- 販売開始日: 2012/05/17
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-133851-4
九月が永遠に続けば
著者 沼田まほかる (著)
高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後...
九月が永遠に続けば
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商品説明
高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか――。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。
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書店員レビュー
文章に引きずり込まれ...
ジュンク堂書店岡山店さん
文章に引きずり込まれてもう、ラストまで一気読みです。
怖い怖い、ホラーじゃなくて、ミステリーじゃなくて。そこにあるのは等身大のまさに今、私たちの生きるこの時代の「恐怖」です。
大切な人がある日突然、ふいに行方不明になる。始まりは、その純粋な恐怖。
行方不明になった息子を探して探して。物語のきっかけはほんの些細なこと。それがどんどん展開とともに、闇、憎悪、負の負の、負の感情を帯びて坂を転がり続ける。
誉田哲也さん、道尾秀介さんを産んだホラーサスペンス大賞受賞作。当時56歳で賞を受賞されたとのこと、その人間観察、の深さ。事件を見つめて表現する、という冷静さ。知って納得できました。これはそこそこ生きた人間には描くのは難しいだろう、と。
今話題の作家さんの文章にあなたも引きこまれてはいかがでしょうか。
文庫担当 中原
愛は人を脆く醜くもするし、強くもする
2020/04/18 13:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
目を背けたくなるような暴力や嫉妬や愛憎渦巻く世界に圧倒されるが、いつの間にか物語に引き込まれていた。
すごい作品というのは読者を惹きつけて止まない何かがあるのだと感じた。
被害者と思っていた人間が他の人の目線で見ると加害者だったり、社会的地位もあり尊敬される立場の人間が一番暗い闇をもっていたりと、複雑で奇怪な人間関係が面白かった。
残酷な世界の中で、愛とは、正義とは何かを考えさせられた。
巧いのは確かに巧いのだけれど…。
2010/10/17 15:35
10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハジメマシテの作家さん。裏表紙にある「読書会を震撼させたサスペンス」という文言に惹かれて手にとった…わけではなく、ただ単にその名前に惹かれて読んでみた。
沼田まほかる。沼田・まほかる。まほかる。マホカル。なんでこんな名前にしたんだろう? もしかして本名?? まさかねぇ…。と、とうでもいいところが気になってしまったのだ。
離婚から八年。高校生の息子・文彦を持つ佐知子は、20歳近くも年下の自動車教習所の教官・犀田と定期的に逢瀬を重ねる。そしてこの犀田は、佐和子の元夫の後妻が産んだ亜沙美のボーイフレンドでもある。ある日、この犀田が電車に跳ねられて死んだ。それから程なくして文彦がゴミ出しに出たまま失踪。そして亜沙美は自殺。佐和子の周りで次々と起こる不幸。佐和子は最愛の文彦を取り戻すことができるのだろうか…。
サスペンスドラマに登場してもおかしくないほどの複雑に絡み合った人間関係。裏表紙を読んだ限りでは、ここまで複雑だとは思っていなかったのだけれど、もう、複雑で複雑で、絡み合いまくっている。まず、主人公の佐和子――彼女は、犀田が亜沙美のボーイフレンドのうちのひとりと知りながら、犀田と関係を重ねる(ちなみに亜沙美はまだ高校生)。
主人公だけでなく、色々な登場人物が複雑に絡み合っていて、正直なところ「ありえねーーっ!!!」と突っ込んでしまった。ドキドキハラハラがサスペンスの醍醐味なのだけれど、ここまで複雑に絡んでしまうと、ただただ面倒くさい。
次に、主人公の息子である文彦にもひと言。彼も彼で「ありえねーーっ!!」なのだ。高校生なのに老成しすぎている。人間的に「良い子」すぎるのだ。しかし同時に子どもっぽすぎるところも持ち合わせる。人間は矛盾を孕んで当然の生き物だけれど、文彦場合、良い面とそうでない面の振り幅が大きすぎて、現実味が失われている。
また、本書内ではある人物が非常に過酷な運命を背負わされているのだけれど、この人物にここまで苦しい思いをさせる理由が見いだせない。
こうやって細かいところをみていくと、いろいろアラが目立つ。あまりに複雑すぎる人間関係や人間性、そして事件は、物語にリアリティの欠如をもたらす。しかし本書の場合、全体的には全く突飛な印象を受けはしない。
その理由は、著者の文章力にある。たくさんの「ありえねーーっ!!!」要素を、著者は、その巧みな文章運びと緻密な計算で、「現実的」なものに変えている。単純に、巧い、と思う。
ただ、著者の作品を他にも読みたいかどうかは別の話で、わたしが沼田作品を読むことはもうないような気がする。人間関係が面倒臭すぎるのだ。「人間」「を」描く作品は好きだけれど、「人間関係」がつらつらと描かれている作品は好きではない。
また、文彦の失踪理由にも、釈然としないものがあった。百歩譲って理由云々はいいとしよう。ただ…この場合は「ありえねーーっ!!」じゃなくって、「そっちかよっ!!」と突っ込まずにはいられなかったのだ(未読の人には何のことだかわからないだろうけれど、ネタばれになるので詳しく書けない)。
この箇所だけは、作品全体に緻密な計算が張り巡らされているのがわかるだけに、野暮ったく、また薄べったい印象が拭えなかった。
巧いだけに、残念でならない。
それでも、先が気になってほぼ一気読みしたのだけれど。
読んでる間は面白いのに・・・
2012/04/18 10:55
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはきっと「ちょっと残念」な作品だ。
話はテーマと事実(事件性)以上に面白く出来ているし、心理描写もよく描けているし、話の運びも展開も、期待させるその手管もなかなかのものだ!これがデビュー作とは恐れ入る。
事件や真相が秘められた当事者たちのつながりや凄惨な過去、もつれ入り込んだ、「ややこしい関係」がミステリ性を複雑にし読者を引き込む役割を果たしているし、それに加えて犯人と疑われる影のヒロイン?母娘の妖艶あふれる不思議な魅力が読むたびに不思議な想像力をかき立てられる。
事件そのものは不倫まがいだけど不倫じゃない。家出や誘拐まがいだけどそうでもない。殺人かといえばそうでもなさそうだ、と実はさほどスキャンダルな内容ではないのだ。
それなのに読んでいる間、すくなくとも私はぞくっとしたし、ドキッとしたし、月並みないいかただがわくわく、ハラハラした。
ただ、理性的に出は無く感情的に、感傷的に読める本という意味で、(けっして女性=感情の生き物という卑下たつもりは全くない)善くも悪くも女性受けする雰囲気だなという印象を受けたのも確か。
とくに作品のキーとなる母娘(母:亜沙美と娘:冬子)の性格がイマイチ説明されておらず、想像しようにも材料がなさ過ぎる。
主人公(佐知子)は彼女らと数回会話をしている程度だし、関係を疑われたまま行方不明となる佐知子の息子も異母兄妹である冬子について、結局のところ魅了されてしまっただけで核心を何も知らない馬鹿な男になりさがってしまった感がある。
評価が難しい・・・読んでいる間は面白い。
亜沙美や冬子の容貌や魅力がどこか超越的なだけに魅了されて想像力をかき立てられるし、冷静に考えてみれば彼女らの人離れしているらしいその魅力以外、どこにでもありそうな事件(いや、もちろん有っては困るのだが)と人間関係であり、ただそれらがややこしく入り組んでいるだけの話なのだ。
それだって、おせっかい焼きな助っ人役(息子の女友達の父親)がいうように確かに「ややこしい」のだがよく考えてみればそれほどじゃあない。頭で整理できる程度なのだ。
(いや、それももしかしたら著者の文章力により読みやすい物であるからかもしれないが。)
それなのに事件も彼女らの過去も事実以上になにか大仰な物に感じられる。
性的描写というか、猟奇的な亜沙美の行動描写もあるはあるが、それは精神に異常を来している「病人」のそれであり、正常な人間が恐ろしいことをしているのでも、残虐なシーンが事細かに描かれているわけでも、見るに耐えない性的暴行が描かれているわけではない。
それなのになにかとてつもない卑猥な物を見てしまった気になっていたのはなぜだろう。
やはりこれは著者の文章力、構成力、展開力(話の運び、盛り上げ方)がすごいとしか言いようがない。
ただその分読み終えた後に、何も残らないのだ。
そういうわけで、やはり残念、惜しい作品だと思う。