渉でアメリカが自国の利益を守る場合のように強い態度で日本をサポートしたことは一度もないのだから。
われわれも石原氏の考えを右翼的だとか危険思想だと一蹴するのではなく、そろそろ核の抑止力に目を向けて国防・外交を真剣に考えるべきではないか。「持たず、作らず、持ち込ませず」に「議論せず」を加えて、「非核4原則」などと言われる核に関するタブーを打ち破り、核保有の可能性について勇気をもって論じた本書は、国家の将来を憂慮するすべての日本人にとって一読に値する書である。
組み立てがやや難
2015/07/26 01:26
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投稿者:tadashikeene - この投稿者のレビュー一覧を見る
石原氏の考えが端的に分かる本、と言いたいのだが元々全く別の2つの原稿を組み合わせた構成のため重複が多く文章のスタイルもちょっと違っていて読みづらい。とりわけ後半が退屈。前半は年来の持論を展開するが紙幅の都合上論理の階段を一段抜かしで上がるので肝心な点はぐらされた印象も。
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戦後のアメリカ依存のためにもたらされた平和の毒(金銭欲、物欲、性欲といった我欲の氾濫)により日本人は人間そのものが堕落して変質してしまった。日本が復活するためには、アメリカ依存からの脱却や、個人一人一人が節約、我慢、禁欲、自己努力といった古くからある日本人の美徳を思い起こすことが肝要。
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死亡した親を弔いもせずに食い物にして暮らす家族や、新しい愛人のために自分が産んだ子供を虐待して殺す稚拙な母親…果てしない物欲、金銭欲、性欲の抑制のために今努めなければ我々はこの堕落のままに推移してそのうちどこかの属国と化し、歴史の中から国家民族として消滅しかねない。(p.121)
日本人のDNAとしての自己主張の欠落は、今日では民族的な美徳どころか、己を損なう体質でしかありはしない(p.133 平和の毒)
横田基地、尖閣諸島、核保有の外交問題や消費税アップ児童売春の内政問題に言及し、政府と国民の幼稚な現状認識をばっさり切り捨て、自我を持たない日本人に向けて、震災を契機として国の将来を見つめなおそうというメッセージが込められている。国の将来を担うのは我々若者であり、平和の毒に侵されてはいるものの、自我を持つことを放棄すれば国は滅びる。
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立ち位置が異なる人間からの異論はあろうが、著者の考えが明確に示されている。自分は石原氏の考えに賛成する。
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彼の思想、意見に賛成するか反対するかは別として、主張がわかり易く説明されていたと思う。TV等でタカ派と称される彼の意見を実際に文面通して知ることができたのは良かった。
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石原都知事が今の日本の現状に対して苦言を呈している。憲法、核武装、性風俗、増税などについて書いている。日本が末期状態であるという危機感や国の在り方については共感できる部分が多かった。
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状況が実感を伴い理解できた。普段、漠然と感じていることが、整理され頭に入る感じである。著者はタカ派、右派と考えられているが、ごぐ当たり前のことを述べているに過ぎないと思う。
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著書が伝えたいことは?
未曾有の大災害でわたしたち、日本人は、計上の及ばぬ被害の復元復興について思い計る作業に並行して、私たちは、もう一つ別の復元復興を志すことが必要である。
それは、65年前の敗戦の後今日まで続いてきた平和がもたらした、日本という国、日本人という民族の本質的な悪しき変化、堕落の克服と復興です。
それは、アメリカという間接的な支配者の元に甘んじ培われた安易な他力本願が培養した平和の毒ともいえる、いたずらな繁栄に隠された日本民族の無力化による衰退、価値観の堕落です。
福沢諭吉のことばとして、
『立国は、公にあらず。私なり。独立の心なき者、国を思うこと、深切ならず』
国が衰え傾くということは、私の、私たちの人生が衰え傾くということです。それを願わぬなら、国と表裏一体の己のためにこそ、国について想い、考えなくてはならないのです。国を変えていくためには、今自分がどう変わらなくてはならぬのかを。この国をここまで堕落させ衰えさせた自分の我欲を、どう統御し抑制し、己の人生の中で真に何を望んでいくべきかをそれぞれが、考えるべきなのです。
国家が荒廃して沈むということは、自分の人生が荒廃して沈むということに他ならない。一蓮托生というのはまさにその事です。国家があって、私があってこそ国家がある。
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保守政治家の気概と憂いが満載。思想、主義主張の如何に関わらず、日本人はここに書かれた事柄の意味を深く考えるべきでしょう。
現在の退廃を憂い、復活に向けた奮起を促す(しかし希望の光はなかなか見いだせない)という論調は、ローマ時代の歴史家タキトゥスを彷彿とさせる。
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前に読んだ「真の指導者とは」よりももっと慎太郎節が強く濃く炸裂。
前半は日本の平和ボケをこき下ろし、後半はバーチャル世界など技術革新によって失ったものを、敢えて言うと「年寄り」の視点からモノ申している。それが悪いとか古臭いとかじゃなくって、著者なりの時代経験と職業経験があるからこそここまで痛快に一刀両断出来るのだなあと思った。
文章だけ読めば何だかミもフタもないようにとれなくもないが、国を想うがゆえの遺言ともとれる一冊。言い過ぎか。
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作者は米国依存の日本の外交を、現実を知らないセンチメントな態度であると言い、日本の核保有にまで言及する。一方、人と人との関係にはセンチメントな関係を求める。小説という虚構の世界から、政治という現実の世界に転身した作者が、どう自分の中で統一性を保ってきたかという告白であると感じた。
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第1章が特に面白かった。アメリカのえげつなさがよく分かる。日本の保守って親米が殆どなんだけど、この人はそうじゃない。ある意味貴重な存在だと思った。第2章は、内容は是非はともかくとして、この人詩人だなぁって思った。
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同じような戦時・戦後体験をしてもその後の考え方って大きく違ってくるんだなと思わされる一冊。
太平洋戦争を「売られた喧嘩をやむなく買った」とし、戦時中、死を覚悟するほどの命の危険に晒されながら、日の丸のついた友軍機によって九死に一生を得たときの「ふるいつきたいような感動」が「身にしみて感じ取った国家というものの実感」であるという石原氏は、「平和というものはただ願っただけで得られるものでは決してない。(略)それは侵略に備える軍備であり、ある場合には戦争ともなる。」と述べている。
私にはこの主張の確からしさはわからないけど、「自らの遺書のつもりで書」いた、というこの一冊はその他もろもろ(青少年育成条例のこととか)、石原さんという人を理解する一助となるのではないでしょうか。
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石原氏がかつて文学者だったことがよくわかる本です。文学の素養のない私にとって、理解不能な部分は数多くあり・・ そもそも、「太陽の季節」も読んでいないので・・
日本人が堕落しているという議論は、現象面ではそうであるが、現代社会の病理だとすれば、復古的な教育や訓練を復活させたところで効果はないだろう。
石原氏はほぼ80歳で、私はほぼ50歳ということで1世代違うわけで、日本の現状について共感するところは多いが、この本が具体的なアクションプランを示しているとは全然思えない。現代の若者の問題は、若者が自分なりに解決するしか方法はないであろう。
それにしても文学者の文章は感覚的すぎてよみずらい。もっと論理構成をしっかりすべきだ。衒学的な文章もいただけない。