紙の本
コーヒーにミルクをいれて
2022/05/26 18:17
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリー作家アガサ・クリスティーには小説以外にも戯曲作品がいくつかある。
小説を基にした戯曲もあるが、舞台のために書き下ろしたオリジナル戯曲が5つあって、この『ブラック・コーヒー』はその第一作ということもあって、アガサ自身力がはいった作品になったのではないだろうか。
1930年の作品で、この時すでにアガサは何作もの「ポアロもの」の小説を刊行していて、おそらくこの作品でポアロが登場した時観客にはどんな人物がこの名探偵を演じるのか楽しみであったに違いない。
活字でしか知らないポアロが実際に動き、話し、そして推理し、犯人を追い詰める。きっと当時の観客もわくわくしたのではないだろうか。
事件は高名な科学者が公にしようとしている重要な書類が盗まれたことが発端で、科学者はその犯人さがしにポアロを呼び寄せる。
科学者は怪しい人物たちを集め、明かりが消えている間に、改悛して書類を出せば罪は問わないといい、明かりが消える。(舞台上も明かりが消えていて、戯曲にはその中でいくつかの音があったことが描かれている。そして、その音が事件解明のヒントになっていくという仕掛けになっている)
明かりがついた時、科学者は死んでいて、ポアロは殺人事件の謎を解くことになる。
この文庫には『ブラック・コーヒー』のほかに1958年に書かれた『評決』という戯曲も収められている。
こちらにはポアロが登場しないし、犯人あてではないが、男と女の感情のすれちがいを描いて、『ブラック・コーヒー』とは違う面白さがあった。
紙の本
劇作家・アガサクリスティ
2022/02/10 12:00
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投稿者:No2mo2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本に掲載されている作品は表題の「ブラック・コーヒー」と「評決」の2つです。
「ブラック・コーヒー」ではアガサ・クリスティおなじみのミステリ作品が展開され、戯曲でありながら小説同様に楽しめます。戯曲形式の作品は初めて読みましたが、舞台の図や合間合間の簡単な風景描写のおかげであまり気になりません。人物名と鍵かっこが続くためテンポよく話が進み、ページをめくる手が止まることなく最後まで読めます。名探偵ポアロも愛着のわく人柄をいかんなく発揮し、演劇とミステリの融合を果たした文句なしの快作です。
一方、「評決」ではミステリ要素より演劇要素が強いです。殺害シーンは暗転することなく進み、探偵役の登場もありません。書評でも賛否両論かと思いますが、アガサクリスティは気に入っていたようです。僕自身も結構気に入っていて、演劇らしい長台詞の中に人生哲学のようなものがちりばめられています。ラストシーンは衝撃的で、いったいどうしてこの結末にしたのか本人に聞きたいほどでした。声を大にしてのオススメはできませんが、ミステリと思わなければ楽しめる作品です。
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台を小説化したというせいなのか、被害者が嫌なやつであったことがうっすらとしか伝わってこなかったなぁ。
いつものクリスティなら、そこらへんももっとちゃんとしてくれるのにと思ったり。
でも、もちろん面白かったですが。
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戯曲集です。
1つは、ポワロの推理物。1つは、サスペンスで、ミステリーではない感じ。
どっちも、おもしろい。
多才です。
性格が際だっているところが、アガサ・クリスティのいいところですが、戯曲だとそれがさらに極端になる感じです。
わかりやすさ重視ということでしょう。
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『ブラック・コーヒー』
科学者エイモリー卿が完成させた方程式。毒殺されたエイモリー卿。消えた方程式。教授の息子の妻を強請る男。ジャップ警部の捜査とエルキュール・ポアロの推理。
『評決』
2010年6月10日読了
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戯曲2篇。
表題作はポアロもので、クリスティーのはじめて書いた戯曲だそうだ。ポアロのエッセンスがぎゅぎゅっと詰まっていて、この元ネタはあの小説かな、などと考えながら読むと愉しい。
戯曲は演じられるのを見てこそで、読む小説とはちがう、と云うのがはっきり意識されているとかんじる。それが分かってもなかなか書けないものだけど、クリスティーは飄々とやってのけてしまう。
「評決」は読んでも(読んでこそ?)愉しい心理劇。関係性の巧みさよ。ゾクゾクする。けど興行的には失敗だったそうな。今ならヒットするんじゃないかなあ。
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小説版を先に読んでしまったので、少し、話の展開がまどろっこしい感じがしました。
最初にこちらを読んでいれば、話が飛んでいて、わかりにくかったかもしれません。
アガサクリスティの戯曲を読むのははじめてなので、まだ、どのあたりに味があるのかが分っていません。
面白いのは「と書き」です。
戯曲を書くときの参考になりました。
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ミステリの劇場にご招待。
薬瓶の箱、金庫から盗まれた方程式、一瞬の暗闇で起こる殺人、ポアロの推理は?
クリスティーの戯曲は初挑戦。表題作「ブラック・コーヒー」は、方程式の書かれた書類はどこに隠されているか、また犯人はどうやってコーヒーカップに毒を入れたか、を考えながら読む。実際の舞台で見た方がもしかして盛り上がるかもしれない。キャラクターが立っているのは、いつものクリスティー。
「評決」は、お金よりも学生の学問への情熱を大切にする教授と、その病める妻、一緒に亡命してきたらしいいとこ、教授に横恋慕し個人教授を願い出るお金持ちの娘、話好きのお手伝いというメインキャラクターの人間関係が肝。犯人は観客(もしくは読者)には自明。もちろん殺人を犯した者が一番悪い。でも教授は、理想に溺れて現実から目を逸らし不幸を招くタイプだと思う。しかし、そう思いつつ、自分にもそんな面がないのか、本当にこの登場人物を非難できるのか、とクリスティーに聞かれているような気持ち。
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「ブラックコーヒー」
小説版を先に読んでしまったので、犯人のそぶりとかが、ああこう書かれていたのか、と確認しながら読む。
「評決」
1か月で公演打ち切りとなったらしいが、私はかなりおもしろかった。たぶんこんな四角関係だったらいずれ殺人は起こるだろう。やはり起こった。そこでとった主人公男性の行動、それが思わぬ窮地になる、といったとこがかなりおもしろかったけどなあ。ただ、最後の終わり方は、そうなっちゃう?
真面目な科学者カール。病身の妻、妻を看病する従妹、金持ちの娘、この3人に愛されながらそれを感じない鈍さがあり、しかも本当は病身の妻より従妹への愛があるのを認めようとしない、それゆえに起きる殺人。そして自分では相手への思いやりだと思っている好意が逆に愛する者を窮地に追いやる。
3人の男から思いを寄せられているのにきずかない女性が誘因で殺人が起きる「スペイン櫃の秘密」の男女逆転版とも言える。「スペイン櫃の秘密」のおめでたい女性はさらりと描かれていいたのに対し、この「評決」ではこの鈍感男カールはめためたにおめでたいダメダメ男として描かれている。
ブラック・コーヒー 1930年発表
評決1958年発表 1958年5月22日初演、6月21日終演。
2004.1.15発行 図書館
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原書名:Black coffee
午後八時三十分
翌朝
その十五分後
著者:アガサ・クリスティ(Christie, Agatha, 1890-1976、イングランド、小説家)
訳者:麻田実(1936-、東京、文芸評論家)
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戯曲「ブラック・コーヒー」と「評決」の2編収録。
「ブラック・コーヒー」
資産家の息子。その嫁。嫁に付き纏う男。詮索好きの叔母。
そして資産家が殺された。絡まる動機と疑心暗鬼。
核爆発の方程式を巡る国際スパイの暗闘。
人物の心理描写をスキャンダラスに描くアガサ十八番の展開。
勧善懲悪、無敵のポワロ。クリスティ初のオリジナル戯曲。
「評決」
自ら傷付いても慈悲の心を優先させる学者。
学者と運命を共にする三人の女性。
慈悲の心は多くの不幸を引き起こすのか。
あなたは自分が信じられることはどんどんやります。
その結果他の人がどうなろうとお構いなしです。
あなたを愛しています。でも愛だけでは充分ではありません。
私は私のようにごく普通の人を見つけます。
私は、愛する者に苦しみをもたらすような男だったのか。
なぜ帰ってきたんだね。
私がおばかさんだからよ。
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戯曲集。「ブラック・コーヒー」と「評決」の2編。「ブラック・コーヒー」は登場人物の事情がいろいろと露見することによって迷わされる。その辺は小説と同じか。「評決」は人間関係が焦点。上演されるのを見たら違うのかもしれないが、イメージがつかみずらかった。ラストシーンも悪い意味で意外だった。戯曲集だがト書きとかをみれば小説とあまり変わらないか。
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ブラックコーヒー:
初のオリジナル戯曲ということで、必然的に暗闇にして特徴的な音をヒントにしつつ明かりが戻ったら人が死んでいるとか、舞台ならこれをやろう的なアイディアが随所に見られるところが楽しいと言えるかもしれないが、展開がかなり予定調和的。こういう話は秘書が怪しいという公式を、割と初期の列車もの小説で頭に刷り込んでしまったので推理する能力がないのに展開が読めてしまう困りもの。あとポワロとヘイスティングスの会話がですます調でない翻訳は好きになれない。
評決:
ミステリーではないけれど人生の機微、人の性格が引き起こす不穏な感じが「春にして君を離れ」を連想させ、結構好みの内容だった。作者がタイトルに詩の引用「永遠の花の野はなし」を希望していた(が不採用にされた)あたりも共通点があり、平凡で他とかぶったり混同したりしそうな「評決」より良かったのではないかと思う。心が綺麗で理想主義者の教授と「見知らぬ乗客」的サイコパスの女子学生は両極端な性格設定だが、巻き込まれた女性からすると2人は極度に自分勝手な点で似ている、というのがなるほどねと思った。とは言え教授は並外れた善意の人なので、最後に彼女が戻ってしまうのもわかる気がする。終盤のカフカ的悪夢の展開にはなかなか迫力があり、教授はこのショック療法でぜひ学習していただきたい。
個別の評価ではブラックコーヒーが星2つ、評決が星4つぐらい。
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書かれた年代を考えると、アガサの作品にはいつも感心させられます
この2編は本当に舞台を観ているかのようです