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環境戦争の戦場で日本はどう戦っていけばいいか
2011/02/20 19:13
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投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
21世紀は「環境の世紀」と言われる。国際政治でも「環境」は主要なテーマになっている。そこが外交の「戦場」になっている。兵器のように直接、命まではとらないが、環境問題を武器にした世界の覇権争いが繰り広げられているのだ。本書は共著者らによる環境をテーマとした対論である。そうした戦場で日本がどう戦っていけばいいかを考えている。
鳩山前首相がぶち上げた「CO2排出量25%削減目標」を痛烈に批判している。それをやり遂げるために、どれほどのお金がかかるのか、「正確な試算も精緻な情報もないまま、政治の決断がなされている」と。そもそも既に省エネ大国の日本が他国と同じ基準で削減目標を競っても、自分が不利になるだけなのだ。鳩山氏の発言は単なる国際舞台での格好付けと見られても仕方がない無責任なものだった。国内産業界の反発が大きいのは当然である。
その上で、第5章では池上氏は排出量とは異なる基準を目標にすることを提案している。「エネルギー効率の向上」を挙げている。国際交渉ではそうした自国を有利にするための駆け引きも大事だということだ。愚かなリーダーが戦略ももたず、ただの思いつきで発言することは国益を損ねる以外の何ものでもない。今後も民主党政権の「環境」外交には注視していく必要がある。
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今をときめく池上彰と手嶋龍一の対談本。
キモは「日本が主導権をとらなければ」と言う点ではないか?
であれば、今もめてるTPPも早く参加して、
日本がルールを決める立場に立ったほうがいいのではと考えさせられる。
例えば、「その国の主食を担う商品については例外を認める」とか。
京都議定書とかCOPナントカとか25%とかは、これまでの池上本やTV番組での知識にちょっと手嶋インテルジェンスがプラスって感じだった。
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環境をめぐる世界戦争への挑み方《赤松正雄の読書録ブログ》
NHK出身のフリー・ジャーナリスト二人が縦横無尽に「環境問題」を語り合う。『武器なき“環境”戦争』はかなり面白い内容であった。池上彰さんは、NHKの「週刊こどもニュース」のお父さん役で大活躍し、今や超売れっ子。分かりやすい解説でテレビや本で解説をしまくっている。一方、手嶋龍一さんは元ワシントン支局長で、今やインテリジェンス分野での作家として次々と話題作を世に問うている。NHK関係者に聞くとあまり評判は良くない二人だが、恐らく出る杭は打たれるの見本に違いない。裏返せば、それだけ有能で目立っているから、嫉妬を買っているものと思われる。
二人がこの本で訴えたかったのは、「環境をめぐるリテラシーにいっそう磨きをかけることの大切さ」との点。読み進めば、その辺りがじわり滲みこんで来る。アメリカや中国をかつて私は「環境ならず者国家」と衆議院環境委員会で質問に使ったことがある。京都議定書をめぐる対応で真面目一本やりの日本と違って二カ国とも我儘という他ないほど勝手放題の振る舞い。それを歯噛みして見てるだけで、効果的対応の手が打てない日本。
それに比してイギリスやドイツは巧みに「環境」に関する新しい構想や政策を次々と生み出している。「排出権取引」や「カーボン通貨」などが良い例だ。これを見習うべきだというのが二人の主張。「人口や軍事力などではアメリカや中国には及ばないけど、新たな時代を切り開いていくアイデアなら引けを取らない」これらの国家は、「影響力の大国」を目指していると言う。日本もむしろモノ作りの国から「構想の大国」へと変身すべきだというのが二人のアドバイス。示唆に富む知恵の宝庫のような本だと思う。
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2010年のメキシコ湾岸海底油田石油流出事故は、脱石油時代の幕開けとなりそう。海底油田では、事故が起きると、即石油流出の危険性がある。オバマ政権のグリーンニューディール政策は、この石油流出事故で加速する可能性がある。
日本の電力供給レベルは高品質過ぎて、発電に波のある自然エネルギーによる発電では対応できない。
co2排出規制は6種類に及ぶ。メタンや亜酸化窒素、代替フロン等。
日本にとって排出量削減は、非常に厳しい。あまりに厳しいと日本にいる企業が国外に流出する。
英国は知的ギャングで、国際法等の作成段階で英語を駆使して参画し、自らに都合のいいような内容にしてしまう。
カーボン通貨制検討されている。これは、co2排出するものを購入するときにカーボン通過を支払わなければならず、多く排出するとは、少ない人からカーボンを購入しないといけない。
鳩山前首相が言った25%co2削減は難しい。
飲増設は、これまでの話を停止させてしまう可能性がある。
一部に誤りがあるからといって、全部が誤りではない。
南極・北極のこりが溶けると海面が上昇するのではなく、北極南極の陸地にある氷があると海面が上昇する。
アメリカの意志を良く問われるが、あれだ大勢の人がいる国に一つの意志はない。
相手の主張を聞くにはどういうポジションにいる相手なのかを見極めよ。欧州は東欧も含めてcおs排出規制に入っているため、日本に比べて帰省目標値が低く楽。
日本も英国を見習い、影響力の大国になるべきだ。
日本の組織では一端方向性が決まってしまうと、なかなか方向転換しづらい。
るーるづくりに関与せよ。日本はいつもルール作りに関与できず、やられてしまっている。
環境を巡る国際やりとりは、環境だけではなく、多くの天で日本にいろいろな問題を投げかけている。
日本の国際的影響力は決して小さくないが、日本人は萎縮している。米国や中国と比べれば影響力は劣るが、これらの国に対しては、影響力を行使できるようにするべきだ。
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The authors admit the existence of global warming.
Japan should engage in establishing global standard of policy against climate change.
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環境戦争。排出権取引やカーボン通貨等は次のサブプライムローンになるのでは?
軍需で争う時代から核抑止でそして環境で。
これから環境について本気で勉強しなきゃなー
一歩目としては面白い本です。
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「京都議定書の例外扱い要請へ 政府、原発事故受け」( 2011/4/5 日本経済新聞)、「国連、日本の温暖化対策見直しに反対を表明」: YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://t.co/83MBw9B via @yomiuri_onlineなどのニュースが流れているが、 もともと京都議定書がいかに欺瞞に満ちた欧米諸国の策略かは、この本の中でも厳しく指摘されている。
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各国が国益をかけて、持てる力と情報を尽くして戦ってるこの「環境の世紀」について。テレビでコメンテーターばっかのニュース番組を眺めるぐらいなら、こちら一冊読んだ方が記憶に残るかと。自分の興味のある分野を掘り下げていくとっかかりとしては、有用な本かと思います。
日本の場合、CO2●%削減、とかじゃなく「エネルギー効率の向上」を目的にするほうが現実的かつ将来的に意味のある政策だという指摘には同意。
この「戦争」における英国の優位性については「なるほど」。
環境技術の移転(国際的技術協力)へは、職業上いまも意識してます。でも「オールジャパン」でいく必要性については疑問。民間企業は「オールジャパン」にそこまでこだわっていないと感じる。
BPの石油スピルにしろ、新エネ戦略にしろ、COPでの取りまとめ役不在にしろ、国際会議での言葉遊びにしろ、資源獲得戦争での戦略的指導部ってどこにあんのよという疑問にしろ、ブラジル戦略の必要性にしろ、過去一年の仕事で身近に感じた。この仕事の、世紀の動きを改めて感じれる外交的性格を、もっと自覚して仕事しなければ。頭を使え。「自分の手の中の情報は、大きくみれば世界の最先端の潮流をリアルタイムでさばいているものなんだ」ということは、意識しないと自分の内面に届いてこない。もったいない・・・
以後、モーダルシフト、及びスマートグリッド、英米の環境政策について、より掘り下げていこうと思います。本探すか。でもそのまえに証券化についての本かな…
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もう辞めてしまった方ですが、鳩山氏が首相だった時代にサミットで「CO2削減25%」の演説をした記憶がありますが、あれは一体なんだったのでしょうか。
実際には他の国が参加したら実行する等という前提があった(p99)ようですが、環境に対する取り組みは、表向きは地球環境の保護をうたいながら、 排出量の多い米国や中国が除外されているにもかかわらず、排出権取引では利益を得ることができるなど、政治的な要素が多いと思います。
この本はニュース解説でおなじみの池上氏と手嶋氏による対談本ですが、クライメートゲート事件については中途半端な記述であったのが、他の本でそれについて情報を持っていた私にとっては不満が残りました。
この本を読んで、世の中におきているニュースを誰かに解説してもらうのではなく、自分で考えてそれに必要な情報を様々な角度から得ることが大切であることを感じました。
以下は気になったポイントです。
・メキシコ湾の場合、まず1500メートルの海底に到達して、さらに約4000メートルの地中を掘り進んで(150気圧)、ようやく油層につきあたる(p20)
・ロシアでは石油を採掘し尽くして放置していた場所を掘ってみたら、わずかながら石油が補給されていることが確認された(p22)
・世界の石油の実に4割が海底油田から採掘されている(p24)
・日本の電気料金は、長時間の停電のない日本の送電システムを考えると、そうとは言い切れない(p41)
・スマートグリッドは、専用の機器やソフトウェアを送電網の一部に組み込むことで、電力使用量と発電量をリアルタイムに一致させる(p42)
・オバマ大統領が提唱する「モーダルシフト」は、ガソリン車からハイブリッド、さらにはプラグイン・ハイブリッド車へ進化するように構想されている、これは効率的な送電網をいち早く築くという「スマートグリッド」政策とリンクしている(p45)
・1990年が基準になっているのは、この年に初めてCO2排出量が測定されたから(p54)
・環境省が発表した2008年度の温室効果ガス排出量は、前年度比較で6.2%マイナス(p102)
・イギリスはポンドの基軸通貨の地位を譲る代わりに、現在のIMFの特別引出権(SDR)に近いものを提唱(通貨名:バンコール=金・石炭など複数資源価格の加重平均)したが、アメリカは同調しなかった(p168)
・FRBはドル紙幣を発行する際には、市場から短期のアメリカ国債を購入して資産に組み込むことで、収支バランスはとっている(p170)
・SDRの見なおしは2010年に行われるが、現在の「米ドル」「ポンド」「円」に「元」が加わる可能性が大きい(p173)
・ニュースでランキングについて聞く場合、どんな算出基準になっているのか興味をもつことがない、日本の大学のランキングが悪いのは仕方ないかも(p182)
・京都議定書とは別の枠組みとして、セクタ別アプローチとして、アメリカ・中国・インド・日本等の7カ国で���成されている(p194)
・鉄道の遅れ度合いにおいて、日本な世界でトップクラス、「遅れる」の定義が日本では3分から5分、アメリカでは1時間以上であるため、日本のエアラインも同様(p197)
・軽自動車を除く中古車の登録台数が18ヶ月連続で前年同月比マイナス、減税で新車のお買い得感があるため、自動車のリサイクルが滞っている(p204)
2010/11/21作成
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国際社会での交渉力の弱さから、英国により仕掛けられたカーボンマネーに主権を握られようとしている危機的な状況をNHK出身の両著者がユーモアを交えて対談した記録。
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環境に関して、日本がどう関わっていくべきなのか、現状を踏まえわかりやすく、すっきりと頭に入ってくる本でした。
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日本の国際社会における存在感不足を痛感した。英語能力を駆使したイギリスが、国際舞台で大きな影響力をもっているというのは、なんとも意外だった。
21世紀は、環境の世紀であるのだから、省エネ大国の日本がもっと世界をリードしていってほしいと思う。
日本はガラパゴス化しているが、海外にシステムを輸出する際は、オーバースペックにならないよう相手国の要求をくみとり実現することが重要になるとおもう。20130120
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「京都会議」(あるいは環境問題)において、
過大な責務を背負わされ議長を押し付けられた日本は‘気の弱い優等生’
会議では前向きな事を言いつつ、家に帰り「やっぱりやらないよ~」とうそぶくアメリカは‘したたかな悪ガキ’
「そもそも環境を破壊したのはお前らだから、お前らがやれ」とはなから取り合わない中国は‘腹の据わった不良少年’
そして、それらを俯瞰から操ろうとする英国は‘知的ギャング’
‘知的ギャング’の武器は英語力、なんたってイギリス人は世界で一番英語がうまい!
「京都議定書」も、議論が錯綜し、文書になかなかまとまらない時、「条約を英文でまとめるのはまかせて」と言ってさり気なく主導権を握り、公正な姿勢を示しつつ、自らに不利な文章とならないよう目配せを欠かさない・・・
かくして見事にヨーロッパに利益をもたらす「不平等条約」が出来上がったのでした。
当然、後で気づいたアメリカは愚図るわけですが、気の弱い日本は何も言えず、トホホ。
その‘知的ギャング’の次なる狙いが『カーボン通貨』の導入です。
CO2の削減というのは、つきつめれば「経済活動をするな」といってるのと同然です。
だから、経済活動をしたければCO2を出す権利(汚染する権利)を買えということになります。
これはCO2という「廃棄物」、本来はゴミであったものを価値のあるものにした革命的な発想の転換です。
その取引を国家間でするのが『排出権の取引』、産業別・企業別で行うのが『キャップアンドトレード』
そして、個人に適応しようというのが『カーボン通貨』なのです。
モノを購入する際、お金+カーボン通貨を支払わせる仕組みで、‘お金だけ’でモノが買えなくなるわけです。
基軸通貨をドルに奪われた英国の怨念という趣もありますが、カーボン銀行の成り行きには要注意です。
ぜひ日本もインテリジェンスを発揮して、‘仕切る側’として、いっちょ噛んでいただきたいですね。
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「地球にやさしく・・・」とかいうのとは違う、環境問題のウラを教わった。環境外交という狡猾な世界自体を初めて知った。
日本の環境技術とエネルギー効率は世界有数なのに、日本に不利な枠組みの中でお金を出させられるハメに。環境政策のルール作りに参加できるだけの力を発揮しなくては、日本は損するばかりということ。
池上さんと手嶋さんの対話はわかりやすかった。お二人が一歳違いで、ともに慶應経済学部卒、NHKに入社して2005年に共にフリーになったという経歴の一致は面白いな〜。
★★★★★追記(6/1)
もう何度も読み返しています。家族にも読ませたいと思い、しかし自分の本は渡したくないのでもう一冊買った。
この対談が行われたのは2010年、東日本大震災の前のことであり、原子力を含む震災後の環境問題について、お二人にまた語っていただきたいと願います。そしてそれは自分でも学び取っていかなければならないことだというのを、この本から教えられました。
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2013.11.24 pm 21:48 読了。池上彰さんニュース解説のおじさん、とか思って正直なめてました。すみません。すごい。広い見識と的確なコメント。その鋭さに思わず舌を巻く。中学・高校の授業で覚えさせられた「情報リテラシー」という言葉を思い出した。今まで、情報を的確に読み取る能力と簡単に捉えておりそれには正解があるものだと無意識に思い込んでいた。しかし現実はそう簡単ではないことを思い知った。正解はない。結局自らが持つ情報や知識を駆使して結論を出すしかない。もちろん一人ひとりが持つ情報の量や分野は違うから異なる結論が出て当然。あえて言うなら後から振り返って後悔しない方が正解。実際にその正誤を判断するのは後の世代の人々。現時点ではこのような認識。難しいなあ。加えて複眼的思考をどれだけできるかも重要。自分を省みると、どれも満足にできていない。とりあえずいろんなことを知って、その知識を駆使して状況判断を繰り返していくしかないのだろう。そうやって「本質を読み取る力」を養っていくしか。
以下内容の感想。
対談形式。環境問題という大きなテーマをエネルギー・経済・情報・政治といった面から複眼的に論じている。目からウロコの話ばかり。ほんとに何も知らなかった。メディアリテラシーがなんたるものかやっとわかった。これだけ複雑な話をこんな薄い本にまとめるってすごい。新書でよかった。これ以上長くなって掘り下げられたらついていけなかった気がする。地球温暖化をはじめとする環境問題について考えていきたいと思っているひとには入門編としておすすめ。環境問題は複雑。各国の思惑が絡み合う。情報戦。この本からどのように知識やリテラシーを伸ばしていけるかが重要。池上彰の本は初めてだったので、他著書も読みたい。