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剣客商売番外編 黒白(下)
著者 池波正太郎 (著)
真剣勝負のその日、波切八郎はついに姿を現わさなかった。しかし秋山小兵衛はなぜか八郎を憎めない。一流の剣客が約束を違えるとはよほどの事がその身を襲ったからであり、実際、道場...
剣客商売番外編 黒白(下)
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黒白 新装版 下巻 (新潮文庫 剣客商売)
商品説明
真剣勝負のその日、波切八郎はついに姿を現わさなかった。しかし秋山小兵衛はなぜか八郎を憎めない。一流の剣客が約束を違えるとはよほどの事がその身を襲ったからであり、実際、道場出奔後、八郎の運命は激烈に転変し、見えない勢力に操られ人斬りを重ねる日々であった。対照的な生き方をとる二人は、互いへの想いを断てぬまま思いがけぬ所で……。「剣客商売」ファン必読の番外編。
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紙の本
剣の黒白を決するまでと、そのあと
2012/07/19 16:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
この『黒白』という小説は、徳川吉宗没年の前後数年間を舞台としている。吉宗は、御庭番を使ったことで有名だが、御庭番以外にも諜報機関を持っていたという設定で、なかでも特に闇の部分を請け負っていた元締的人物が、吉宗の没後、政界の表舞台へ進出しようとして、その運動資金を稼ぐために、大名や旗本の依頼で暗殺を請け負うようになる。だがそれは逆に、奈落へ落ち込む危険をはらんでいた。
その破綻の前兆は、元締的人物が過去に暗殺の実行を命じていた人物が、秘密をネタにゆすりをかけてくる、という事態となってあらわれる。元締は、彼を、別の暗殺実行犯を使って葬ろうとするのだが……。
こういう、非情な……はずの殺し屋たちが、意外や、友情に篤かったり、「殉職」した「同僚」の妻子の世話をしたりする。陰惨になりそうに見えて意外とこの物語は明るさと暖かさを失わない。
岡本弥助は、配下の伊之吉を、できるだけ、危険に巻きこむまいとするし、闇の世界と手を切りたいという波切八郎の意志を尊重しようとする。そんな弥助だから、かえって、伊之吉は、毒口をたたきながら、どこまでも彼のためにつくそうとするし、八郎も、弥助が危険にさらされると助太刀をせずにおれない。
一方で波切八郎は、一度は諦めた、秋山小兵衛との真剣の立ち合いに、再び挑む決心をし、恋人のお信や忠実な老僕の市蔵もつれて丹波に修行に行く手はずを着々と整えていた。
そして秋山小兵衛は、親しい旗本から、さる大名の血を引く少年に剣術を教えるようにと、依頼される。月に二、三度、その旗本の屋敷に稽古に来るという。複雑な事情があって、非常にむずかしい立場におかれた少年らしい。さて、どうやってなにを教えたらいいかと考えあぐねつつ、ふたりきりで相対した小兵衛は……。
>ややあって、小兵衛が、
>「小兵衛と小三郎……」
>独り言のようにつぶやいたとき、小三郎の片頬に靨(えくぼ)が生まれた。
>「ふたりとも、小さな身体(からだ)……」
>(中略)
>小三郎の口元が、ほころびた。
>「小さくて丈夫な身体(からだ)には、むだがない……」
>小三郎の満面が笑みくずれた。
この場面は、とても、ほほえましい。続く稽古で、小兵衛は、少年の精神に、大きなものを授けることができた。
このあとは時代小説の定番で、この少年高松小三郎が命をねらわれ、岡本弥助・波切八郎・秋山小兵衛が、修羅場で相見えることになる。血にまみれた陰謀の現場での、友情と剣士の誇りとをかけた闘い。
むろん、秋山小兵衛は、このときから何十年もたって、鐘ヶ淵の風雅な家に隠居しているのだから、勝つに決まっているのだけれど。
ちなみに、鐘ヶ淵の家は、もともと、小兵衛が親しくしていた絵師の家だったということである。
物語の最終章で、少年時代の大治郎が登場する。小兵衛は大治郎を見ると、波切八郎もこのような少年だったのではないかと思い、息子の将来を心配する。そして、武者修行に旅立つ前に、教えるのだ。
>剣客の生涯とても、剣の黒白のみによって定まるのではない。
大治郎がその言葉の意味をゆっくりと味わい理解していくのが、剣客商売シリーズ本編だといえよう。
そして、この『黒白』のラストシーンは、小兵衛も、この小説を読んで来た私も、晴々とうれしくなる「出会い」であり、「すれちがい」だった。池波正太郎は、よく読者がもどかしく感じるような「すれちがい」を描くが、この場面でのすれちがいは、小兵衛のほうでは相手に気づいており、相手は気づかないということが、すなおに、気持ちよく感じられた。
紙の本
感動は薄かったです。
2019/04/07 08:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
黒い世界に堕ちていくまでに、なんとか絶ち切るチャンスはあったはずなのに…と、少々イライラしながら読みました。
小兵衛の若き日々にもいろんなことがあったのだなと、思いを馳せることはできました。