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権威主義の正体
著者 岡本浩一 (著)
部下を頭ごなしに怒鳴りつける上司、“鶴の一声”で全てが決まってしまう会社、正義をふりかざし世論を誘導するマスコミ――。それらの背後にひそむ権威主義を社会心理学の立場から徹...
権威主義の正体
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権威主義の正体 (PHP新書)
商品説明
部下を頭ごなしに怒鳴りつける上司、“鶴の一声”で全てが決まってしまう会社、正義をふりかざし世論を誘導するマスコミ――。それらの背後にひそむ権威主義を社会心理学の立場から徹底解剖する。まず、その研究の発端であるホロコーストを検証。同調や服従はいかに増幅され、ナチスの暴走を許したのか。カリスマ、教条、集団ナルシズムなど権威主義を支える条件を見極める。「権威」とは技能や知識の格段に優れた人が自然に発する光のことであるが、「権威主義」は、本来的な権威のない人が無理に発しようとする圧迫感のことである、と説く。そして、身近にいる権威主義的人物の特徴を分析。「偉人の言葉を引用する人」「役割を過剰に演技する人」「好き嫌いで人を評価する人」「清濁併せ呑めぬ人」…。あなたの上司、あなた自身は大丈夫か? 組織のあり方を真摯に考える人のための一冊。
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紙の本
付和雷同の社会を正すには・・・
2005/06/04 02:05
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:関東蒲公英 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、真夏に黒いスーツを着込みながら肌寒い位に冷房を効かせた部屋で仕事をする習慣を疑問視する声が大きい。しかし、よくよく調べてみると、こうした議論は何も今に始まった事ではなく、もう何十年も昔から、日本の気候風土において真夏にスーツを着る事の非効率を指摘する声があった事が分かる。
では何故、「誰もがおかしいと感じている事」や「誰しもが改善すべきであると考えている事」を変えていく事が出来ないのだろうか?
「社会人としてのマナー」、「今までもそうして来た」、「前例が無い」、「ケジメがつかない」、「昔はその程度で文句を言う根性の無い奴は居なかった」、「先方に失礼にあたる」、「上層部が許さない」等々、実に多くの理屈が聞こえてきそうな話だが、実にこうした事こそ、我々人間社会が陥る『権威主義』という思想の一端なのである。
「我が社のイメージに相応しくない」とリコールを隠す事を習慣化させてしまった自動車メーカー、「遅れを出す事は許されない」と安全を無視して大事故を起こした鉄道会社、近年社会を賑わす企業の不祥事の事例をみても、多くの場合、警鐘を鳴らす声は黙殺され、組織内部の考えのみが教条化し、事態を深刻化させてしまった物が際立つ。
本書は、我々人間の心理に宿る「権威主義」という悪しき慣習を、ナチスのホロコーストに拘わった本来善良なはずだった「ドイツ人」達の事例と、それにまつわる心理学的研究に基づき鮮明に描き出しつつ、後半部では昨今の日本社会における様々な企業不祥事の事例の中に見られる権威主義の影響、果ては身近に居る権威主義的人物の見分け方にまで言及している。
無論、筆者も主張する通り権威主義は我々の誰にでも程度の差はあれ有しうる物で、後半部における権威主義の事例の全てに該当しない人物は居ないかと思われる。
しかし、そうした権威主義への警告、権威主義の恐ろしさを知るだけでも、付和雷同を繰り返す我々の社会においては有意義な物になるのでは無いだろうか?
組織の内部で漠然と不満を抱えている人間にとって、この著書が良い研究材料、或いは参考になるのではないかと私は思う。
紙の本
権威主義と教条主義と認知的複雑性
2009/02/24 10:26
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半はものすごくおもしろかった。特に、権威主義の根幹として位置付けられている教条主義の解説を読んで、得たりと思った。教条主義とは、ある特定の教条がすべての善悪の判断基準になり、教条の正しさの過大評価、教条の適応範囲の過大な解釈、教条の異なる他者への不寛容や加罰的傾向が生じる事であり、教条の内容はあまり問題ではない…という。
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この文章を読んで、まさにスターリン時代の恐怖を描いた小説「チャイルド44」の世界そのものだと思った。また、今問題になっているイスラム原理主義も、まさにこの教条主義の一種だと思う。イスラム教は悪くないが、原理主義は悪い…と常日頃から感じていたが、それはなぜなのか本書が理論的に説明してくれた。
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また、認知的複雑性の話もおもしろかった。認知的複雑性とは、複雑な情報を複雑なまま処理できる能力であり、この能力が低いと、善悪・正邪の判断が困難な時、あるいはその種の判断が場違いな時にも、ある教条を基準に判断してしまいがちだという。
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だが、認知的複雑性について、もっと掘り下げてほしかったのに、あっさり終わってしまい、後半は日本の組織における権威主義という、卑近な話題に変わってしまったのが残念である。認知的複雑性に興味があって本書を読んだので(仕事で”認知的複雑性”の単語にぶつかり、興味を持って検索したところ、本書にぶつかった)、とりわけ残念に思う。