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密謀(上)
著者 藤沢周平 (著)
織田から豊臣へと急旋回し、やがて天下分け目の“関ケ原”へと向かう戦国末期は、いたるところに策略と陥穽が口をあけて待ちかまえていた。謙信以来の精強を誇る東国の雄・上杉で主君...
密謀(上)
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密謀 改版 上 (新潮文庫)
商品説明
織田から豊臣へと急旋回し、やがて天下分け目の“関ケ原”へと向かう戦国末期は、いたるところに策略と陥穽が口をあけて待ちかまえていた。謙信以来の精強を誇る東国の雄・上杉で主君景勝を支えるのは、二十代の若さだが、知謀の将として聞える直江兼続。本書は、兼続の慧眼と彼が擁する草(忍びの者)の暗躍を軸に、戦国の世の盛衰を活写した、興趣尽きない歴史・時代小説である。
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紙の本
上杉景勝
2020/05/14 05:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
天下を取らなかった二流の人の心情をうまく描き出した藤沢周平による上杉景勝の生き方を小説にした逸品。天下の情勢をにらんだその生き方に共感を呼ぶ。
紙の本
次のNHK大河ドラマ『天地人』と同じく直江兼続を描いた藤沢周平の歴史小説
2008/11/11 22:18
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「謙信以来の精強を誇る東国の雄・上杉で主君景勝を支えるのは、二十代の若さだが知謀の将として聞こえる直江兼続。本書は兼続の慧眼と彼が擁する草(忍びの者)の暗躍を軸に戦国の世の盛衰を活写した興趣尽きない歴史・時代小説である。」
来年のNHK大河ドラマの原作になっている火坂雅志 『天地人』を読んだ直後に友人から直江兼続なら藤沢周平も書いていると本著を紹介された。藤沢周平の作品は映画やテレビドラマではよく観ているが小説を読んだことはなかった。この作品は藤沢周平のいわゆる代表作ではないようだ。
「密謀」、このタイトルだけからは大型の歴史小説とは思えない。こじんまりとしたいかにも藤沢らしい時代小説的なタイトルである。巻末の尾崎秀樹の「解説」によればこれは歴史小説と分類されている。歴史小説と時代小説の違いは厳密に考える必要はまったくないのだが、いささかこだわる私としてもこれは歴史小説に他ならない。しかもボリュームのある大型歴史小説である。織田から豊臣へ政権が移りまた家康が関が原で三成をやぶるところまでの中央の抗争史がかなり詳しく描かれている。
火坂雅志の『天地人』を読んだばかりなのでどうしてもそれと比較してしまう。
『密謀』はこの動乱期の史実を俯瞰的に叙述してある。
『天地人』は一貫して直江兼続の視点から中央の動きを捉えている。一般的な歴史を追うには『密謀』のほうがわかりやすいといえる。
『天地人』では火坂独自の直江兼続像があって描き方はかなりアクが強いのだが、藤沢の直江は淡白である。
また火坂は上杉謙信の「義」を熱っぽく語り、現代に軸足をおいて現代人向けのメッセージをこめているのだが、本来、時代小説の名手である藤沢にその気配はまったくない。
人間ドラマとしてはユニークさにおいて『天地人』の方がインパクトは大きい。
同じ題材を取り扱った小説をこうして比較しながら読むこともなかなか面白いものだと気づいた。
「兼続は肝胆相照らす石田三成と徳川方を東西挟撃の罠に引きこむ密約をかわした。けれども実際には三成が挙兵し、世をあげて関が原決戦へと突入していく過程で、上杉勢は参戦しなかった。なぜなのか………。著者年来の歴史上の謎に解明を与えながら………。」
なるほどタイトルの「密謀」とはこれだったのか!『天地人』でもここは直江兼続の正念場になっている。
『密謀』の藤沢にはここをドラマティックに仕立てた先人として、着眼の冴えがある。
火坂はこの作品を読んでいたに違いない。先輩を超えて人間のドラマを完成させたといえよう。
紙の本
光成と兼続の密謀が家康を襲い、密謀を支える忍びたちが躍動する
2009/12/24 19:01
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
関ヶ原の戦いのきっかけとなった石田三成と直江兼続の「密謀」をテーマとした直江兼続が主人公の小説。
小牧・長久手の闘いあたりから、上杉が関ヶ原に勝利した徳川に降るまでを描いている。
「密謀」とは、佐和山城に下がっていた三成の元を兼続が訪れ、会津に帰ると軍備を整えると話し、徳川は必ず会津征伐に向かうだろうから、その隙に三成は挙兵し、徳川軍を挟撃しようというもの。
その関ヶ原の戦いのきっかけを、兼続と三成が謀ったものとして描いている。
また三成挙兵の知らせを受け西方にとって返した徳川軍を、なぜ上杉軍が追撃しなかったのかが描かれているが、解説によると藤沢氏も疑問をもっていたようで、上杉の家風を考察し藤沢氏なりの解釈として描いている。
本作での上杉の家風は一貫しており、それが物語に芯を持たせ、のちに徳川に降ることになったいきさつは十分理解できるものになっている。
そして兼続による各武将や出来事に対する考証は目新しく、兼続を通して藤沢氏の考えや思いを窺えたようで興味深く読むことができた。
全体を通して感じたのは、歴史上の流れを緻密に描きすぎて、淡々と物語が進み歴史が流れていってしまった、というもの。
藤沢氏の淡々としながらも物語に起伏を与え、登場人物たちに寄り添って物語が進んでいく作風が、歴史的出来事という縛りができてしまったため、マイナスに働いたように思う。
しかし淡々と進む物語のなかで描かれている忍びたちは、大局が描かれがちで人の存在を感じさせない戦国物に人間的な温かみを加え、物語に起伏を作り出している。
そしてラストシーンに草の者たちを描いたことで、作品を歴史的な縛りから開放しているように思えた。