- 販売開始日: 2012/03/16
- 出版社: 小学館
- ISBN:978-4-09-403565-0
御用侠
著者 山田風太郎 (著)
酒池肉林とワイロで腐敗しきった権力に挑む痛快活劇。幻の傑作、遂に電子化!!「わたしのものの味がそんなに悪いかえ?」お公卿の姫のような臈たけた美女はニタリと笑った。その時、...
御用侠
06/25まで通常671円
税込 470 円 4ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
商品説明
酒池肉林とワイロで腐敗しきった権力に挑む痛快活劇。幻の傑作、遂に電子化!!
「わたしのものの味がそんなに悪いかえ?」お公卿の姫のような臈たけた美女はニタリと笑った。その時、「下におれっ。将軍家由貴姫のお成りである」という声がした。女は道のまん中にしゃがみ込んでいる。侍達は奇怪なうなり声をあげた。彼らは女の股間の地上にあるものを見た!!
同心・恥ずかし瓢兵衛の頼みで、岡っ引きになった屁のカッパはお数寄屋坊主の河内山宗俊と出会った。彼は北斎の枕絵を使って、幕閣達を揺さぶっていた。
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明治人が演じる江戸時代のメタ捕り物
2002/01/17 10:30
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投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者風太郎翁が復刻を拒んでいたためこれが初の文庫化だそうな。初出は1975年〜76年の「日刊ゲンダイ」だというから当時中学生かせいぜい高校1年生だったオレが知るわけないわな。さすがに「日刊ゲンダイ」は高校生が読んでみたいと思う代物ではなかったよ,東スポならともかく(笑)。
では,翁がなぜ文庫化を嫌がったか。解説で細谷正充氏が書いておられるトコロによれば,翁本人はこの小説を全くの失敗作と思っていたそうなのである。うーん,まぁオレも大傑作とは思わないがな,失敗作はきびしいんぢゃないのかな。
私思うに,いわゆる歴史・時代小説には二極ある。一方の極には歴史的事実というのがあって,こちらに近付けば近付くほど小説というより史書に近くなる。そうは言っても史書の中の史書であるはずの司馬遷の「史記」にしてからが「あたかも観ていたように」登場人物にセリフを言わせる部分があるのだから,「真実の歴史」なんてのはある種の身果てぬ夢なんだろうが。
そしてもう一方の極にあるのは「舞台背景として過去の一時期を採用した」に過ぎない物語である。こちらも突き詰めると,ただ単に登場人物が髷を結って「東京ラブストーリー」を演じるようなものになる。まぁそこまで徹底すればそれはそれで面白そうな気もするが,現実にはそういう小説は書かれていない。あ,筒井康隆の「筒井順慶」はこっちの極点近くに浮いてるかな。
で,前者を北,後者を南と仮に置けば,山田風太郎の時代劇作品,特に風太郎忍法帖と呼ばれる作品はだいたいいつもニュージーランド南島沖合い30kmくらいのところを航行中である。誰もが認める忍術体術の荒唐無稽さに,もっと極点に近いのではないかと思われる向きもあろう。が,そうした忍術体術を駆使する精神は,しっかりその時代に根差しているのであり,風太郎忍法帖が単なるSF合戦物とは違う余韻を遺すのはそのメンタリティの部分なのだ。
そう考えるとなるほどこの作品は異質だろう。明治時代を舞台にした小説を多数書いていた頃だからか,江戸時代なのに登場人物が皆明治人なのである。まず主人公の岡っ引きである「屁のカッパ」,カウボーイ然としたパンタロンを履き,武器は投げ縄,自分を慕い助けてくれた女より一目観ただけの姫に忠誠を尽す,これも西部劇ならよくいるタイプだろう。そのカッパを使う同心恥ずかし瓢兵衛と仇役たる河内山宗俊,こいつらはもう完全な近代人,というよりむしろ現代人ぽくないか。
つまりは明治の精神性がタイムスリップして文化文政の江戸に落っこちてしまった図か。新聞小説の人物設定がこれではいかな風太郎翁といえ辛かったろう。ラストの大団円がなんとも拍子抜け。いやしかし,この本それでも値段以上には楽しめた。やっぱりそのへんはプロの業というべきだろうか。