淡々と作者が語るような大人の言葉使いの新訳
2006/12/02 16:02
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
砂漠で遭難した飛行機乗りと小さな星から地球にやってきた王子さまの出会い。悲しみややさしさを包み込んだような言葉は、幾つになっても心に残るものを与えてくれる。キツネに教わる「大切なものは、目に見えない」という言葉など、心に残る言葉がこの本にはたくさんある。原作の日本での著作権保護期間が2005年に満了し、いくつかの新訳が続けて出ている、良く知られているサン=テグジュペリの作品の、新訳の一つである。
この新訳では、表紙はこの「新訳文庫シリーズ」に共通する(しかし、内容も少しイメージする)新しいデザインになっているが、原版の挿絵もちゃんと著者の原版からカラーで用いられているので、文庫版は少々小型ではあるが原作の雰囲気はまあ、保たれている。あとがきに訳者が「記録に残されている、作者の太くやわらかく、楽しげであったかい声で朗読すべき本であること」を目指して訳したと書いている、有名な内藤濯訳が子供向きとすれば、大人向きの言葉使いといえようか、淡々とした語り口の文章も気持ちがいい。
上にも挙げたキツネとの出会いはとても重要な部分の一つである。ここに「自分がなつかせた相手に対して、きみはいつまでも責任がある。きみはきみのバラに責任があるんだよ・・」という言葉があるが、この「なつく」というのがどういうことなのか、と考えたりして、多分翻訳者も苦労をしたところではなかったろうか、とちょっと他の翻訳も調べてみたくなった。よい作品であるからこそ、自分の感じた通りの言葉に翻訳したい、との思いも強いだろう。こういったことが多くの新訳を生んだのだと思う。良い作品、深い作品ならでは、である。
どの訳であれ、この作品の伝えたい「大事なもの」は変わらない。しかし、違った訳で読んでみて、違ったところに気付くこともあるかもしれない。短い作品である。何度でも読んで欲しい、「昔こどもだった大人に捧げられた」本である。
★は5つにしてもよいところなのだが、右綴じ、挿絵の位置の変更などで原書の絵本的な雰囲気が減じていて残念な気がする分、申し訳ないが一つ減らした。
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投稿者:NAOKI - この投稿者のレビュー一覧を見る
あたたかさと切なさが、ぎゅっと詰まった一冊でした。 タイトルから子供向けの作品かな?と思っていたら、そんなこともない!ちいさな星からやってきた王子が、私たちに“大人達がいつの間にか忘れてしまったもの”について、語りかけてくるような。そんな小さなお話がたくさん。モノやヒト(イキモノ)、デキゴトには、それぞれにちゃんと意味があるのだけれど、ゆっくりと、深く考えたり、時間をかけて丁寧に「絆」を作らなければ、見えてこないものがあるのかもしれません。作者サン=テグジュペリ自身が描いた挿し絵もかわいいです。(≧▽≦)
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文章もだけど、絵が素敵です。ちいさな王子の言葉とまなざしに、心動かされる瞬間があれば、忘れられない一冊になるはず。
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高校生の頃、叔母さんに薦められた本。
でもその時は自分にフィットせず、途中脱落。
今回、これを手に取ったとき、叔母さんを思い出し、ペラペラとめくってみると、何となく頭の中にスラスラ入ってきそうな気がしたので、15年ぶりに再チャレンジ。
読了。
良い話でした。
キツネとの段落が一番好き。
物悲しい、ラストもまた。
そうやって人は現実の中に帰って行くんだよなぁ。
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「星の王子さま」新訳読み比べをしている。子供に対するさっぱりして温かい文体だと思った。「王子と語り合い、その笑い声を聞くことが許されるのは、飛行機が飛ばないことと引き換え」
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肩の力を抜いて、王子と一緒に星々をゆく。さまざまな性質を持った人間がいる、ということ。それはもちろん、現実社会の反映だろう。一人一人違う星のうえに生きていて、各々違う宇宙をみているものかもしれない。それが本書で端的に表現されているようだ。…もう前に読んだので記憶もぼんやりだが、ラストの描写は日本語として、ちょっと気に入らなかったように思い出す。違う訳と比べ読みしてみたい。
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今まで何回か読もうとしたけど、なぜか最後まで読めなかった本。名作と言われてるけど、こんなもんかな〜という印象でした。
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『星の王子さま』として有名な本の新訳。
登録する際検索したら他にも色々引っかかってきたので、見比べるのも面白そう。
本書に関して言えば、原題である『LE PETIT PRINCE』を素直に『ちいさな王子』と訳しているところからも原文に忠実なところがうかがえる。
訳者あとがきに、作中で語り手自身が「できるならぼくは、この話を、おとぎ話みたいにはじめてみたかった」と述べているのを受けて、おとぎ話調、童話調は採用しないとも述べており、大人にとっても読みやすい文章になっていると思う。
内容についてはいちいち触れないけれど、悲しさと暖かさが同居して何度読んでも不思議と涙があふれる作品。
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2009.09
表紙だけ見たとき、一瞬「星の王子さま」とは気付かなかった。最初のゾウを飲み込んだのはボアっていうのね。ずっとヘビだと思ってました。
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あんまりさびしいと、東ずむのが好きになるんだよ。
一生懸命やっていたって、人はだれしも、怠けたいものなんだ。
人間って、特急に乗りこんでいるくせに、自分がなにを探してくれるのかわからなくなってしまっているんだ。だからあんなに落ち着きがなくて、同じところをグルグルまわっていたりするんだね。
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新訳「星の王子さま」。一連の新訳では好きなほう。訳者は、「ムッシュー」などJ.P.トゥーサンの作品の翻訳でお馴染。光文社古典新訳文庫はホント良い作品を揃えてるなー。
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大学の授業で必要になったので購入しました。
中学の時一回挫折して、高校の時に読みきったきりご無沙汰でした。
昔読むのが苦痛だったのは、訳が古いものだったからかもしれません。この本はとても読みやすかったです。
大学生になってから読み返して、高校時に読んだ時よりもこの本の良さを感じることが出来たと思います。
あと私的にこれを児童書というのはどうかと思います。
大人向けの童話といった方がいいような。
今『人間の土地』を読もうと思っているのですが、同じ著者でもこちらは1955年に堀口大学という方が訳されたきりになっていて、旧漢字が使われています。読んだ方のレビューを読んでみると、最初のとっつきにくささえ乗り越えればとても素晴らしく思えるらしいのですが、どうにも不安です。
なんでこっちは新訳がないんでしょうか(´;ω;`)
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別名「星の王子さま」でお馴染みの名作。
いま、出会いと別れに至極敏感な時期だからなのか、
やけに感動した。
そぎ落とされ、洗練された文章で紡がれた物語が、
却って愛らしさと切なさを同時に謳う。
人は出会う。そして成長して別れる。
そこら辺に転がっているありきたりの日常が
実は奇蹟だったと気づかせてくれる。
素晴らしい作品でした。
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「『...もしきみがぼくをなつかせてくれるなら、ぼくらはお互いが必要になる。きみはぼくにとって、この世でたった一人のひとになるし、きみにとってぼくは、この世でたった一匹のキツネになるんだよ……』」 「『さよなら。じゃあ、秘密を教えてあげよう。とてもかんたんだよ。心で見なくちゃ、ものはよく見えない。大切なものは、目には見えないんだよ』」
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KiKi の子供時代、とあるコマーシャルで「大きなことはいいことだ」というフレーズが使われたことがありました。 でもその後の価値観の変動の中で「大きけりゃいいってもんじゃない」という風潮が生まれてきて、今はその延長線上にあるように感じます。 でも、一度は大きい方に舵をとったこの社会はこの「大きい」と「小さい」のひずみの中で喘いでいる・・・・・そんな気もしないじゃないんですよね~。
でね、今回、この「小さな」「大きな」という対比の中に、KiKi は「大きな組織で動く効率的・合理的社会」というものを感じ取りました。 もちろんそれが「悪いこと」とは言い切れないんだけど(特に落ちこぼれながら会計人感覚からすると 苦笑)、それでもその「効率性」「合理性」追及の陰に、王子が自分の星から地球に至るまでに立ち寄ったいくつかの星に住む不思議な住民の姿がダブって感じられるんですよ。 「支配だけしたがる王さま」、「ただ目立ちたがる男」、「自分を見失い酒ばかり飲んでいる男」、「ひたすら忙しがるビジネスマン」、「点灯だけを仕事とする男」、「フィールドワークをしない机にかじりついている学者」・・・・・・。
今更ながら・・・・・ではあるけれど、この物語ってひょっとしたら「人間性の喪失」に対する危機感の物語であり、どんどん近代化していく世界への警鐘の文学だったのかもしれません。 そう・・・・、言ってみれば「怜悧な社会風刺の物語」。 そしてもう一つ感じたのは、ここ何年か KiKi 自身もず~っと考え続けていることなんだけど「グローバル・スタンダードって本当のところ何???」という命題について扱っている物語でもあるんだなぁということでした。
(全文はブログにて)